奄美シマ唄と通じるブルース、中孝介 唄と共に歩んできた道程
INTERVIEW

奄美シマ唄と通じるブルース、中孝介 唄と共に歩んできた道程


記者:村上順一

撮影:サムネイル用

掲載:16年10月26日

読了時間:約20分

デビュー10周年を記念したベストアルバム『THE BEST OF KOUSUKE ATARI』をリリースした中孝介

デビュー10周年を記念したベストアルバム『THE BEST OF KOUSUKE ATARI』をリリースした中孝介

 歌手の中孝介が10月26日に、デビュー10周年を記念したベストアルバム『THE BEST OF KOUSUKE ATARI』をリリースする。奄美出身・在住の中孝介は2006年3月にシングル「それぞれに」でメジャーデビュー。奄美シマ唄の歌唱法を取り込んだ独特の美声は国内のみならず、海外でも注目され、最近では中華圏をはじめとするアジアにも活躍の場を広げている。今回のベストアルバムは、シングルコレクションのディスク1と、中華圏でリリースされた楽曲のベストとなるディスク2の2枚組で、28曲を収録している。今回は、デビュー10年を振り返りながら、デビュー当時の想い出や中国でのライブ、そして、歌手としてのスタンス、更には奄美大島の歴史とシマ唄の関係性について話を聞いた。

僕の中で色んな葛藤があった

中孝介

中孝介

――今年の3月に10周年を迎え半年が経ちました。この期間はいかがでしたか。

 日本でも活動しているのですが、5月と9月には中国でツアーをやっていました。10周年のツアーは日本より中国の方が先でしたね。中国へは数えきれないほどライブをおこなっています。色んなショーに行って歌わせて頂いて、今回は去年よりも会場が増えて、倍以上の公演数です。初めて行く場所もけっこうありました。

――地域によって現地の人の感じは違いますか?

 違いますね。あと料理なども各都市で全然違います。味付けも。やはり内陸の方は味付けが辛めですね(笑)。辛いのは大好きですけど。どの地方へ行っても食べ物は美味しいのですが“辛いもの好き”にとっては内陸が好みですかね。

――内陸は辛いんですか。ちなみに嫌いな食べ物はありますか?

 あまりないですね。でも海鮮系は得意ではないです。海鮮系の中でも高級食材系が特に。例えば魚卵などはあまり好きではないです…。

――中さんは奄美大島出身なので海鮮系はむしろ好きなイメージがありました

 奄美は北の地域に比べるとまだ脂身が少ないというか、魚などは淡白なものが多いんです。マグロにしてもキハダマグロなどあるのですが、トロなどはないです。黒潮になって成長していく過程のちっちゃいマグロなので、身は赤身なんですよね。自分が小さい頃からそういうのを食べるのに慣れているので。ブリやカンパチなど、ああいった脂の乗った感じではないんですよ。

――そうなんですね。デビューから10年が経ちましたが、デビュー当時の事は今でも鮮明に覚えていますか?

 そうですね。一番よく覚えているのは、奄美大島でデビュー日を迎えたのですが、奄美のTSUTAYAでインストアライブをやらせて頂いて、その時の最後にデビュー曲をやったのですが、最後まで歌い切れずに泣き崩れてしまったという(笑)。

――感極まって?

 そうなんです。島の人がたくさん応援しに来てくれまして。僕の中で色んな葛藤があって、こういう音楽の世界に入ってきたんです。というのも、もともと奄美の民謡を高校生の頃からやってきたので、やっぱり島の人にとっても僕は民謡歌手という認識があったんです。シマ唄を歌う人を「唄者」というのですが、唄者として認識されていたものを「違う音楽に行っちゃって」という感じだったんです。

――違う音楽というのはポピュラーミュージックの世界へという事でしょうか。

 「J-POP」みたいな。やはりシマ唄ではない音楽をやろうとしている事に戸惑いを感じている島の人達もいたんです。そういった島の人達の気持ちもわかるし、でも自分はたった一度きりの人生だし、自分の歌、声への可能性に挑戦してみたいなという気持ちもあってこの道を選んだ、という中でのデビュー日だったんです。どれだけの人が来てくれるんだろうなと思っていたんですけど、本当にたくさんの人達が応援に来てくれて。

――嬉しいですよね。そのデビュー日から10年経って、変わってきた意識などはありますか?

