THE ORAL CIGARETTES、語り継がれていく“７・14”で得たものは

もうやるしかない

山中拓也

――手術前の最後のライブを終えられました。例のワンマンから今日まで、歌っていると結構厳しいのでしょうか

山中拓也（以下、山中）　そうですね。正直ずっとポリープが発覚してからは歌うこと自体は厳しかったです。疲れの影響もあったと思うし、連チャンでライブが続いたりすると炎症なのでだんだん膨れが大きくなることもありました。ただ、それも日によってというのもあるし、７月14日の件もあって自分の中でも「あんな悔しいライブも、もうやりたくないな」という思いもあるので、あのとき以降はさらに喉のケアみたいなのをしっかりしないといけないと意識して、夏フェスは挑んできました。

――７月14日のワンマンの際に「今日は大丈夫かな？」と不安な気持ちもあったのでしょうか？　それともいつも通りという感じだったのか…

山中　あったかもしれないです。ワンマンツアーの中で、自分としてはポリープがそれほど苦しいというのはなかったけど、例のワンマンの前にちょっと違和感があったので、もしかしたら膨れてきているのかと思って当日は朝に病院に行って点滴を打っていました。それで、ちょっと不安だと思いながらもリハーサルをやっていたら、声が嗄（か）れるのが早くて。最初の２～３曲は大丈夫だったんですけど、そこからはまったく歌わずにリハーサルをやっていました。

――やはり不安な部分も大きかったんですね

山中　本番直前に声出しを入念にしていたら「あ、これならやり切れるかも」と思いました。でも、ステージに上がる前と上がってからとでは、テンションも違うし緊張感もあるので、それで疲れる声の出し方をしてしまったんです。だからもう２～３曲目あたりですでにガラガラした感じが出てきちゃったんです。それで「まずいな…」と焦っていた感じではありました。

――本当に予測が付かなかったというか、かなり微妙な感じで起きてしまったようですね。あきらさんはリハーサル時に横で見られた印象としてどう感じられたのでしょうか

あきらかにあきら（以下、あきら）　（山中）拓也がリハーサルで歌わなくなるというのは昔もよくあったけど、最近は減ってきたし、リハーサルで歌わなくなっても「（喉を）心配してるんやな」とは思っていました。でも、本当にあんなことになるとは思わなかったですね。直前まで休んで、声出しをして臨めれば持つかなと思ったんですけど…１～２曲聴いて「ちょっとおかしいな」とは思いはじめていましたね。で、大丈夫かと思いながらやっていたらうずくまった…。

――見ているこちらの方もハラハラしましたね。でも残された３人がトークでしっかりつなぎましたね

あきら　良かったか悪かったかはわからないですけどね（笑）経験にはなったかな、と。

――あの間は、皆さんはどんな気持ちでしたか

あきら　もう、テンパりまくってたよね？

中西雅哉（以下、中西）　あきらがテンパりまくっていたというのはわかりました。でもシゲ（鈴木）が意外に冷静で。普段はステージではマイクもないし、全然しゃべらない人なんだけど、ちゃんと仕切っていたし。

――「なにかあっても乗り切ろう」という揺るがない気持ちがあるのかと思いましたが、結構それでもビビった気持ちではあったのでしょうか

鈴木重信（以下、鈴木）　そうですね、拓也がいつ帰って来るかもわからないし、このまま下がっちゃうというパターンもあっただろうし。変なことも言えない、そんな状況で「とりあえず時間を稼いで」「あと、これとこれは言って」とか言われながら。メチャメチャ厳しかったですね。話がどんどんそれていくのも怖かったし（笑）

――中西さんは後方から見てどのように感じていましたか

中西　もう頭は「ステージの袖の方はどうなってんやろうな」という意識の方が強かったですね。でも、まあそこは任せられるスタッフがいたので、指示が来るまではとりあえずつなごう、と。お客さんも結構序盤だったので、楽しんでいるテンションの人と、拓也が掃（は）けて心配している人とでカオス状態でしたし。でも、そこはいつものTHE ORAL CIGARETTESっぽい感じで通して、変に心配させない方がいいかなといつも通りしゃべっていました。

――確かにお客さんの反応というのも印象的でしたね。ライブは中断したのに、誰も帰ろうとする印象もなかった。すごくみんな待っていたんだという感じがしました。一度山中さんが掃けられた際、ドクターストップは掛からなかったのでしょうか

山中　そうですね。そのとき僕も気が動転して「多分、もういつものライブみたいにうまくは歌えないだろう」という思いは頭の中にあって、袖に戻ったときには申し訳ないという気持ちと、自分に対する情けない気持ちというか…自分に腹が立って、すごく複雑な気持ちになっていたんです。でも10分、15分とメンバーがつないでくれていたし、お客さんもみんな待っていてくれたから「もうやるしかない」と思ったんです。まともには歌えないけど、今は自分がステージに戻る場所を空けてくれているんだから、自分がそこに戻らないと始まらない、メンバーにも迷惑を掛けているし。だからなんとかして、という思いでした。