写真=THE Dφの魅力とは

THE DφのTHE BRIDGE IS BROKEN(YouTubeより)

 フレンチ・インディーシーンからサマーソニック2015に参戦する「THE Dφ」。彼らの楽曲は、何とも怪しげなサブカル感と、一聴で引き込まれる奇妙な魅力を持っている。さほどハデな演出や、華々しい装置でのアプローチなどはなく、革新的、超特異なサウンドでもなければ、複雑難解なビートを走らせている訳でもない。THE Dφは、ごく自然に音楽を奏でている天然のサウンドながら、耳からなだれ込むシンプルで奇妙な中毒性が感じられる「ちょっと風変わりなフレンチ・インディーポップ」だ。

パリのインディーポップデュオ「THE Dφ」

 「THE Dφ」は、前髪ぱっつんが似合う Olivia Merilahti (オリヴィア・メリラティ) と、哲学者的な物腰のマルチプレイヤーDan Levy (ダン・レヴィ)らで2005年に結成されたフランス・パリの男女デュオ。その音楽性は、フォーク、HIP HOP、エレクトロニカ、という3点が最も濃い要素で、無邪気でメルヘンな澄んだ歌声と牧歌的なサウンドがチャームポイントだ。

 2008年にリリースされた THE Dφのデビューアルバム「A Mouthful」はフランスのアルバムチャートで1位を獲得。彼らのファーストアルバムの発表は、自国フランスでセールスを伴った高い評価を得た。以降も2011年に「Both Ways Open Jaws」、2014年「Shake Shook Shaken」と、これまでに3枚の実に内容の濃いスタジオアルバムを発表している。

インディーポップ+トリップホップ?エレクトロニカ?

 オルタナティブ、インディーロック、フレンチポップに加え、THE Dφ の音楽性は、最近あまり使われないジャンル明記になりつつある「トリップホップ」というジャンルもあえて挙げると、THE Dφ のサウンドがイメージとして伝わりやすいかもしれない。

 トリップホップは、マッシヴアタックやビョーク、ポーティスヘッドなどのアーティストらが90年代のポストロックとして英国ブリストルを中心にシーンを賑わした頃のジャンル呼称だが、そのジャンル表記自体はあまり使われない=別記注釈=。現在ではアブストラクト、エレクトロニカ、ダウンビート、チル、等の言葉で置き換えられ、その内向的、叙情的、抽象芸術的なサウンド自体は健在。むしろ常に音楽シーンの一角にある。

 それらの音楽の傾向としては、HIP HOPビートを基調とした上で、エレクトロビートやアナログシンセのオーケストレーション、声楽、ソウルミュージック寄りのボーカルや、内向的、叙情的なアレンジ、サンプリング、実験的な電子音構築、不規則なビートの構築、などの要素が顕著にみられる音楽だ。

 THE Dφのサウンドは、トリップホップを噛み砕いた上で、アブストラクトHIP HPOP、エレクトロニカにフォークの牧歌的な空気感を融合させた「フォークトロニカ」という種類が、ジャンルで挙げるとしたら最もしっくりくる所だろう。

 90年代からのサウンドスタイルを継承し、オリヴィアの可愛らしくも奇譚的なボーカル、奇妙な美しさをもってしてTHE Dφ はそのメルヘンな世界を展開させる。その中毒性の高い楽曲は、聴く者を虜にする魔力の様なものを確かに孕んでいる。

美メロ、オリビアの美しすぎる歌声

 “Song For Lovers”で聴けるアコースティックな楽曲に聴き入っていると、そのスピリチュアルなボーカルに心洗われる様で、考えさせられる様で、恐ろしく神妙な気分に誘われる。楽曲「Song For Lovers」のメロディー、オリヴィアのあまりにも美しい歌声は、まるで走馬灯の一部にフォーカスした死後の世界ギリギリの感覚、錯覚、あるいはリアリティに包まれる体験が出来る。

 しかし、ダークな印象、不思議ちゃん的なキャラクターの一辺倒ではなく、とんでもなく明るくポップな、フレンチ・ポップ特有のカラッと華やかな雰囲気の楽曲も多々あり、一貫したキャラクターを保ちながらも、THE Dφの楽曲は、何度も聴く程味わい深くなっていく。いわゆる「スルメソング」を素で量産しているという、何とも貴重なアーティストではないだろうか。

 フレンチ・インディーシーンから今年2015開催のサマーソニックに参戦するTHE Dφ。その「ちょっと風変わりで中毒性のあるフレンチ・インディーポップ」を、一体どういったステージパフォーマンスをもってサマソニ出演会場・幕張の地を揺らすのか、包むのか、全く予想がつかず、彼らの来日に未知の期待感が溢れる。  【文・平吉賢治】

▽Summer Sonic 2015 出演予定
サマーソニック2015
TOKYO 8月15日(土)
GREEN STAGE 出演予定

▽これまでのアルバムリリース
「A Mouthful」2008/01/14
「Both Ways Open Jaws」2011/03/09
「Shake Shook Shaken」2014/09/29

 ◆注釈=トリップホップ トリップホップという言葉自体は現在はほぼ使われておらず、「踊れないHIP HOP」とも表現(悪い意味での表現ではなかったのだが)されたり、そのスタイル自体を軽率に模範したのみのフォロワーバンドが増えた事からか、当時そのジャンル総称は音楽メディア以外では好んで使用してはいなかった様だ。当時はビョーク、Beck、ポーティスヘッドなどがその代表的なアーティストして挙げられた。

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