 デビューをする前からそうでしたが、やはり人との出会いです。たくさんの人達と出会って、その人達の力が僕に注がれてデビュー出来たという感じだったんです。そこは今でも変わらず、そういう思いです。例えば、僕は作詞作曲をするようなタイプではないのですが、曲や歌詞を生み出してくれる方々も、周りの方々が僕のイメージを理解してくれて作品を書き上げてくれるので、そういう方達は大事ですね。

――ライブでの人と人との繋がり、ダイレクトに意思疎通を感じる事はありますか?

 あります。海外で活動していると如実に違うと感じるのが、反応が日本の方と海外の方とでは全然違うんです。日本の方だと割と大人しく聴いてくれるんですけど、中国や台湾、中華圏へ行くとその点は真逆ですね。もうステージに上がった瞬間から黄色い歓声が飛んでくるみたいな感じなんです。

――アイドルを見るような感覚なのでしょうか?

 きっとそういう感じですね。向こうの方々に言わせると、「アイドル」という概念も、日本人の持っている概念とはそもそも違うようなんです。「アイドル=可愛い、カッコいい」とかではないんですよね。「ステージ上にいる人はアイドル」という感じ。どんなジャンルの音楽でも「アイドル」みたいな。

――「アイドル=偶像」というような感覚ですね。でも日本では中さんは「アイドル」というよりかは「歌手」というイメージです。

 日本人の場合はそうですよね。向こうの方はみんな一緒なんです。面白いですよね。

もともとあるものを自分流にして歌う

中孝介

中孝介

――先ほど「作詞作曲をするようなタイプではない」との事でしたが、作詞作曲をしたいという欲求はあまりない?

 ないですね。もともとあるものを自分流にして歌うというのが、自分のスタイルとしてしっくりくるんです。

――以前発表されたカバーアルバム『ベストカバーズ~もっと日本。~』もご自身のスタイルに沿った自然な流れですか。

 そうですね。やりたかった事です。

――今作の『THE BEST OF KOUSUKE ATARI』では、モーニング娘。の「雨の降らない星では愛せないだろう?」も収録されていますが、数あるなかからこの曲を選んだ理由は?

 アルバムを出すという時にファンの皆様からリクエストをたくさんもらって、そのなかにあった曲なんです。最初に聴いた時に、詞の世界観が凄いなと思いまして。それでこの曲を是非カバーしたいという事で。やらせてもらうにあたって、高橋愛さんにフィーチャリングのオファーをしたらすぐに快諾して頂けたんです。アイドルとのコラボレーションというのは中孝介にとって新しい挑戦かと思いまして。ファンの皆様からもかなり衝撃を受けたという声をたくさんもらいまして、大変好評を頂きました。僕の10年間のなかでも新しい挑戦です。

――カバー曲のなかでも思い入れがある1曲という事で今作に収録されたのですね。アルバムのディスク1はシングルコレクションという事でカップリング曲も収録されていますが、これらの選曲理由は?

 「路の途中」という曲はカップリングですが、NHKドラマ『ジャッジ』主題歌に使って頂いた曲なんです。僕のふるさとの奄美大島で撮影されたドラマなんです。劇中では架空の島という設定なんですけど、撮影していたのは奄美大島という事で、主題歌のお話を頂いたんです。この曲もそのドラマのおかげで、島の人もそうですし、ドラマを観ている全国の人にも僕の声を知ってもらえるきっかけになったと思います。凄く思い入れの強い曲なんです。

――デビュー曲には思い入れも強いと思いますが、今回このようにたくさんの曲を並べてみて「この曲は思い出すなあ」というのはありますか?

 デビュー曲「それぞれに」は、デビューする前、学生の時に東京に来てレコーディングをしてオリジナルやカバーを歌ったり色々やっているなかで出会った曲なんです。2005年ですかね。この曲をプロデュースしてくれた羽毛田丈史さんが、「女性のシンガーソングライターが書いた曲なんだけど、これ歌ってみない?」という風に言ってくれて初めて聴いた時に、凄く詞の世界観が素敵だなと思ったし、懐かしい感じがとてもしたんです。「懐かしさ」というのを人に伝えられたらいいなと思いまして。

――懐かしい匂いの感覚?

