皆で歌った「multiverse」

松本大(撮影・浜野カズシ)

松本大(撮影・浜野カズシ)

 腰を据えて向き合うようなナンバーが続いた後半戦の第一幕とは対照的に、第二幕ではリズミカルなナンバーが続いた。メンバー紹介を兼ねたソロパートで幕開けを告げると、ソロの余韻を残したまま「王様のひとりの芝居」を披露。明かりが落とされ、ギターの音色をバックに松本が歌い出し、キメを入れた後にスピードを増していく。

 バスドラが胸をゆさぶった「portrait」では、松本も「渋谷!」と煽った。ノリノリのナンバーが地面を揺らす。フロントの3人が上半身を前後に揺らす。手拍子が沸き起こる。勢いをそのままに「ランデヴー」。いよいよ佳境を迎え、「行けますか渋谷!」と声を荒げる。サビ部の「本当の声♪」では、ファンだけの歌声が響いた。それはこの曲はすでにファンの手の中にあることを証明しているようでもあった。

 メロディをバックに中原が「ここいらで皆で歌って頂けますか。みんなで歌おう。絶対に楽しいから」。松本も「でっかい声を聴かせて」と述べて「multiverse」を披露。全ての物語のエンドロールのような優しいメロディは、爽快さを生んでいた。

 この曲については松本はかつてのインタビューで「自分の選んだ道はこれで正しかった、という事を皆で言いたくて。皆で歌える曲にしようと思った。メロディの“ウオーウオー♪”には“今の自分が正しいっていう事を肯定しようぜ”という思いが込められている。ライブ会場でこのフレーズを皆で歌いたい」と語っていた。

 この意図に応えるようにファンは大きな声で歌っていた。その姿は「彼らの音楽を選択したのは間違いではなかった」と叫んでいるようでもあった。そして、メンバーそれぞれもこのフレーズを歌った。松本はこの姿に「マジで楽しいわ」と笑みを浮かべた。

先導するのではなく共に歩く

大屋真太郎(撮影・浜野カズシ)

大屋真太郎(撮影・浜野カズシ)

 続けて、勢いを加速させるように、早いリズムと激しいサウンドが行き交う「ワンダーランド」を送った。一歩踏み出すために作られた曲だ。大屋のギターソロも輝いた。手拍子が沸き起こった。歌い終え、暗闇のなかで松本の「楽しいな」という声が響く。

 一方、ファンからは「あと1曲だ」、「嫌だ」、「まだいける」という声が届けられた。こうした要求に松本は「18曲やってんだぜ。現状でリリースしている曲はほとんど全てやっている」と言いながらもどこか満足気。更にこう話を続けた。

 「憂鬱は溶けましたか。バンドを始めて9年。真ちゃん(大屋真太郎)が帰ってきた。これまで辛かったこともあったけど、この34公演を終えて思えたのは、過去を背負い過ぎずに新しい僕らになろうということ。皆さんからの手紙を読んで、半端な気持ちではライブに臨めないなとも思った。本当にどうもありがとう」

 「僕らは皆に“ついて来い”とは言えない。悲しいと思うかもしれない。一緒に歩いてあげることしかできない。僕らはライブをやることで皆から色んなことを教わる。そして、聴いてもらえているから曲も書ける。僕らと同じ分だけ聴いてもらえたという喜びがあるから続けてこられた。それに気が付いた。僕も助けられているから皆に。僕らの曲を聴いてもらっているうちは、僕らの手を掴んでくれているうちは手を絶対に離さないと決めました」

 「このバンド名を付けた2011年や12年頃はお客さんが全然いなくて。叶えたい目標があってこのバンド名を付けたんだけど、この4人がLAMP IN TERRENではなく、皆と含めてLAMP IN TERREN。全員でLAMP IN TERREN。一人ひとりは微かな光だけど、でも集まったら凄い光を放っている。このバンド名を付けた目的はこのツアーで叶っています」

 「本当にありがとう」

 「楽しかったり、ワイワイするだけが音楽ではない。悲しいことや苦しいことを洗い流されていく感じも必要だと思う。歌でも綺麗な気持ちになれるじゃん。死ぬまで歌っていきたい。そして、聴いていてください。歌うから、鳴らすから」

 そうして披露したのは「メイ」。

4つのランプ

ファンと共鳴した(撮影・浜野カズシ)

ファンと共鳴した(撮影・浜野カズシ)

 前記のアルバムでは、最後に完成した楽曲ながらも1曲目に収録されている。「もう1周してもう1度聴いて欲しい」という思いが込められている。そしてこの曲はこの日、大屋というもう一つの光が加わった新たなLAMP IN TERRENのスタートを告げるかのように奏でられた。自信に満ち溢れた4人の表情からは煌々とした光が灯っていた。

 本編を終えるとすぐさま、大きな手拍子によるアンコールが起きた。再び登場した松本も「早いよ」とツッコミを入れるほどだった。アンコールでは「Grieveman」と「メトロポリス」が披露された。

 最後まで「終わりたくね」と終演を惜しんでいた松本、そして中原、川口、大屋の背中には確かな自信があった。「僕らの音楽を押し売りはしたくない、それぞれの解釈で楽しんでほしい」とインタビューで語っていたLAMP IN TERRENの想いはこのライブに全て集約されていた。

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