WEAVER、自信が確信に変わった初ホールツアー 新章の幕開け
WEAVER。初のホールツアー最終公演で見せた魅力の数々(撮影・高田 梓)
【ライブレポート】3ピース・ピアノ・ロックバンドのWEAVERが去る11月28日、NHKホールで全国ツアー『WEAVER HALL TOUR 2015 Still Boys & Girls ~Sing Like Dancing In Our Hall~』の最終公演を行った。ドラムとベースの鼓動で華麗に舞うピアノの旋律。彼らの音楽はある種のお洒落や気品さを感じさせるが、その内側には複雑に絡み合うフレーズを巧みに操り、そして、軽快なトークで聴く者の心をくすぐる。10都市10公演の本ツアーは全会場がホール。彼らの魅力が存分に活かせる空間でもある。そうした環境のなか、ストリングスも加わって壮大に届けられた音、そして、送られた詞(ことば)の数々はファンを魅了するのに十分。それは「来春再びホールツアーをやります」と口にした瞬間に沸き起こった歓声から本ツアーの満足度がうかがえたのである。(取材・木村陽仁)
心に寄り添う楽曲たち
ホールでは、60年代の米ロックをBGMに、ファンの高い声が踊っていた。ステージには、高さ3メートルはあろう本棚が3つ。棚には洋書やスーツケース、バスケットボールなどのアイテムが多彩に置いてあった。その本棚の間に2つの地球儀。そして正面右側にはドラムセット、中央にはグランドピアノが置いてある。彼らの部屋を連想させるツクリはアンティークさが漂い、落ち着いた空間であった。
薄暗い場内で灯るランプは、会場に漂うスモークでぼんやりとしていた。その明かりも次第に落とされていくと、途切れ途切れのラジオが流れる。その上から3つの青いライトが薄く照らす。歓声に包まれながらメンバーがゆっくりとした足取りで登場する。やがて音は途切れ、重厚なサウンドが流れる。背面のミラーボールが四方八方に光を反射させる。眩しいほどの明るさを放って披露したのは「Shine」だった。
それはあたかも水面を突き抜ける強い日差しのようだった。平凡な現実社会で凝り固まった心を解き放つように届けられた、ヴォーカル&ピアノの杉本雄治、ベースの奥野翔太、ドラムの河邉徹によるお洒落で気品の楽曲。アグレシッブな演奏ながらも優しさが溢れるメロディに、ファンは高揚を高めていた。そして、杉本が歌いながら語り掛ける。「渋谷、最高の1日にしようよ」。
さらりと見せる“難テク”
彼らは曲終わりにもファンの心に触れていく。「ありがとう」。拍手と歓声が沸く。心を撫でられている感覚は2曲目以降も同じで、ドラムから始まった「トキドキセカイ」では彼らの演奏スタイルにドキッとさせられたファンもいたように感じる。立ちながらピアノを奏でていた杉本は、途中で演奏を奥野に任せ、マイクを手にステージ前で歌う。一人ひとりの観客に挨拶するように届けられ、その後にピアノの上に乗って歌唱。そうした荒々しさもまた彼の魅力だ。そして、途切れることなく奥野から演奏を華麗に受け取るのである。難度の高い演出もサラリとおこなってしまうところがまたファンの心をくすぐる。
ファンの心を奪ったのはそうした演出だけではない。キメを確信的に長く設けることで無音状態の緊張感を生ませた。その一方で、流れるように3曲目「愛のカタチ」へと移行させ、「もっと盛り上がっていこうよ」と温かみのある言葉を投げかける。ロックのなかではギターがないという異空間だが、それをリズムやグルーヴ、そしてピアノの旋律でロマンティックに、そしてダイナミックに見せていた。
3曲目を終えて杉本が改めて挨拶する。
「渋谷、会いたかったよ! ファイナルです。今日が一番良いライブになるという意識しかない。最高です。もう出来上がっていますね。どの会場も最高の笑顔をみせてくれて。今日もどういう笑顔を見せてくれてるんだろうなあと思ったけど十分。3階も見えているよ。今日は撮影用にカメラが入っているけど気にせずに思い思いに楽しんでいってください」
高校時代を回顧
4曲目に披露した新曲「Happiness~ふたりは今も~」からも優しいメロディが空間を支配する。5曲目「blue bird」では、先ほどまで立って弾いていた杉本が座りながら奏でて歌う。しっかりと届けることを意識しているようだった。そして、鍵盤からの離れ際の指の仕草も女性ファンの目を奪った。ドラムの胸を打つ鼓動の一方で、ピアノソロと歌声はとても優しい。
6曲目と7曲目の間に届けられた長い“トークセッション”は、兵庫県出身の3人ならではの軽快なトークでファンを笑顔にさせた。
奥野がまずこう切り出す。「渋谷どうですか? 楽しんでいますか? 最高のライブをする元気はありますか?」。そして、こう続ける。「今回のツアーは僕たちの音楽の部屋に遊びに来たようなイメージ。本棚のなかにあるのは、僕たちの私物がある」と説明。バスケボールは、中学時代にバスケ部だった奥野の私物だったと話し、各メンバーの私物を紹介していく。トークの節々には必ず笑い所があった。
左側の本棚にあったトラベルケースは、ツアー各公演で、その土地にちなんだアイテムをスタッフが入れていたそうだ。東京・渋谷では何が入るんだろう、という会話を笑いを織り交ぜながら繰り広げ、いざ開いてみたら渋谷ハチ公にちなんだ犬のお面。それを杉本がかぶり、会場全員で記念撮影を行った。最初は嫌がっていた杉本だが、被った瞬間に犬になり切り。そんな姿でもファンの心をくすぐった。
歌と笑いのメリハリ
一方、杉本が棚に入れていたのは、3人が高校時代に付けていた日記帳。初々しい当時の歌詞を観ながら回顧する。杉本は当時、ヴォーカル&ギターだったこと、楽曲のタイトルに習いたての漢文のレ点を入れていたこと。そして、杉本がギターをもって初めて作ったという「二人の花火」を歌う。その横で奥野が歌詞の解説を入れる。その姿はもはやコントのようだった。
聴かせるところはしっかりと聴かせ、笑わせるところはしっかりと笑わせる。彼らのもう一つの魅力だった。
演奏とは異なる温かみをもったトーク展開のあとは、「せっかくギターを持っているので」とアコギを持ったままの杉本が弦に手をのせる。そして、奥野と河邉が椅子を分け合いピアノを奏でる。7曲目は「泣きたいくらい幸せになれるよ」。先ほどとは真逆の展開にファンの涙腺はゆるむ。
















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