 そうですね。この匂いを嗅いで「ああ、あの頃を思い出す」みたいな。この歌を聴くと昔、自分が過ごしていた田舎の風景を思い出すとか、そこに住んでいる人達の顔を思い出す、というような事を感じてもらいたいなというのは以前から思っていたのですが、この曲の世界観がそうだったんです。初めて聴いた時は「この曲でデビューするのかな」と思いました。

――正しくその通りとなりましたね。

 はい。その後にレコーディングをして。この曲はもともと江崎とし子さんという京都出身のシンガーソングライターのものなんですけど、江崎さん自身も歌っていてCDには入っているんです。だから実はこの曲は彼女のカバー曲なんです。この曲を歌わせてくれた江崎とし子さんには感謝です。この曲に出会った後に、今作にも収録されていますが「家路」という曲を江崎さんが初めて僕の為に書き下ろしてくれたんです。

――今回はアコースティックバージョンですね。

 そうです。やっぱりこの曲にも凄く思い入れがありますね。初めて江崎さんに書いてもらった曲という事で。

感覚的なのと意識的なのと両方

中孝介

中孝介

――レコーディングでは精神統一などをしたりしますか?

 そんなにガッツリという訳ではありませんが、やっぱり歌の言葉をそっと人の心に置いてくるような気持ちで歌っています。雑に歌うのではなくて。

――それは意識的に歌うとそういう感覚で歌えるのでしょうか?

 最初はやはり難しかったですね。全然出来なくて。それこそ「それぞれに」を歌っている時は、ただ音程をなぞっているだけの歌い方でした。だからその頃の歌を聴くと「今だったらこう歌うんだけどな…」と。どのアーティストさんでもこれはあると思うんですけど。

――凄く難しい事ですよね。自身では「こう歌いたい」というのがあっても、聴き手は「この当時の感じが良かった」という意見もなかには。

 自分のなかでは「昔の方が良かった」と思う部分もあるんですけど、やっぱり歌い尻とか、ちょっとした間とか、そういうのは年齢を重ねていく上で変わっていきますよね。

――曲のデモ段階で歌い方の指定なども入っているのでしょうか? グィン(編注=裏声を瞬間的に含めるこぶしの一種)をどのタイミングで入れるかなど。

 いえ、一切そういうのは入っていないですね。

――シンプルに仮歌のメロディだけ?

 そうですね。グィンを意識して歌って仮歌を入れてくれる方もいらっしゃいましたけど、その通りにはやらないですね。

――中さんはグィンやこぶしなどは感覚的にやっているものなのでしょうか?

 感覚的と意識的の両方です。バランスは凄く気にします。曲によってはこぶしの合う、合わないがあるので。例えば4つ打ちのリズムがガンガン鳴っている曲にはこぶしは合わないなと僕は思いますので、こぶしなどはあえて少なめにして歌ったりとか。

中孝介

中孝介

――確かに楽曲によってストレートな歌い方のものもありますね。それは楽曲の雰囲気に合わせていたのですね。でもこぶしなどを入れたくなりませんか? 例えば、ビブラートが凄く上手く出来る人はそれを入れたくなると思うんです。それを抑制するという事ですよね。

 そうですね。それを使わずに歌うと、何か自分じゃないというか…そういう感じにはなりますね。抑えられている感はやっぱりあります。歌自体も、客観的に聴いた時に「のっぺりと聴こえないかな?」というのはあります。

――グィンは限られた人しかできない歌唱法ですが、音程の上げ幅を大きくするという事はしないですか。

 意識的にではなく勝手にそうなります。振り幅を大きくし過ぎるとわざとらしく聴こえてしまうので。出来ない人が真似してやっているみたいな不自然な響きになるんです。自然な響きで鳴っているこぶしやグィンなどは凄く大事にしています。

――練習をすれば意識して出来るものでしょうか?

 最初は全然そういう歌い方ではなかったんです。それこそ、カラオケなどに行ってもストレートに歌っていたんです。やはり民謡をやり出してからですね。やり始めてから半年から1年くらいでこういう風になっていました。

――先生などに教わって?

