MUCCのボーカル・逹瑯が10日、ニューシングル「VILLAINS」をリリース。今年1月にミニアルバム『MONOCHROME』を発表したばかりだが、本作のリリースに続いて今年2度目となる東名阪ツアー「逹瑯 LIVE HOUSE TOUR [VILLAINS]」の開催も発表。MUCC、ソロと精力的な活動をみせる逹瑯。ハイペースで作品発表を積み重ねるソロワークスとしての重要なスタンス、現在の心境や本作の制作背景に迫るなか語られた、“MUCCでやったことのない制作の次の段階”とは――。

「VILLAINS」制作に含まれた課題

逹瑯『VILLAINS』【TYPE-A】ジャケ写

――先日のお誕生日おめでとうございます。当日開催の「MUCCメンバー完全プロデュース生誕公演 2025 逹瑯四十六大祭『宿儺』」の感触は?

 楽しかったですけど、大変で疲れたという方が勝っていると思います(笑)。ソロとMUCCの2マンで、やることが多かったんですよ。2ステージということもあり、お客さんも楽しそうにしてくれていましたね。ライブの空気感を楽しんで、あまり細かいことは考えず目の前のことに向き合っていました。

――ソロライブにおいての変化などを感じますか?

 MUCCとソロの2ステージやって、それぞれの違いが明確にわかったんです。音の作り方や楽曲の練り方など、もっとバンド感を出していけるようにと凄く感じました。そのためにどういった手法や音をとればいいか試行錯誤していきたいなと。でも色々と時間が足りないからどうしようかなとも……共同制作者の足立(房文)に任せちゃえばいいかなあみたいな(笑)。色々と考えています。

――足立さんにお任せするスタイルというのは……。

 いや冗談ですよ(笑)。色々と相談しながらやっていけたらと思っています。

――そうですか(笑)。そんな足立さんとの共同作曲「VILLAINS」制作の着想は?

 ライブのセットリストの1曲目をどうするかが大きな課題なんです。1曲目でライブの空気感、世界観がガラッと変わるので「ライブ1曲目でやれるようなタイプの曲」をどんどん増やしていきたいと思った上での、ひとつのバリエーションの曲ですかね。

“VILLAIN=悪役”の魅力とは?

――本作、奥行きのある重厚なロックサウンドにピアノやシンセサイザーと、聴きごたえがあります。

 一気にアッパーに持っていくというより、世界観を作るようなタイプの1曲目になったらいいかなと思いました。楽曲からイメージを膨らませて、どういうテーマをどう合わせるかなと考えながら書いていました。楽曲に引っ張られてイメージを広げていったのが大きいかな!

――楽曲サウンドからだったのですね!「VILLAINS」のフレーズはどの時点で出てきましたか?

 最初に楽曲のオケを聴いた時の空気感、色、その中から、ダークヒーローじゃないけど正義と悪に割り切れないような色気を感じるなと。自分の正義を持っているけど、よそから見たら悪役になっているようなキャラクターなどの物語が好きだったりするので、そのへんにハマりそうな空気感を感じて広げていきました。そこに今の時代感、自分が思っていることなどを色々と、という感じですね。

 必要悪じゃないですけど、何が良くて何が悪いのかは立場によって感じ方が違うと思うんです。みんな誰かの正義になるし、誰かの悪になるけど、そこで躊躇していたら何も進まないよなみたいな空気感でいけたらいいなと。そういうイメージがざっくりとあったんです。

――歌詞の<NO MAKE NO FUTURE>のフレーズが印象的ですね。

 歌詞がしっかりハマる前は<ラララ>で仮歌を入れるんですけど、ここの部分はそれだとちょっとイメージが湧かないから、ずっと頭の中で思いついている歌詞を仮ではめてみたらそれが強くて、それ以外つかなくなりましたね。それがそのまま生きている感じです。

――正義や悪役それぞれの立場でも、信念を鼓舞されるような感覚も受けました。

 なんとなくの動きではなく、行動に自分なりの大義があればそうなり得るんだろうなという。

――<夢を見てたんだ 叶わぬ夢を>という最後の一節がとても余韻を残していると感じました。

 「自分の正義が誰かの悪になり得る」という割り切れない感じ、そういうひとつのストーリーの中の登場人物みたいな感じでみてもらえたらなと。曲自体、色んなとり方ができると思うので、わかりやすくキャッチーに、イメージとしてフワッとしたものを可視化したくて。それはビジュアル、アーティスト写真の感じもけっこう遊びましたね。

――アー写では和風の衣装を着ていてモノクロですね。実際はカラフルな柄と想像しました。

 はい、けっこうそうですね。

――しかし、アー写自体はモノクロと。この点はどうしてでしょうか?

