[写真]人間椅子がツアー終演(4)

演奏だけでなくトークでもファンを魅了した人間椅子(写真=KASSAI [3PO DESIGN WORKSHOP])

 [ライブレポート]今年デビュー25周年を迎えたロックバンドの人間椅子が8月1日、青森で全国ツアー『屋根裏の散歩者~「現世は夢」ライブDVD発売記念ツアー~』のファイナルを行った。このツアーは7月1日に発売されたライブDVD&Blu-ray『苦しみも喜びも夢なればこそ「現世は夢~バンド生活二十五年~」渋谷公会堂公演』を記念して全国7カ所7公演を行ってきたもの。新旧織り交ぜたセットリストで訪れたファンを熱気の渦に巻き込んだ。ミュージックヴォイスではこのうち、7月24日におこなわれた東京・渋谷TSUTAYA O-EASTでの公演の模様を以下にレポートする。  【取材・村上順一】

アクシデントに動じず

[写真]人間椅子がツアー終演(5)

写真=KASSAI [3PO DESIGN WORKSHOP]

 梅雨明けも宣言され、最近は天候も穏やかだったがこの日の空は不安定。何でも人間椅子のライブの日は7割が雨だと言う噂がある。午後6時半過ぎ、既に会場のO-EASTは開演を待ちわびるファンで埋め尽くされていた。定刻の午後7時を少し回った所で、暗転。そして、野太い歓声が上がると同時に、SEの「此岸御詠歌」が流れ天井のミラーボールが赤く光る。そのSEをBGMにメンバーがステージに現れた。

 SEが鳴り止むと、和嶋慎治のトレードマーク、ギブソンSGによる重厚なリフがライブの幕開けを告げた。オープニングは「阿呆陀羅経」。スリーピースとは思えない音圧がO-EASTを飲み込んで行く。オーディエンスも待ってましたと言わんばかりに拳を振り上げる。大歓声に続いて「地獄への招待状」を演奏。ドラムの重戦車のようなツーバスがフロアに響き渡る。ここで、ベースの鈴木研一にアクシデントが。アンプから音が出ていない。しかし、流石ここはベテラン、焦る様子もなくベースを弾かずハンドマイクで歌いオーディエンスを煽る。寧ろこのアクシデントがより一層ファンのテンションを高めていた。

トークでも人間椅子らしさ

[写真]人間椅子がツアー終演(2)

写真=KASSAI [3PO DESIGN WORKSHOP]

 ここでMC。「今日は昨年リリースされたベスト盤のライブのDVD化の発売を記念したライブで、コピーのコピーみたいなぼんやりしたテーマのライブですけど楽しんで行って下さい」と鈴木が今回のツアーを説明。客席からは笑いと歓声が起こる。そして、3曲目は昨年リリースされたベスト盤からの新曲「宇宙からの色」、続いて「ねぷた祭までもう少し、今日は前夜祭だ~」と鈴木が叫ぶと始まったのは「ねぷたのもんどりこ」。鈴木の軽快なステップが印象に残る。オーディエンスもお祭りのごとく盛り上がった。

 和嶋はここでダブルネックギターのSGを抱えて登場。MCで26年目にして和嶋が雨男だと判明したことを鈴木が語り笑いを誘う。そして、「古めの曲をやります」と「夜叉ケ池」を披露。静寂の中、美しい12弦ギターのアルペジオがフロアに鳴り響く。澄んだ音色にファンも耳を傾けている。続けて初期のナンバーである「黄金の夜明け」。間奏では和嶋がスライドバーとディレイを使用し幻想的な空間を演出。「死ぬまで(バンドを)やっていきますので最後までついてきて下さいね」と和嶋がMCで語ると昨年リリースした「なまはげ」を披露。リズムがめまぐるしく変わる難曲だがこれぞ人間椅子といえるサウンドだ。

演奏技術で魅了

[写真]人間椅子がツアー終演(1)

写真=KASSAI [3PO DESIGN WORKSHOP]

 そして、インディーズ時代にリリースされたアルバムから「陰獣」、更に01年にリリースされた「見知らぬ世界」と立て続けに演奏。「地獄の声を聞かせてくれ」と鈴木が叫ぶと始まったのは「冥土喫茶」。ファンも決めをバッチリ合わせて盛り上がる。デビューから割と最近の楽曲までを織り交ぜたセッションで、バンドの過去と現在を堪能することができた。

 ここで、ドラムのナカジマノブが「俺が歌うコーナーがきたぜ、全身全霊で歌うぜ」と叫ぶと、ナカジマがリードボーカルを取る楽曲「赤と黒」を披露。東京でのライブでは久しぶりに演奏された。ファンも「アニキ~」と歓声をあげる。ギターソロで和嶋は、ジミ・ヘンドリクスばりの背面ギターで魅せた。こういうパフォーマンスは往年のロックファンにはたまらない。

夢はまだまだ続く

 ブルージーなセッションから「あやかしの鼓」、「天国に結ぶ恋」と立て続けにデビューアルバムからの選曲。「あやかしの鼓」ではドラムに合わせてオーディエンスが「オイ!」と飛び跳ね会場が揺れる。怒濤のハイテンションナンバー連発で本編最後は「針の山」。ソリッドでスピーディなリフが始まると大歓声が起こった。エンディングでは歯でギターを弾くパフォーマンスで、更にオーディエンスを沸かせ本編を終了した。

 アンコールの掛け声と手拍子に、衣装を着替えステージに戻ってきたメンバー。和嶋がメタルバンド、オジー・オズボーンが主催するフェス「OZZFEST JAPAN 2015」に出演する喜びを語る。「夢はまだまだ続きますよ。人間椅子のドリームトレインに乗って皆さん行きましょう」と「新調きゅらきゅきゅ節」演奏。イントロの演奏に納得いかず仕切り直す場面も。続いて人間椅子の鉄板曲「ダイナマイト」では、ファンも腕を振り上げ最高潮の盛り上がりを魅せアンコールを終了した。

アニキコール

[写真]人間椅子がツアー終演(3)

写真=KASSAI [3PO DESIGN WORKSHOP]

 鳴り止まないアンコールからアニキコールへ。颯爽とステージにナカジマが戻ってきた。続いて和嶋、鈴木も戻ってきた。鈴木は学ランに衣装をチェンジ。和嶋が「OZZFESTで一皮も二皮も剥けた人間椅子をお見せしますので宜しくお願いします」と語り最後に「どっとはらい」を演奏。約2時間のワンマンライブの幕を閉じた。

 キャリアが魅せたすばらしい一夜であった。生き様をぶつけているようなライブは、嘘偽りのないリアルな音がそこにあった。そして、12月にはレコーディングに入り、来年の早いうちにニューアルバムを発表したいと語る人間椅子。四半世紀を越えた彼らが次に聴かせてくれるサウンドはどのような物になるのか、期待がふくらむ。

セットリスト

01.阿呆陀羅経
02.地獄への招待状
03.宇宙からの色
04.ねぷたのもんどりこ
05.夜叉ケ池
06.黄金の夜明け
07.なまはげ
08.陰獣
09.見知らぬ世界
10.冥土喫茶
11.相剋の家
12.赤と黒
13.あやかしの鼓
14.天国に結ぶ恋
15.針の山

-Encore-

EN1.新調きゅらきゅきゅ節
EN2.ダイナマイト

-Encore2-

EN1.どっとはらい

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