 僕はカセットテープやCDを聴いて耳で覚えました。ひたすら聴き真似をして。高校生の頃に初めてシマ唄をちゃんと聴いて、初めて生で聴いたシマ唄が元ちとせさんの歌だったんです。それに衝撃を受けてから、元ちとせさんが地元で出しているシマ唄のCDを一日中ずっと、寝ても覚めても聴いていました。高校2年生くらいからですかね。

――それを意識して聴いているうちにコツを掴んできた?

 そうですね。その頃から三味線も習い始めて、家では色んな歌い手のカセットテープやCDを聴きまくっていましたね。

――「教えて欲しい」と言われても、やはり教えるのは難しい歌唱法でしょうか?

 やはり難しいですね。シマ唄自体が口頭伝承の音楽なので、親が歌っているのを子供が小さい頃から自然と聴いてそれを真似するような感じですかね。

――子供が言葉を自然に覚えるようなものなのですね。

 そういう感じです。今でこそ奄美の中でも教室などはたくさんありますけど、教室で教えられる事ももちろん大事なんですが、“教室歌”になり過ぎるとその歌い方しか出来ないんですよね。だからある程度の事を身に付けたら、後は自分で自分の歌の世界を創っていく方が色んな人とコラボ出来ると言いますか。そういう感じで僕はシマ唄と向き合ってきました。

言葉の意味を覚えていても発音を忘れてしまったり

中孝介

中孝介

――中国語で歌っている曲もありますが、中国語もやられていたのでしょうか?

 いえ、全然。10年前などは一切わからなかったです。

――曲を出すにあたって練習した?

 そうです。レコーディングの時も中国語が喋れる日本人の方に来てもらって、発音を聞いてもらいながらですね。

――中さんの中国語の歌を聴くと、昔から中国語をやっていたのでは?という印象です。

 いやいや(笑)。でも10年かかってやっていますからね。今作のなかで、中国語で歌っている曲は、中国に行き出して6年経った頃なんですけ、その頃でも中国語がわからなかったですね。

――中国語の歌詞の意味も理解した上で発音も気にしなければならない、というのはかなりハードルが高いのでは?

 そうですよね。基本的に、日本語には全くない発音ばかりなので。

――中国語の発音はさらにグィンに合うという印象を受けました。

 でも、その発音をしながらこの歌を歌わなければならないというのは、本当に難しい所です…。

――苦労なさった点なのですね。

 ライブをやるにあたっては、歌詞も全部バッチリ覚えないといけないので。発音を気にすると言葉を忘れてしまうし、言葉の意味を覚えていても発音を忘れてしまったりとか。そこが一番難しいんです。歌になるとあまり関係なくなるんですけど。

――やはり響きとして言葉を捉えている部分が大きいのでしょうか。

 そうですね。言葉で喋るとなると、本当にちゃんと発音をしないと全く違う意味で捉えられたりしてしまうので。

――それは一番困りますね。

 そうなんですよ…。

中孝介「THE BEST OF KOUSUKE ATARI」

中孝介「THE BEST OF KOUSUKE ATARI」

――今作の「中華圏ベスト」の方で思い入れのある曲は?

 「青蔵高原」という曲ですかね。この曲は思い入れのある曲というか、歌っていて気持ち良い曲ですね。ライブでやると中国の人が大合唱するんですよ。

――この曲は中国でのスタンダードナンバーなのでしょうか?

 そうです。例えば中国で“のど自慢”があるとすれば、だいたいこの曲を歌う人が多いと言いますか。

――そこまで浸透している曲なのですね。

 「歌の上手さを出す」という曲ですかね。日本で例えるなら、美空ひばりさんの「川の流れのように」とか、ああいう位置でしょうか。それくらいの曲です。「青蔵高原」は中国人であれば、という感じの誰しも知っているという曲なのでライブでは盛り上がりますよ。イントロの時点では「何の曲だろう?」と思われるんですが、最初の歌詞を歌い出した瞬間に「ウワァ〜!」ってなります(笑)。

――イントロは違う場合もある?

 そうなんです。中国人でも色んな人が歌っているんですけど、各アーティストさんによってイントロがそれぞれ違うんですよね。

――そういう事なのですね。他の曲、「野ばら」はどうでしょうか?

 これは台湾の映画の中で歌って、出演もさせて頂いたんです。その中のライブのシーンで歌っている曲ですね。その映画に出演するとなって、ライブのシーンに監督さんがイメージして浮かんだ曲がこの曲だったそうなんです。それでこの曲を歌うという事になったんです。

――監督はこの「野ばら」に日本のイメージがあると?

