WEAVER、自信が確信に変わった初ホールツアー 新章の幕開け
新たな側面を見せた新曲
無線機の音声が流れる。青いライトが照らす。321のカウントで始まったのは新曲の「クローン」は先ほどの空間とは一線を画すナンバーだった。ベースサウンドの際立ったグルーヴ感に、歪みのある音声。そして、ピアノとキーボードを使い分けることで節々の雰囲気をドラマティックに変えてみせた。彼らの本質をみているようだった。
それは9曲目の新曲「さよならと言わないで」で深層に達するのであった。疾走感のあるジャジーなサウンドにエレクトロな音が加わる。プログレの追及と言った方が良いかもしれない。明らかに杉本の意思が反映された楽曲とも思えた。そして、それを連想させるようにステージ背面のスクリーンには近未来のデジタルマッピングが映し出されていた。これまでの楽曲とは異なる新曲は、彼らの表現力の豊かさを感じさせた。
無音のなかで、逆巻きサウンドが流れる。低音が響く。バラードナンバーの「Beloved」だ。映画「ライアの祈り」主題歌であるとそれは、生粋のラブソングだが、ホールという空間を得てよりスケール感を増しているようにも感じた。そして、スクリーンにはMVの世界観と同じように歌詞が踊るのであった。
手応えがあった1年
ここで杉本がマイクをとる。「来年2月に新しいアルバムをリリースします。この2曲(クローン、さよならと言わないで)も春からのライブハウスツアーで披露していて、そこでもらった(ファンの)声からリアレンジして届けています。皆さんがいて完成できる。流行とずれたシーンにいるけど、どうやったらライブに来てもらえるか悩んで。そうしたなかでこの1年はようやく手応えがあって」と本音をのぞかせた。
そして、「次に送る曲はそれをしっかりと感じられたもので、確信できた。少年少女になれますか」と呼びかけて披露されたのは「Boys & Girls」だ。バイオリン2人とチェロ、ビオラの四重弦楽のストリングスも加わって更に壮大に届けられる。先ほどまでとは異なる奥行きのあるサウンドが展開されていく。そしてメンバーの興奮の度合いも高めていく。奥野はステージ前に乗り出しジャンプする。会場全体も跳ねる。
ドラムのカウントで始まったのは、情緒的なサウンドが際立った「Hard to say I love you ~言い出せなくて~」。そして、13曲目「夢じゃないこの世界」では軽快且つダイナミックなサウンドが流れた。14曲目「Shall we dance」はピアノソロから始まる。そのあとにドラムソロ。ベースが加わる。ピアノの音を強弱させながら感情をコントロールする。杉本は「渋谷一緒に踊ろうか」と届ける。そんなことを言いながらもグルーヴの転調を試みて惑わす。にくい。
くちづけDiamond
本編終了に向かって疾走感は増していく。ドラムがリズムを回し、ほどなくしてピアノの音色が響く。「Free will」だ。ファンとの一体感をより高める楽曲を投下し続ける。間奏で響くバイオリン、そしてドラム、奥野もベースを背中に回してスネアドラとバスドラムを叩く。河邉と交互にやり取りする。演奏し終えてスティックを客席に放った奥野の姿がクールに見えた。
杉本が言う。「渋谷最高!」
そして、本編最後はピアノの連弾で始まった「くちづけDiamond」だ。テンポの早い曲がファンの心を激しく躍らせる。そして、ファンもそれを受け止め大歓声と手を大きく振って応える。曲を終えても拍手が鳴りやまない。「ありがとう」と短く言ってメンバーが立ち去る。
すぐさま、アンコールを求める拍手が沸き起こる。バンド名を叫ぶ。女性の高い声がホールに響く。しばらくして戻ってきたのは杉本だけ。杉本は「最初からでき上がっていたけど、でき上がり過ぎです(笑)。ファイナルは寂しいけど充実感があります。全国の皆に拍手してください」と讃えた。
感謝の言葉を曲で伝えるように、バイオリンと「こっちを向いてよ」を2人で披露した。弦楽と鍵盤のきれい音色が響く。そして優しい歌声が届けられる。
Night Rainbow
杉本が奥野と河邉の2人を呼び込む。
「最高の1日になりました。何度も言うけど“ありがとう”。次作のアルバムタイトルは『Night Rainbow』です。どんどん、新しい景色を届けていきたい。夜の虹は偶然にしか起きないことから、それをみると幸福になるとも言われていて、僕たちの曲もそうであるようになりたいという思いで名付けました」と経緯を説明。それを引っ提げて来春に再びの全国ホールツアーを行うことを報告。「今度のツアーでは夜に虹が描かれるようにしたい。今回のツアーにはなかった夜の虹をみせていきたい。新しい景色をみせたい」と述べた。
そして杉本が続ける。「僕たちの音楽を受け止めてくれるみんなのおかげ、見失うことがあったけど、一緒に音楽がやれてよかった。シンプルに今日楽しかったと思ってもらえたらそれで良い。ぜひ僕たちのライブに来てください。新しい音楽を聞いてほしい」。
「僕たちはいつもいるよ、という気持ちを込めた曲で、アルバム収録曲です」と語って新曲の「Welcome!」を披露した。コーラスから入ったそれは力強さがあった。虹を見立てるように、黄、ピンク、青のライトが輝き放つ。次のツアーへ“紡いでいく”そんな余韻を残した力のあるサウンドだった。歌い終え、最後はバイオリンの弦楽隊も呼び込んであいさつした。
「ぜひ、次回のツアーも楽しみにしてください。ありがとう」。割れんばかりの歓声と拍手はしばらく鳴りやまなかった。
(おわり)















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