 そこは好みで撮ったんですけど、最近こういう写真撮ってなかったし、このテイストの衣装だったらこういうのがいいなと思いまして。

――VILLAINS、悪役は、ジャケの色彩のような黒が似合いますよね。

 僕ら世代が触れてきたダークヒーロー、悪役ってカッコよくなければいけないので。悪い奴なんだけど、そいつの言ってることに共感できたり、惹かれるルックスにしたかったんです。ビジュアル系たる所以がガツッと出せたらいいなと。ルーツ的なものをと、久しぶりにこういう和風ゴシックテイストで撮ったかな! ソロなのでみんなのバランスをとることもなく、自分の好きな感じでできるので、エレクトロの要素が強い楽曲だからこそ、ギャップや逆の表現のルックスが面白いかなと思ったんです。

――コントラストがいいですよね! ところで、タイトルがVILLAINではなく複数形「VILLAINS」なのが気になります。

 個人の意見というより広く社会的に大きいイメージだから、複数形の「VILLAINS」の方がいいのかなというくらいの感じですね。もっと広く捉えてもいいのかなと。単数形のVILLAINだと、もっと狭まる感じがして。その感覚ですね。それは「エネミー」とは違うんですよね。エネミーと悪役は違うんです。

――それで複数形にしたのですね。さらに、<完全に呼吸を止めて夢を見てる 叶わぬ夢を>の部分は、“VILLAIN=悪役”の葛藤だったりするのでしょうか?

 うん……結局、悪役って負けちゃうんだよね(笑)。

――そういう役割ですよね(笑)

 そこの悲しさというか。だけど、信念は最後まで曲げない強さがあるのがVILLAINだと思うので。負けたところで信念は絶対に曲げず、その意思を継ぐ者が出てくるのがVILLAINじゃないですか?

――すると、VILLAINの魅力はそこでしょうか?

 そういう、連鎖していくイメージでしょうかね。

ライブの“フック”肝になる曲を

逹瑯『VILLAINS』【TYPE-B】ジャケ写

――楽曲制作はどのように進行しましたか?

 足立とかとも「1曲目になり得る曲が作りたいよね」と話して、曲の方向性のイメージをいくつか提案しました。一度土台のスケッチからデモを上げてもらってそこから始まり、その中から徐々にブラッシュアップして「この曲のこの部分をこっちに持ってきて作っていこうよ」というやりとりで作っていきました。

――2曲目「DRIVE!!!」はライブで披露されている楽曲ですが、この曲のタイトルに関してはどんな意味合いでしょうか?

 もう、みんなで楽しく出かけたいという、“DRIVE”と“ライブ”がかかっているというか。何も細かいことを考えずにと。楽しい時に楽しい楽曲を聴きたい時ってあるじゃないですか? そういう曲ってやってないなと思って。そこであってもいいなと思って作りましたね。

――「VILLAINS」と「DRIVE!!!」は、ほぼ対比と言っていい曲調かと。

 そうですね! たまたまそうなったんですけど(笑)。シングルだと1曲目と2曲目の繋がりはそんなに考えないので。全体の色や空気感をどうするかと考えるのはミニアルバムからかな……。

――前作ミニアルバム『MONOCHROME』から本作のリリースまで早かったですよね?

 そうですかね? まあ、ライブをやるので何かしらアイテムはあったほうがいいなと思って作り出すので。せっかくライブをやるんだったら、前回と違う流れを作りたいので、そのライブツアーでどういうフック、肝になる曲をライブに向けて何かしら作りたいと。

――今後のライブのセットリストに、かなり変化が生じるのでしょうか?

 増えたのは1曲だけなので、そこまでじゃないかなあ……。前回は『COLORS』と『MONOCHROME』と、2つの作品の関係性があるのが出たタイミングだったので、やはり「それらの作品の曲をメインに」という感じだったから。ここからさらに、もうちょっと昔の曲もちょろっとやれるかなというバリエーションは、少しずつ増やせていけたらなという感じはしています。

“MUCCでやったことのない制作”の次の段階とは?

――そう振り返るとソロワークスの楽曲とても多いですよね。ライブの選曲、大変なのでは?