 そうです。日本のイメージがある曲という事で。向こうのアーティストのファン・イーチェン(范 逸臣)と一緒に歌ったんです。でも曲を作ったのはシューベルトという(笑)。小さい頃に音楽の授業で習いましたよね。

“本当に大事なもの”って何?シマ唄のルーツ

――ちょっと気になったのですが、中孝介さんの「中(あたり)」という姓は奄美ではポピュラーな名字なのでしょうか?

 そんなに多くはないですけど、奄美の人は「中」といったら「あたり」という認識はあります。「中(なか)」さんという人も居るんですけど。「あたり」という姓も3パターンくらいあるんです。「中」、「当」、「當」です。その3つの「あたりさん」がいるんです。あと、奄美は一文字の姓が多いんですよね。元ちとせさんの「元」もそうですし。(編注=「當」は「当」の旧字体)

――それは中華圏からの影響などがあるのでしょうか?

 中国とかではなく、奄美大島は虐げられてきた島で、侵略ばかりされている島なんですよ。もともと琉球王朝に支配されて、その後は薩摩藩に支配され、戦後はアメリカ領土にもなり…。その薩摩藩に支配されていた時に、役人と島の人を分ける為に2文字姓の人達が1文字取られたんですよ。

――そういった歴史があるのですね…。

 それで1文字姓が今も多く残っているんです。そして、取られた1文字を戻した人もいるんです。ウチの場合は戻さなかったのでしょうね。

――そういった歴史が歌に反映している部分もありますか?

 シマ唄とかはやはりそうですね。薩摩に侵略されている時は、奄美大島の特産のさとうきびを作っても作っても年貢として薩摩藩に納めなければならなくて、自分達には何も与えられない、そういうシマ唄もいまだに残っていますし。

――そうなってくると、シマ唄はブルースのような音楽でもある?

 そうです。ブルースです。その頃はテレビもラジオも雑誌もない、もちろんインターネットも無いですし、娯楽といったら歌う事だったんです。自分達を歌う事で辛さを癒していたという。その頃は本当に生活に歌が根付いていた時代ですね。

――根源にブルースと通じるものがありますね。ということは中さんもブルースにも惹かれる部分はありますか。

 はい、もちろんありますね。

――ブルースを聴いたりも?

 ブルースというよりは、ブラックミュージック系のシンガーが好きですね。

――ちなみにどういったアーティストが好きですか?

 僕はダントツでホイットニー・ヒューストンが好きです。聴いているともうスカッとしますね。歌がちゃんと生きているという感じがするんです。

――「歌が生きている」と感じるアーティストはそんなには多くない?

 日本人の方でももちろんいますけどね。美空ひばりさんとか。

人の物欲を無くしたい

中孝介

中孝介

――「歌が生きている」と関係があるのか定かではないのですが、ご自身の歌で「人の物欲を無くしたい」といった事を以前語られていましたが、これは凄い事だと思いました。悟りを開くというくらいの事ではないかと。

 そうですね(笑)。物にあんまり執着してもね…。一番大切なものってやっぱり命だと思いますし。どんなに高価な物があったとしても、明日地震が来たらそんなの流れてしまうかもしれないですし。そういう“物”よりも、“本当に大事なもの”って何?みたいな所に意識してみんな生きていって欲しいなと思います。

――この10年間ずっとその感覚は変わらない?

 う〜ん、そうでしたね。だからたまに「おじいちゃんか!」と言われて(笑)。

――何となく今お話しさせて頂いて、そういった達観した感じもありますね。

 いやいや、達観はまだしていないと思いますけど(笑)。

――ファンレターなどに「物欲が無くなりました」とかあったりしますか?

 さすがにそれはまだないですけどね(笑)。歌にしてもその人が「は〜」と声を出しただけで耳が向くような人が本物だと思いますね。ただ上手いだけでは駄目だと思うんです。上手いという事ももちろん大事ですけど。その向こう側に見えてくるその人の人生観だったりとか、そういうものが聴いている人に自然に伝わるのが本当の歌なんだろうなと思います。

――それにはやはりキャリアも必要でしょうか?

