互いの存在意義を確かめた「メイ」

撮影・山川哲矢

撮影・山川哲矢

 彼らの楽曲は全て日本語詞だ。ミュージックヴォイスのインタビューで松本はその理由を「日本人だから」と語っていたが、彼の声、そして彼らのバンドには日本語は合っているとつくづく感じるのである。例え日本語でなくても魂から発せられる歌への想いは凄みがあり、観衆にその思いは100%届くだろう。その意義、そしてその運命的な言葉、リズムの出会いはこの日のライブで実現されていた。

 本編最後に披露したのは「メイ」だ。今回のアルバムの最初に収録されている楽曲で、今回のアルバムで一番最後に出来上がった楽曲であり、松本が4年前から考えてきた答えが見つかった楽曲。「互いに意識し合うことで互いの存在の証明になる」ことを込めている。この場でも松本が「俺には君たちが必要なんだよね。辛いときは僕らの音楽といってほしい。ひとりぼっちだと思うな。求められるなら届ける。僕らもその分たくさん、もらっている」と語ったが、それを最後に用意することは、今日のライブを通じて観衆と意識し合い、互いに必要な存在であることの証明をしたかったに違いない。

 同曲は確信をもてたナンバーでもある。それは力強く、どの楽曲も決して迷いはないが、長年考え来たことの答えをみつけたこともあって重みが違う。なぜか心から込み上げてくるものがある。演奏、人物、声、歌詞全てにおいて不純がなくマッチしている。マイクから遠ざけて歌って叫ぶ松本は魅力的だ。そしてそれはバンドひとりでも欠けたら成り立たない。

惹き込まれる世界観とそれぞれの解釈

撮影・山川哲矢

撮影・山川哲矢

 その意義はアンコールにも続いていた。アンコール1曲目「send me」の後に披露した「ワンダーランド」は同アルバムの最後に収録されている楽曲だ。インタビューでも「そもそも今生きている世界が不思議な世界でしょ。だったら一歩踏み込もうよ」と述べた通り、互いに意識し合った仲間、一人で立ち止まるのではなく仲間で進んでいこう、という思いが込められているのであろう。松本は叫ぶようにはげしく捲し立てる。

 そして、同曲は原曲よりも激しい。ライブによって曲は変わるように。常に今の自分が一番良い状態で進化しているとも語っていたが、その言葉を裏付けるものとなっていた。彼ら、そして楽曲たちは常に成長しているのだ。ライブを通して、そしてリスナーの耳を通して。楽曲は作られたものではなく、純粋に今を生きているのだ。松本の首もとに浮かび上がる血管は激しく脈を打ち、そして迷いは一切ない、あったとしてもこの場にはない。それが楽曲に説得力を更に持たせ、観衆を惹き付ける要素だ。それを実感させられたライブとなった。

 彼らの楽曲は敷居を設けているわけではない。音楽を純粋にそれぞれの解釈で楽しんで欲しいとインタビューで語っていた。それがたまたま彼らの世界観に惹き込まれ、我を忘れた状態だったに過ぎない。ライブによって、雰囲気によって、観衆によって、そして彼らの楽曲を触れてきた時間によって様々な楽しみ方があることを感じさせてくれた。

リリース情報

「LIFE PROBE」
発売日:2015年7月1日(水)リリース
映画「夫婦フーフー日記」主題歌「ボイド」含む全10曲
収録曲
M1.「メイ」
M2.「林檎の理」
M3.「Grieveman」
M4.「reverie」
M5.「ボイド」 
M6.「王様のひとり芝居」
M7.「into the dark」
M8.「イツカの日記」
M9.「multiverse」
M10.「ワンダーランド」

品番:AZCS-1047
価格:2500円(tax out)
仕様:初回限定仕様クリアケース付きジャケット

この記事の写真
写真=LAMP IN TERREN東京公演[1]

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