 うん。イメージは「こういうのがいいな」というのが出てきて、それのヒントを足立に投げて、「それってこういうことですか?」という解釈が返ってくるんです。「ちょっと違うけどこれもいいねえ!」とか「そうそう、こういうこと!」というのを「じゃあもっとこうしよう、ああしよう」と、広げながら作っていくのが今のソロのやり方になっています。だからMUCCの曲作りとはまたちょっと違っていて。その感じが楽しくやれているかな!

――確かに、前回のインタビューで「MUCCでやったことのない制作――」と仰っていました。

 最近は「やったことのないことをやっていこう」という感じではなくて。結局やりたいことをやろうと。「やらなかったこと」だけど、まあ別にいいんじゃねえかなと思ってやったりとか。そういう感じかなあ……もうちょっとライトな感じになっていますね。「一回やってみるか」みたいな。

――ライトに、というのは洗練された判断基準のような?

 柔軟になっているというか。「こういうの、ああいうのをやりたい」というアイディアはあるけど、それを全部やってもしっちゃかめっちゃかになるから。新しいことばかりやっているのでもなく、現状のクオリティを上げるにはどうしたらと――考えることがいっぱいで面倒くさいですね(笑)。

――そういった思いもありつつ、MUCCとソロワークスの過密なスケジュールを見て「いつ休んでいるんだろう?」と、率直に思います(笑)。

 けっこう休んでますよ! ストレスを溜めないというか、抜き方が上手くできているので、日常のちょっとした時間の中でも楽しみを作れるし、見つけられるというか。仕事が早く終わったら、「こういう時だからできる最大限の楽しみ方」とか、2時間しかないならその時間内で、「疲れたらゆっくりするし元気だったら何ができるかな」という風に考えるのがけっこう好きなんです。隙間時間の使い方が得意なので、新しく何かを見つけようとするのではなく、自然とポンポンと。

――限られた時間を有効活用しているのですね。最近、刺さったコンテンツ等はありますか?

 毎シーズン、アニメは3、4つ観ているんです。新しいのも好きだけど、基本的に知っていることをずっと繰り返しやることが好きなんですよね。今の感覚でやりたいことなどの対象を、過去や日常で既に知っているものをチョイスすることが多いです。そこに、たまに新しいものが一つ入るくらいですかね。

――知っていることをさらに深く吟味するスタイル、とも言えるでしょうか。

 はい。その中に新しく入ってくる一個が、次からは「知っているもの」に入るので。そうしたら、次からは「また、あれをやろうかな」という、「知っているものの引き出し」が増えていくと。知っているものと、新しいものの割合だと「9:1」くらいじゃないかな……新しいものばかりでも、一回知ってしまったらもう新鮮味がなくなって「どんどん新しいものが欲しい、刺激が欲しい」という人もいるじゃないですか? そっちではないんですよね。

――逹瑯さんの「9:1」の割合で言うところの、吟味する「9」の方が濃いと制作の深みが出てくると思うんです。

 ああ、そうかもな……凄い好きなのは何回も観たりしますけど! 

――いま、パッと思われた凄い好きな作品って何です?

 『メンタリスト』という海外ドラマがすごく好きです。あちこちで言ってますけど(笑)。4周くらい観てるんですよね。面白いんですよ。

逹瑯・クリエイティブの流儀

逹瑯『VILLAINS』配信ジャケ写

――今年2度目の東名阪ツアー、意気込みはいかがでしょうか。

 しっかりやりたいです。今のところソロに関して、勢いを無理やり作らなきゃみたいな感じが多くなっちゃっているので。もっと自然の流れに委ねたいなと、それをどう作っていけるかなと。それを考えちゃっていること自体があまり良くないんですけどね。流れに委ねてどうなっていくんだろうと、楽しみながらライブを作っていきたいなと思います。

 だけど本数が少ないので、今後しっかりツアーができるような環境とスケジュールをとれるようにと願いながら、そういうタイミングがあったら逃さずにやっていきたいと思います。今できる範囲で次に繋がるものをブラッシュアップしていけたらなという感じですかね。

――ソロワークスは「委ねることや柔軟性を持つこと」に、ある種の醍醐味があるのでしょうか?

 そうですね。自分で考えてやっていかないと勝手に進まないので。MUCCは脳味噌がいっぱいあるから勝手に進んでいくんですけど。そのぶん、考えたら考えたぶん自分の純度が高くなっていくんだろうとは思いつつも、そのポイントをどうやっていこうかなという感じになっているかな。

――その上で、今後の未来や構想が別にあるのでしょうか?