 キャリアももちろんですけど、やはり持って生まれたものだったりするのでしょうかね。

――若い方がそういうものを持っていると「人生何回目なんだ?」と思ってしまうような、輪廻転世のようなものを感じてしまいます。

 そうですね。そういうものを凄く感じてしまうのが昭和の歌謡曲界の人達ですね。今聴いても凄いなと思います。

――それでは最後に、今作『THE BEST OF KOUSUKE ATARI』についてのメッセージをお願いします。

 10周年を記念した初のベストアルバムをリリースする事が出来たんですけど、自分自身もこのアルバムを受け取って聴いて凄く充実した10年を歩ませて頂いたと思いました。歩いてきたこの道のりを感じる一枚になったと思います。このアルバムを聴いてもらって、僕の声を初めて知った曲というのは「花」が一番多いと思うんです。それ以外にも、言葉の向こう側に本当にたくさんの景色が見えてくる曲がいっぱいありますし、とても季節を感じられる一枚にもなっていると思います。この2枚組の今作で僕の歩いてきた軌跡を感じて頂けたらと思います。

(取材・村上順一)

作品情報

「THE BEST OF KOUSUKE ATARI」
発売日:10月26日(水)発売
価格:3518円(税抜)/3800円(税込)
品番:ESCL-4712~4713

▽収録曲
Disc1
1、それぞれに
2、思い出のすぐそばで
3、花
4、家路~Acoustic Version
5、種をまく日々
6、春
7、絆
8、夏夕空
9、路の途中
10、恋
11、空が空
12、君ノカケラ feat. 宮本笑里
13、サンサーラ
14、雨の降らない星では愛せないだろう?/feat. 高橋愛
15、目をとじても

Disc2
1、心の陽
2、記憶-Last Forever- feat. 韓雪
3、童話
4、夜想曲~nocturne
5、野ばら
6、青藏高原
7、明年今日
8、在水一方
9、花海
10、言葉はいらない feat. 韓雪
11、茉莉花
12、風になって~勇者的浪漫~/Rake feat. 中孝介
13、相信愛/林育羣 feat.中孝介

コンサート情報

<Setting Sun Around Festival in AMAMI 中 孝介デビュー10周年!~ゆえゆらい2016~>

日時:2016年10月29日(土)開場19:00 開演19:30
場所:奄美パーク 奄美の郷 イベント広場(屋内)
出演:中 孝介/スペシャルゲスト:元ちとせ、カサリンチュ、中ほず美
主催:エピックレコードジャパン
企画・制作:アーマイナープロジェクト/エピックレコードジャパン
協力:日本航空/南九州ファミリーマート
料金:一般3000円(税込)/中高生1500円(税込)※未就学時無料

<中孝介デビュー10周年を記念したコンサートツアー>

“The Best of Kousuke Atari”

2016年11月26日(土)開場16:30/開演17:00 鹿児島 南日本新聞会館 みなみホール
2016年11月27日(日)開場15:00/開演15:30 福岡 Gate’s7
2016年12月3日(土)開場16:30/開演17:00 大阪 高槻現代劇場 中ホール
2016年12月4日(日)開場14:45/開演15:30 東京 東京国際フォーラム ホールC
2017年1月15日(日)開場15:00/開演15:30 山形 山形テルサ

チケット代金:全席指定 6500円(税込)
※福岡公演のみ 全席自由 6500円(税込/ドリンク代込み)
年齢制限:未就学児入場不可
出演者:中 孝介/NAOTO(Vn)/伊藤 ハルトシ(Gt&Vc)/黒木 千波留(Pf)

イベント情報

『THE BEST OF KOUSUKE ATARI』発売記念 リリースイベント
内容:ミニライブ&特典会(サイン会&握手会)

日時:2016年11月3日(木・祝) 1回目 13:00~  / 2回目 16:00~
会場:(鹿児島県)オプシアミスミ 1階中央イベント広場

日時:2016年11月5日(土) 13:00~/15:00~ 
会場:(福岡県)イオンモール筑紫野 1F ウエストコート(イオン側)

日時:2016年11月11日(金) 19:00~ 
会場:大阪府)タワーレコード梅田NU茶屋町店 店内イベントスペース

日時:2016年11月20日(金) 13:00~/16:00~ 
会場:(神奈川県)TSUTAYA 横浜みなとみらい店 店内イベントスペース

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