M07. Might As Well

 2nd EP『11:11 EP』にも収録されていた「Might As Well」。この曲はDPUのメロディアスでポップな表情が前面に押し出され、口ずさみながら楽しめるポップチューン。マットの母は音楽好きで、車の中でTHE BEATLES(ビートルズ)やThe Kinks(キンクス)、The Beach Boys(ビーチボーイズ)、ABBA(アバ)などを一緒に良く聴いていたという。そしてマットはこう結論付けた。「メロディーがポップなのは母親のせいだ ―」。そんなマット少年が大人になりDPUで歌うのだが、ポップなだけの楽曲をDPUは許可しない。ポップで歌もサワヤカといってもやはりサウンドはあくまでヘヴィ。サビでは壁の様なギターアンサンブル、間奏ではタメまくったドラム上にリフ一発でグイグイと押しまくる。

 「ポップなメロディー」と「ヘヴィな展開」の対比がとても受け入れやすく、DPU入門には適した楽曲とも言えるだろう。ラストではやっぱり恐ろしくヘヴィな展開でシメるこのDPUらしさ。マット・母は、息子がこの様な規格外のロックバンドに成長する事を果たして予想していただろうか。

M08. Gimme Something

 ギターで和音を重厚に奏でるパワーコードワークがたまらない楽曲。90'sパンク、グランジの流れを汲むストレートでダークなギターアンサンブル、ビートレスでベースとボーカルのみでスッと抜く様なセクション、サラッとハードサウンドを走らせ、強烈なシャウトを経て1分半で終了する。ハードでヘヴィながらも何とも潔く清々しいナンバーだ。

M09. Bad Penny

 「Gimme Something」の流れからBPMを上昇させ、ドラムフィルインと共にボーカルが猛るりまくる。前曲の余韻からつなぎ気味に気持ち良く聴けるあたりに「僕達としては、アルバムとして最初から最後まで聴いてもらえるものを作りたいと思ってやっている」と語るジムの言葉通り「アルバム作品ならでは」という楽しみ方を大事にしているDPUの愛情を感じられる。6曲目「Anxiety Trip」の強烈なインパクトからのこの「Gimme Something」までの流れ、アルバム『ELEVEN ELEVEN』の佳境とも言うべくボルテージを味わえる事が出来るだろう。

M10. Crystalline

 オルタナ・グランジシーンが滲み出るマットのボーカルが光る歌い出し、そのメロディセンス。弾き語りライクな導入からの直線的なアプローチは目が覚める様な展開だ。自身らのフェイバリット、重要アルバムとしてNIRVANA(ニルヴァーナ)やFoo Fighters(フーファイターズ)の名を挙げるDPUのバックボーン。それらが敬意の念と進化を伴って音に表れ、見事に自身らのサウンドとして成り立っている。90'sオルタナティブロックのファンにとってはたまらない良曲だ。狙った様なメロディラインが何ともニクい。

M11. Willow Tree

 アルバムラストを飾るのは、ストレートなワンフレーズを軸とした男気溢れる骨太ロックナンバー。メロディとリフとビートが一体となったある種のフィナーレらしさがあり、ライブでも終盤にセットされる事を想像できる楽曲だ。本作全11曲は、シンセサイザーやSE、サンプリング、デジタルサウンド系アプローチ、ダブ、それらを一切用いず「ギター・ドラム・ベースのみ」で徹底的にその全てを展開した天然無添加ロックサウンド。これはDPUのアルバムにおいて特筆すべき点だろう。

M12. (Bonus Track)Cross My Heart

 日本盤のみのボーナストラック。一転してメランコリックなメロディに包まれた世界に。ヘヴィロック、オルタナというよりも、ギターポップ寄りでポピュラリティに溢れた美しいナンバー。マットのフェミニンな歌い回しや優しいファルセット、U2やコールドプレイを彷彿とさせるギターアレンジ。柔らかくキラキラとした世界観が楽しめる。それでもマイクのドラムはズシズシと響く。ベースはゴリゴリと轟く。どういったアプローチでも、どんな楽曲をプレイしても、DPUの個性は滲み出るのだろう。

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