“あるべき姿”理想を追求したアルバム
――武道館公演を前にアルバムが完成しました。タイトルはずばりバンド名です。収録されている12曲はそれぞれメンバーが原案を持ち合ったということですが、発案者のペギさんに尋ねます。その経緯は
ペギ 俺たちはバンドなんで、4人それぞれが曲を作れたら良いじゃないですか。でも、メジャーで曲を作ってリリースするペースを考えると、金廣さんが作って進めていく方が円滑に進むこともありますし、なかなか4人で作っていくという時間が無かったことも事実。時間があれば「メンバーみんなで曲を作っていく」というのがバンドのあるべき姿ではないかと思った矢先に、ちょっと時間が取れそうな流れがあったので、もともとあるべき姿に再トライしたというイメージですね。
――たなしんさん、渡邊さん、ペギさんが原案を持ち合った曲について聞きます。まずは、ペギさん。「オールグリーン」に込めた思いを
ペギ 今回のアルバムでは曲作りのために合宿したんです。その合宿に入る前に、ワンフレーズとテーマを考えてくるという宿題がありまして、俺はドラムを担当しているんですけど、ギターは弾けないので、ドラムのみで1曲まるまるを。イントロ、Aメロ、サビ全てドラムだけのものと、テーマをそれぞれ持っていきました。
――ドラムだけ、というのもすごいですね
ペギ 聴かせる時にドラムだけじゃあ申し訳ないなとは思いましたけど(笑)。ギターの感じとかは口で伝えたりして。メロディは金廣さんが後でつけました。
――持ち合った原案から曲として完成させるまでの制作工程を教えてください
金廣真悟 イメージはアレンジの原案ですかね。ペギの場合を例として、ドラムパターンを持ってきて、そこからバンドサウンドを作って、その後にメロディを乗っけるという事を今回はやりました。
渡邊幸一 4曲とも作詞・作曲は金廣ですね。曲のテーマやアレンジを、各自アイディアとして持ってきて、それをスタジオで4人で構築してその上にメロディを乗せてもらう形でした。
――「オールグリーン」のテーマは
ペギ 飛行機の離陸ですね。
――なぜ飛行機の離陸をテーマに
ペギ テーマは後で付けたんですけど、自分がやりたいことと今このバンドでできることを考えて。曲の頭にラウドな部分があるんですけど、そういうのを作っていく上でテーマを考えていたら「飛行機の離陸」がしっくりきて。そこからドラムパターンができ上がっていきました。
――自分の心境にそのテーマを重ねているという訳ではない
ペギ 「こういうのをやってみたい」というのがあったので、その時の心境も入っているかもしれませんね。
渡邊幸一 ペギの原案を聴いてはじめは「どうしよう」と思いました(笑)。「ラウドな感じか。どうしようかな」と。でも、スタジオで4人で作っていくうちに、最初は見えなかった部分が見えてきたり、「飛行機の離陸」というテーマを自分でイメージして取り組めたのですごい面白かったですね。
――サウンドに対して歌詞はすんなりと出てきた
金廣真悟 そうですね。飛行機がテーマで、ラウドな感じで、サビはポップな感じというものだったのですんなりと。歌詞を書くことも踏まえてテーマを持ってきて欲しいなと思っていたので、そのテーマに沿って書きました。ある程度、それを想定してアレンジもしていたので、イメージは割とはっきりしていたんです。イントロで滑走していて、Aメロに入ったら空を飛んでる、みたいなことを言っていたので。「じゃあもう空飛んじゃおう」と。
――ペギさんは他にも「雨ニモ風ニモマケズ」という楽曲の原案を考えています
ペギ 原案は1人1曲はもってくるというノルマがあって、先ほどの楽曲とは別のネタを持ってきていて。それがこの楽曲なんです。原案が、金廣さんがやってみたいリズムと合うところがあったのでそれをもとにしました。
――テーマは
ペギ 「Rage Against The Machineの子供達がもしバンドを組んだら」というのがテーマです。
――かなり面白い切り口ですね
ペギ 凄い有名な音楽のレジェンドを親に持つ子供達がもしバンドをやるとしたら、どんな音楽をやるんだろうなと考えていたんです。ポップさだったり、ミクスチュア要素の片鱗も見えるような感じで作りました。これもドラムだけです。
――これを提示されてどうでしたか
たなしん イメージは凄いつきやすかったです。ペギのテーマに沿っているかは分からないけど(笑)。
金廣真悟 これはテーマを無視しました(笑)。でも、自分のなかで作るというリズムではあったので、推し曲というか。「リード曲になり得るポップさを持ち合わせた曲にしたいな」と思っていて、僕なりに夏のイメージで考えていたので、明るいコード進行と覚えやすいメロディを付けることを早い段階で考えていました。それに乗っかった感じですかね。間奏だけは皆で遊びながら「これイイね」というのを取り入れていって。
渡邊幸一 これはセッションっぽかったですよね。
――「低気圧の夜」は渡邊さんが原案を考えられた?