 まだわからないですね。普段、頭を使いたくないので(笑)。ライブや制作が始まると、脳が刺激されて、そこでイメージが膨らんできたりするから、そのタイミングを逃さないようにして、何か次に行くヒントが出てくるといいなという感じです。たぶん俺はオン・オフがはっきりし過ぎちゃってるんですよね。スイッチが入らない時は全然入らないので。

――そういう時は一度、少し休んだりと?

 うん。オンに入っている時の脳のカロリー消費が半端ではないというか。だから、普段あまり考えたくないんですよ。ずっとオンでいられる人って本当に凄いと思う!

――例えば、逹瑯さんの周囲でずっとオンでいられる方は?

 ウチのミヤさんなんてそうじゃないですかね。HYDEさんもそうだと思うなあ……色々と話を聞いていると清春さんもそんな感じするし。

――そこから刺激を受けるというより、逹瑯さんは「オン・オフ」を切り替える強みのスタンス?

 名前を挙げた方々って意識的にそうしてる人ではないと思うんですよ。クリエイティブなことに関して色々と努力していることはたくさんあると思うけど、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すくらい自然にやっていると思うんです。俺も意識的にそういう感じに、クリエイティブなことに関してはそこまで自然にはできないので。なので、それに刺激を受けて俺もそうなるぞという時点で、たぶんそうはならないというか。俺は俺のやり方で一番自分に合っている方法でやっていった方がいいだろうなという気がする。

――長いキャリアの中、最初からそうなのでしょうか?

 わかんないけど、無理してやるのが本当に楽しくなくなっちゃうので、やりたくなくなっちゃって「もうや〜めた」ってなっちゃうじゃないですか? なので、クオリティをちゃんと担保できる自分のペースというのは凄く大事だなと思う! それは、長くやってきたからそう思います。自分に何が合っているのかというのは、やり始めた頃はわからないですから。

――ご自身に合うスタンスと。さて、抽象的ですが、「もしも逹瑯さんが、ライブ客席や制作現場など、第三者目線でご自身を見られたら」何と声をかけますか?

 え……「頑張って!」しかないんじゃないんですか(笑)。「気持ち、わかるよ? 頑張ってね!」って。「やるしかないもんね! 頑張れ!」しかないかな。ははは!

(おわり)

取材・文=平吉賢治
撮影=冨田味我

逹瑯solo works SNSスマートリンク
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■2025年9月10日発売
New Single『VILLAINS』

【TYPE-A】

価格:1,500円(税込)

[収録楽曲]

01. VILLAINS
02. DRIVE!!!
03. 青の刹那 -2025.01.19 下北沢SHANGRI-LA-
04. 黄昏のエレジー -2025.01.19 下北沢SHANGRI-LA-

全4曲収録

【TYPE-B】

価格:1,500円(税込)

[収録楽曲]

01. VILLAINS
02. DRIVE!!!
03. 焔 -2025.01.19 下北沢SHANGRI-LA-
04. 藍青症 -2025.01.19 下北沢SHANGRI-LA-

全4曲収録

all lyrics:逹瑯
all music:逹瑯/足立房文

■『VILLAINS』リリース記念インストアイベント

▼大阪
9月12日(金)18:00~
Like an Edison大阪店

▼東京
9月20日(土)13:00~
エンタバアキバ by SHINSEIDO

▼愛知
9月22日(月)18:00~
fiveStars

詳細はこちら
https://www.tatsuro-soloworks.jp/schedule/10

■<逹瑯 LIVE HOUSE TOUR[VILLAINS] >

9月15日(祝月)BANGBOO(大阪・梅田)
開場16:15 / 開演17:00
(問)BANGBOO 06-6867-7828

9月23日(祝火)RAD HALL(名古屋・大須)
開場16:15 / 開演17:00
(問)RAD HALL 052-253-5936

9月27日(土)渋谷 WWW X(東京・渋谷)
開場16:15 / 開演17:00

9月28日(日)渋谷 WWW X(東京・渋谷)
開場16:15 / 開演17:00
(問)ディスクガレージ https://info.diskgarage.com/

▼サポートメンバー

G:YOUSAY
G:LiN(ユナイト)
B:リウ
Dr:KEN'ICHI
Vn:後藤泰観
Key:足立房文

▼一般チケット発売中
前売6,800円 (税込) / 当日 7,500円
スタンディング

イープラス
https://eplus.jp/sf/word/0000057078 

ローソンチケット(※東京公演のみ)
https://l-tike.com/search/?keyword=73572 
 
チケットぴあ(※東京公演のみ) 
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2502627 

※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止

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