ヘヴィーサウンドとメロディアスが共存するDinosaur Pile-Up

ヘヴィーサウンドとメロディアスが共存するDinosaur Pile-Up

 UK出身3人組ロックバンドのDinosaur Pile-Up(DPU)が10月21日にニューアルバム『ELEVEN ELEVEN』をリリースした。“恐竜バンドDPU”の称号に相応しく、持ち前の地響きを伴うヘヴィなグルーヴを奏でながらも、オルタナティブロックサウンド上にポップなメロディが映える。90'sグランジを進化させた、轟音ギターアンサンブル――。破壊的サウンドとメロディアスが混在した「DPUサウンド」は、各国のヘヴィロック、オルタナティブロックシーンに衝撃を与え、「新世代ヘヴィロックシーンの重要バンド」として注目を浴びている。

 そのDPUによる待望の新作『ELEVEN ELEVEN』が日本に上陸した。前作まではそのほどんどが、フロントのMatt Bigland(マット・ビグランド:Vo/Gt)により形成されたものであったが、本作はマットに加え、ドラムスのMike Sheils(マイク・シールズ)、ベースのJim Cratchley(ジム・クラッチリー)がレコーディングに加わった。ヘヴィグルーヴ、オルタナティブバンドならではのリアルタイム・インスピレーションが具現化した「強烈な臨場感」を伴った作品となっている。

 本作は、最初からライブを意識してアルバムを作っていった。マットは「アルバムとして自分達のサウンドをより良く捉えてライブ感溢れるサウンドになった。それが今回、初めて出来たんだ」と自信をのぞかせた。そして、「バンドがライヴする様にレコーディングした」と語るプロデューサー・Tom Dalgetyによる“ライヴ感”を重視して録音された。

 90年代のヘヴィロック、オルタナティブロック、グランジ、ガレージロック――、その全てを喰らい尽くし、更なる進化を遂げた肉食恐竜系バンド「Dinosaur Pile-Up」。今まで以上にインパクトのある仕上がりとなったという新作『ELEVEN ELEVEN』を全曲レビューで解説していきたい。  【文・平吉賢治】

M01. 11:11

Dinosaur Pile-Up「ELEVEN ELEVEN」

Dinosaur Pile-Up「ELEVEN ELEVEN」

 忍び寄る様なマットのギターリフでアルバムの幕は開かれる。アルバムタイトルチューン「11:11」。強烈な地響きのユニゾン4連打からギター、ベース、ドラムがフルパワーで咆哮する。恐竜が闊歩するようなヘヴィ・ビート上に凶暴なブレス混じりのボーカルが響く。実際にライブで「ドラムを破壊する」ほどのマイクのドラムプレイは、一曲目から遠慮無く、けたたましく鳴り響く。全力で身体ごと引っ張られる様な「タメ」のヘヴィグルーヴ。「ドラムプレイが激しいのでとにかく耐えられるもの、壊れないものしか使えないんだ。それでも壊れるけどね」―マイク・シールズ (Ds)。

M02. Red And Purple

 攻めのギター。一直線に恐竜が突進するラウドなギターリフ上で疾走する8ビート。大型フェスでのライブ空間が想像できる様なストレート・ロックナンバー。愛器・エクスプローラーを獰猛に鳴らし、シンプルなメロディをラフに歌い飛ばし、ダウナーでザラついたシャウトを織り混ぜる。これぞ90’sオルタナティブシーンを喰らい尽くし新世紀に進化させたマットのスタイルだ。中間部のギターリフの展開は、待ってましたとばかりのオルタナ・ヘヴィロック王道的アプローチを見せ、小細工一切無しの怒濤のテンションで終盤まで走り抜ける。

M03. Grim Valentine

 目の前にギターアンプがあるかの様な臨場感のギターリフ。うねるベースが醸し出すヘヴィグルーヴ。セクションの静と動。前作までのアプローチを引き継ぐ「DPUらしさ」が色濃く出ている楽曲。ギターソロでの何とも野性的なプレイ。このセクションは、ギターソロパート以外の伴奏のギターを一切排除していおり、「ドラム、ベース、ギターソロ」しか鳴ならさずに変則的なメロディを奏でる事で滲むアウトサイダー的な荒廃感が印象的だ。「今回は最初からライブを意識して創っていった」―DPUのその言葉が伊達ではない事を証明したド迫力の3ピースサウンドだ。DPUの、グランジ、ガレージロックのバックボーンを窺う事が出来る。

M04. Friend of Mine

 アルバム『ELEVEN ELEVEN』にはキラーチューンが2曲ある。1つはこの「Friend of Mine」。マットのリズミックなボーカルから一瞬テンションを落とし、コーラス部で弾ける展開、ポップさと変則感が絶妙に合わさったフレンドリーなメロディ。「俺の告白を聞いてくれ、友よ」という歌詞のメッセージ。「ヘヴィでメロディーが綺麗な音楽を創りたいという思いがずっとあった。10代の頃、こういうバンドをやりたかったというイメージがあって、今その本当にやりたかったバンドをやっている」―そう語るマットの真っすぐな言葉、正にその初期衝動が形になったのだと納得できる楽曲だ。

 WEEZER(ウィーザー)の1stアルバムをバンドの重要アルバムに挙げるといった事もあり、90年代にシーンを賑わせたパワーポップをDPUなりに解釈し、見事に進化させ、現代のロックシーンにDPUサウンドとしてアウトプットした楽曲だ。

M05. Nothing Personal

 最もシンプルでソニック感溢れる一曲。2小節のギターリフがメイン、「リフ推し」のNothing Personalは、展開されてはギターリフに戻り、コーラスを経てはギターリフに戻る。グイグイくるリフ。リフ。リフレイン。リフ。とにかくこの曲は、重厚にオーバーダビングされたシンプルでクールなギターリフを全身で楽しみ、ライブでは「モッシュあるのみ」だ。

M06. Anxiety Trip

 半端ではないヘヴィグルーヴ。この曲に関してはとにかくヘヴィ過ぎる。『ELEVEN ELEVEN』のキラーチューンのもう一方はこの「Anxiety Trip」。極限までヘビーにプレイされたDPUバンドアンサンブルの「破壊的サウンドとメロディアスの混在」は、アルバム中盤のこの「Anxiety Trip」でマキシマムに炸裂する。楽曲のヘヴィさをアウトプットさせる為、この曲のベースとギターのチューニングは1音半も下げられているという「ヘヴィさ」に懸ける徹底っぷり。あまりにヘビー過ぎて、リフの低音部が謎音程に聴こえる箇所があるあたりも香ばしい魅力だ。

 楽曲の構成は「ヘヴィグルーヴ」「静と動」「メロディアス」「コーラス」と、徹底的に分離されつつも、各セクションは見事にジョイントされ、統率とバランスの取れた構成になっている。その点にDPUの世界的な実力をサウンドからダイレクトに感じる事が出来る。楽曲中盤「Anxiety Trip!」のシャウトから終盤に抜ける極限ヘヴィグルーブが叩き付けるサウンドは「Dinosaur Pile-Up」の真骨頂だ。

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