渡邊幸一 最初のギターフレーズを考えて、皆で構築したという感じです。イメージはシンプルに「ループしているような曲」、そして、「ちょっとせつないような曲」。そのイメージを皆に伝えて取り組みました。ギターの切ない感じのフレーズが思い浮かんだんで、「失恋」というテーマで。深い意味はあまり無かったんですけど。イメージはつきやすいかなと思って。
金廣真悟 彼が持ってきたのがイントロだけだったので、逆にイメージはつきやすくて。それで「ああ、じゃあこういうコード進行でやっていこうか」というのを何パターンか。より切なくするコード進行を選んだりとか。ある程度そのままできました。
たなしん イントロが凄く印象的で、そこがテーマだと思ったくらいだったので、イントロのメロディに合うようなベースラインを作りました。激しい曲ではなかったので、切ない感じの雰囲気が出て、更に疾走感も出したかったので、そういう風にしました。
ペギ 幸一さんはミスチルが好きなのでそういう風にしてやろうと(笑)。俺はロックとかが好きなんでイントロからシンバルが「ガーン!」、サビで「ドーン!」みたいのが好きなんですけど、あえて「幸一さんはこういうのが好きなんだろな」というのを思って、サビはハイハットを閉めて叩きました。本来の俺はそうはやらないんですけどね。サビはやっぱりハットを開いてガシャガシャやるんですけど、まあ「幸一さんが持ってきたし、どうせこういうの好きなんだろ」と(笑)。
渡邊幸一 もうちょっと言い方があるだろ!(笑)
ペギ (ハイハットは)最初は閉じてチキチキやっているんですけど、2回目からは耐えきれずに開いちゃってますね。
――そこも聴きどころですね(笑)。「ビッグバン」はたなしんさんが原案です
たなしん グッとくるものをテーマにできたらなと思っていたんです。4月に2週間くらいお休みを頂いて、人生初の外国旅行に行ったんです。その時に「やっぱり日本は素晴らしい国だな」と改めて思ったんです。そこで日本っぽさ、「和」をテーマにしようと。太鼓や三味線とかの音とかも使いたいなと思ってみたり、そういう曲も作りたいな、ということを皆に伝えてまして。合宿初日に、セッションみたいな感じでやったんですけど、なかなか形にならなかった。それで、その日に録音したものを翌日聴いてみて良かったフレーズをPCに取り込んで、「もうちょいこうしていこう」みたいに進めていきました。
バンド感をパッケージ
――今回の制作スタイルを取り入れてみた成果は
ペギ 良かったですね。バンドにとっても刺激になったと思います。セッションを通じて拡げていくという作業もやりたかったので。
金廣真悟 時間さえあれば今後もやりますね。その方が効率が良い部分ありますし。今回のアルバムで良かったのは、バンド感がそのままパッケージングされたというのがあります。作品として「グッドモーニングアメリカ」という題名のこのアルバムでバンド感が出たのが意義として一番デカいし、それは合宿のおかげかな、と思いますね。
――武道館に向けて良い作品ができた?
バンド一同 そうですね。
――ペギさんはこのアルバムを構想したときに「Foo Fightersの様なアルバムを作りたい」と言っていたそうですね。そこの意図は?
ペギ 常に良い音にしたいということですね。最近聴いたなかだったらFoo Fightersのアルバムが圧倒的に音が良くて、その前に出たものもその当時は凄い音が良くて。「Foo Fightersの音になりたい」というのが一番わかりやすくて、伝えやすいと思ったので。もともとFoo Fightersが凄い好きだっていうのもあるんですけど。