スコットランド発・BELLE AND SEBASTIANの魅力とは
Belle and Sebastian - Nobody's Empire at Hostess Club Weekender 2015/2(出典・YouTube)
スコットランド、ギター・ポップの雄「BELLE AND SEBASTIAN」。今年1月14日にリリースした9枚目の最新アルバム「Girls In Peacetime Want To Dance」を掲げ、今年の『フジロックフェスティバル'15』WHITE STAGEでヘッドライナーを務める。
BELLE AND SEBASTIANは過去に開催したフジロックフェスにも大トリとして複数回出演、祖国UKの大規模フェス『グラストンベリー・フェスティバル』でも2002年、2004年と出演を果たし、つい最近の今年6月の同フェスでも演奏をするなど、1996年の結成から現在に至るまでベル・アンド・セバスチャンは勢い衰える事無くギター・ポップシーンを牽引し、精力的な活動を見せている。
BELLE AND SEBASTIANは、1996年にスチュアート・マードックを中心人物に、スコットランドのグラスゴーで結成され、これまでに数多くの名作アルバムを産み出してきたギター・ポップバンドだ。これまでの作品の世界的なセールスも伴い、数多くのファンを獲得。「グラスゴー」という地域が率先して発信するギター・ポップ、その音楽シーンの中でも得に際立っているグループ「BELLE AND SEBASTIAN」は、これまでに何度かのメンバーチェンジを経て、現在は以下の顔ぶれとなっている。
スチュアート・マードック(ヴォーカル、ギター、キーボード)
スティーヴィー・ジャクソン(ギター、ヴォーカル)
リチャード・コルバーン(ドラム)
クリス・ゲッズ(キーボード)
サラ・マーティン(ヴァイオリン、ヴォーカル、キーボード、ギター)
ミック・クック(トランペット、ベース、ギター)
ボビー・キルディア(ギター、ベース)
「Another Sunny Day 」BELLE AND SEBASTIAN
グラスゴー地域の音楽シーン
UKのインディーズシーン、ポストロックシーンから発生したこの「ギター・ポップ」という音楽。ポップで切なく心地よいオーガニックなアプローチのロックミュージック。現在では世界中で親しまれている音楽性だが、中でもスコットランドの「グラスゴー」という地域は、ギター・ポップシーンが非常に活発な特筆すべき地域として挙げられる。「グラスゴーバンドだよ」「グラスゴーサウンド的かな!」なんて表現で「ああ、そういう感じのバンドか!」なんて通じる場合もある程。
その地域性から派生した音楽を国内で例えるなら、1990年代初期に盛り上がりを見せた「渋谷系」というサウンド傾向の表現に通ずるところがある。渋谷系は「フリッパーズギター」や「カジヒデキ」などが当時代表的なアーティストとして挙げられ、当時のポップシーンをサラッとしっとりオシャレに、大いな賑わいを見せていた。また、先述のアーティストらもまた「グラスゴーサウンド」と通ずる音楽性が如実にみられ、その地域性を音楽に反映させるという文化発信は非常に興味深くもある。
地域が発信する音楽
各国の地域を織り交ぜた音楽種別は、海外では案外多様にあり「LAメタル」「デトロイト・テクノ」「ブリストルロック」「ニューヨーク・パンク」「シカゴ・ハウス」「デルタ・ブルース」「リバプール・サウンド」などなど、それはもう挙げればキリがない。国内でも「ナニワ・パンク」「歌舞伎町ダブ」「鳥取ドリルンベース」なんて一般的に呼ばれる音楽が派生したら面白いのではないだろうか。(もちろんそんなものは現状無いが)
グラスゴー地域が発信し、世界の音楽シーンを賑わせる「ギター・ポップ」。その名自体はかなり漠然としたもので、地域の特性やらのみではその音楽の具体性はなかなか見えてこないところがある。これがたとえば「琉球・ポップ」だったら日本人はその呼称の音楽の旋律を何となく脳内再生出来る。でもイギリスのグラスゴーのポップと言われてもなかなかピンと来ない。 BELLE AND SEBASTIANの奏でるグラスゴーサウンド「ギター・ポップ」とは一体どういった音楽だろうか。
ギター・ポップとは?
1980年代から派生し、90年代中頃にイギリス圏を中心に最も盛り上がりをみせた「ギター・ポップ」。それがどういったものかというと、サラッとしたロックというか何と言うか、そこまでギターが歪んでいない(ギャンギャン激しく鳴ってはいない)サウンドのロック、という共通点に着目されたのがその呼称の由来であろう。
アコースティックよりで、歌やギターのメロディーの旋律、楽曲構成に重点を置いたポップロックといった音楽で、思わず口ずさみたくなる様なとってもフレンドリーなサウンド。ギターのハーモニーや、軽快なタンバリンなどのパーカッションのほっこり楽しげ(時にちょっと切なく)なアプローチがとても特徴的だ。細かい点も挙げると、シンプルに聴こえるサウンドながら「メロディーの音数」が非常に多く、ワンフレーズを繰り返すアプローチが多く見られる音楽、テクノやパンクなどとはその点が対照的だ。
日常的にハッピーな空気感、聴いてスッと楽しくなれる音楽。ギター・ポップは「インディー・ロック」「パワーポップ」「ブリットポップ」なんて呼ばれ方とも兼ね合うだろう。
その代表的ないくつかアーティストを挙げると、洋楽ではやはり「ヴァセリンズ」「ザ・パステルズ」「Teenage Fanclub」など、そして「BELLE AND SEBASTIAN」が有名どころとして挙げられる事が多い。日本では「フリッパーズギター」や「スピッツ」「くるり」などのアーティストを挙げる事ができる。美しい旋律、洗練されたポップ・アンサンブルの展開楽曲の数々と共に、今もなお絶大な支持を誇る。「Weezer」や「Travis」など(こちらはがっつりギターが歪んでいる楽曲も多い)ロックよりなものから、アコースティックサウンド中心のほっこりしたフォークよりなものまで多岐に渡る非常に味わい深い音楽だ。
「Nobody's Empire」BELLE AND SEBASTIAN
ニューアルバム「Girls In Peacetime Want To Dance」BELLE AND SEBASTIANより
ベル・アンド・セバスチャン3度目のフジロックヘッドライナー
世界的に音楽シーンを賑わせる「ギター・ポップ」。その中でも「BELLE AND SEBASTIAN」はシーンの第一線で活躍している問答無用のギター・ポップ大御所。2004年のフジロックで初出場を果たし、2010年にも同フェスに出演。共にWHITE STAGEでのヘッドライナー出演というあたりに、国内での BELLE AND SEBASTIAN人気っぷりを窺える。今年のフジロックステージでの暑気の吹き飛ぶグラスゴーサウンドには期待大だ。 【文・平吉賢治】
BELLE AND SEBASTIAN オリジナルアルバム発表作品
1996年「Tigermilk」
1997年「If You're Feeling Sinister」
1998年「The Boy with the Arab Strap」
2000年「Fold Your Hands Child, You Walk Like a Peasant」
2002年「Storytelling」
2003年「Dear Catastrophe Waitress」
2006年「The Life Pursuit」
2010年「Write About Love」
2015年「Girls In Peacetime Want To Dance」
グラスゴー(Grasgow)
イギリスのスコットランド南西部に位置するスコットランド最大の都市。国立大学のグラスゴー大学やグラスゴー大聖堂文化など、歴史ある施設が存在する。若者文化や芸術の盛んな地域。