幕張メッセでのツアー最終公演で熱演する[Alexandros](撮影・山川哲矢)

幕張メッセでのツアー最終公演で熱演する[Alexandros](撮影・山川哲矢)

 【ライブレポート】ロックバンド[Alexandros](アレキサンドロス)が19日、千葉市美浜区の幕張メッセ国際展示場で、全国ツアー『TOUR 2015 “ご馳走にありつかせて頂きます”』のファイナル公演を開催。2016年6月に大阪城ホールで『Premium V.I.P. Party』を行うことを発表した。同イベントは[Alexandros]の大きな節目を迎えるたびに行われるもの。年の終わりに行われたファイナルステージでこの発表がされたことからも、来年に向けて何らかの大きな動きがうかがえるところだ。その大きな節目を目前にした彼らの姿を今回はレポートする。

(撮影・河本悠貴)

(撮影・河本悠貴)

 [Alexandros]は、川上洋平、磯部寛之、白井眞輝、庄村聡泰の4人からなるバンド。CDが売れないといわれている昨今で、6月にリリースされたアルバム『ALXD』は10万枚のセールスを達成、多くの夏フェスでは本命として多くの会場でトリを務め、さらには海外でもステージだけでなく、ラジオレギュラーなど多方面での活躍を見せ、現在名実ともに日本を代表するバンドの一つといえる。

 この日のステージは、30分ほど時間を押してスタートした。ステージ前に張り巡らされた、ステージが透けて見える薄い幕に、数字が映し出される。その数は一つずつアナウンスとともにカウントダウン。「3、2、1」の言葉に続き、けたたましいSEとともに4人は、ステージに現れた。そしてスタンバイが終わると、そのSEを引き継ぐように彼らのプレーは始まり、幕は上がった。益々大きくなっていく歓声と手拍子。川上はギターを置き、叫んだ「Good evening, 幕張!」。その瞬間、その声を掻き消すほどの、大きな歓声が会場に響いた。

(撮影・河本悠貴)

(撮影・河本悠貴)

 最新アルバムのオープニングナンバー「ワタリドリ」で、ステージはスタートした。グルーヴ豊かなドラムを聴かせる庄村に、踏ん張るように踏み込んでいたベースの磯部。2人の織り成す分厚いリズムセクションに、白井、川上のギターが絡み、広大な会場に響き渡る奥行きを与えていく。

 その彼らが作り出した空間を、高らかな川上の声が突き抜けていった。その声は、まるで聴くものをその空間に浮かせてくれるような錯覚さえ覚えさせる。まさしく広大な場所でのステージを行うための楽曲、サウンドであり、そのためにこそ彼らはそこにいる、ステージ上の彼らの存在はそんな雰囲気すら感じさせていた。

 さらにアルバムに収録されたナンバー「Boo!」「ワンテンポ遅れたMonster ain't dead」と、ホットなプレーが続いた。8ビート、16ビート、さらには4ビートと、変幻自在のリズムが、聴くものの気持ちを煽る。さらにサビからブリッジと展開していく中、エアポケットのように存在するフックなど、たくさんの引き出しがそこには見られたが、決して一つ一つが、単なる仕掛けにはなっていなかった。川上の歌を最大限に響かせるため、その一つ一つは意味を持ち存在する。そう思わせられるほどの存在感が、会場にはあふれていた。

(撮影・河本悠貴)

(撮影・河本悠貴)

 会場の床が抜けそうなほどの大きなジャンプを見せた観衆。熱気に満たされた会場の中で、観衆の興奮度は既に最高潮に達していた。そんな人々を川上はさらに煽る。「最高の一日にしようぜ! 今日だけは人間を捨てますか? 犬になるか!?」。川上のその言葉に続き、プレーされたのは「Dog 3」。さらに「Cat 2」と、聴くものを一時もじっとさせてくれないハードなナンバーを立て続けに見舞い、さらには途中でMETALLICAの「Master of Puppets」のイントロや「Battery」のエンディングをちりばめるなど、ファンも大喜びの、やりたい放題の見せ場。

 さらに「Kick & Spin」に続いて、ユニークなボイスエフェクトを大胆に導入した「Thunder」や、ポップな響きの「Leaving Grapefruits」と、別の視点から描いた[Alexandros]の世界観を披露していた。そして空間の広がりを感じさせる「Starrrrrrr」を機に、ステージはクライマックスへ。

 さら8人のストリングスを加え、音の厚みを感じさせる「Oblivion」から、観衆の興奮を煽っていく川上。右へ左へとさらに観衆を奮い立たせるようにアピールする磯部、白井。ラストナンバーは「can't explain」。そしてプレーが終わり「愛してるぜ、幕張!」、川上のその言葉とともに、4人はステージを降りた。

 誰もいなくなったステージを前に、彼らがステージに戻ることを煽るように、フロアからは大きな手拍子が鳴り響いた。その音に応じて再びステージに登場した4人。彼らは川上を先頭に、ステージ中央に張り出された花道よりさらに会場の後方へと練り歩いた。川上は1人、アカペラでメロディを歌いながら、観衆に続けるように即す。彼らが歩くその先には、フロア後方に設置された、全方位型のステージ。アンコール1曲目は、会場の後方を中心にして行われた。曲は[Alexandros]がデビュー前から大事にしていたという「Adventure」。

(撮影・河本悠貴)

(撮影・河本悠貴)

 そして思いを全て吐き出すかのようなラストスパートで、ステージを畳み掛ける。それでも観衆が再び鳴り響かせた歓声と手拍子に応じ、セカンドアンコールへ。そして観衆への感謝とともに、未だタイトルも詞もないという新曲を披露。7/8拍子、8ビートと躍動するリズムを、ストリングスが広がりを与える。

 ラストは「For Freedom or Forever Young」が披露された。プレーを終えると、磯部、白井、庄村と1人、また1人ステージを降りたが、川上だけは最後まで名残惜しそうにステージに留まっていた。そして、アコースティックギターを抱え、再び「ワタリドリ」を歌った。

 ステージ冒頭でのプレーとは違い、シンプルに響くギターの音色。しかしその音がさらに大きな空間を作り出し、川上の歌をダイレクトに近い形で観衆の耳に届けた。詞の終わりに綴られた「いつかまた会う日まで」という言葉が、会場中の観衆の胸に突き刺さり、来年、そしてその先の未来に続く深い余韻を残した。(取材・桂 伸也)

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