LAMP IN TERREN圧巻の夜、完全に惹き込んだ東京公演
圧巻のパフォーマンスで見るものすべてを世界観に完全に惹き込んだLAMP IN TERREN(撮影・山川哲矢)
3人組バンドの「LAMP IN TERREN」が30日、東京・渋谷WWWで『LAMP IN TERREN presents “VOYAGER’15”』の東京公演を行った。この日が、7月1日発売のセカンドアルバム『LIFE PROBE』の店頭到着日、いわゆる“フラゲ日”。ファンに作品に込めた思いを伝えるとともに、一緒に歌いたかったという新曲「multiverse」などを中心に全12曲を披露。その圧倒的なパフォーマンスで魅了した。また、松本大(Vo&Gt)の古くからの友人である渡井翔汰(Vo&Gt)擁する「Halo at 四畳半」がオープニングを飾った。ミュージックヴォイスでは当日の模様を以下の通りにレポートする。 【取材・紀村了】
盛り上げた盟友「Halo at 四畳半」
会場は多くの女性ファンで詰め尽されていた。小鳥のさえずりやヒーリング曲などが流れるステージはまるで森林にいるようだった。その音はやがて地を這うような音程の低いギターの音色に変わり、撫でやかな歌声で今宵の始まりを告げた。最初に会場を盛り上げたのは4人組バンドの「Halo at 四畳半」だ。ボーカルの渡井は、LAMP松本の古くからの友人。戦友とも言うべき友の記念日をお膳立て。しかし当の本人は「彼らも僕らを指して同じ事を言っている通り、僕達も一番潰したいバンドがLAMP IN TERREN。僕たちの事を知らない人が多いと思うけど、絶対に覚えて帰ってもらえるように力いっぱい歌います」と荒々しく歓迎の言葉を送った。
その威勢のいい言葉とは裏腹に、楽曲や歌声は人の心にすんなりと入り込む優しさ、そして時にストレートな感情表現をぶつけた。魂の叫びは人を惹き付けるように、彼の場合もそうであった。咽を痛め付けながらも伝えたい事を剥き出しに伝える。それが観衆に伝わり心を惹き付ける。中盤に披露した「水槽―」は、その世界観を色濃く映し出した。手を挙げていなかった人までもが手を挙げ身を委ねた。その後に披露された楽曲たちはそれまでよりも強い説得性が生まれていた。彼らの音楽に観衆が惹き込まれた瞬間だった。
迫力のバンドサウンドと歌声
彼らが去った後の会場は余韻に浸るものや、その後に登場するLAMP IN TERRENへの期待感に胸を躍らせるものなどで様々な感情が入り混じっていた。ただ、どれも清々しさがある。午後8時14分にステージの幕が開くと、その1分後にEDM調のBGMが鳴り出す。微かな明かりのなかで、手を挙げながら登場する中原健仁(Bass)、川口大喜(Drums)。そして、松本大(Vocal & Guitar)がステージに立つと観衆からの歓声が上がった。
数個のランプが灯るなか、『LIFE PROBE』の2曲目に収録されている「林檎の理」のイントロが静かに鳴り響く。その曲の盛り上がりに合わせて青光と白光が彼らを照らす。跳び跳ねて激しく弾く中原と対照的に松本は静かに燃えるようだった。「どうもLAMP IN TERRENです」と短く挨拶する松本の歌声には躍動感があった。松本の興奮の度合いは服の上から浮かび上がる肉の張りや肩などでも分かる。そして、川口は休符の合間をみて腕を振り観衆を煽った。
2曲目「Sleep Heroism」(1st Mini Album『PORTAL HEART』収録)は一転、リズミカルなドラムで始まる。3人がのる。ベースの音も跳ねている。水色のギターを背負う松本にも笑みがこぼれていた。興奮はファンも同じで手を挙げて応えている。その手は白い光に照らされて、花のようにもみえた。時折入るドラムのエコーはムードを作り、3秒間のブレイク、そしてその後に続く松本の声は曲に迫力を与えた。
「全力のライブ」と誓ったバンド
中原は既に汗だくだった。曲終わりに会場の明かりが落とされると中原が挨拶を兼ねて「『VOYAGER’15』というのは今まで自分が経験してきた辛い事や楽しい事も受け止めてだからこそ今があって、これから生きていくために今があるということを心に置いておきたいなと思って付けたタイトル。だから俺たちは絶対に全力のライブをして皆と一緒に楽しんで最高のライブにしたい。一緒に楽しんでくれますか。行けますか渋谷」とライブの意義を説明。歓声を上げて応えるファンに松本も表情をゆるめた。
暗転したまま奏でられたメディアムテンポな3曲目「クライベイベ」では、心から発せられる松本の歌声が観衆の心を突きさした。次第に高揚度を高めていく松本は声も荒げていく。この日、黒のジャケットに黒のパンツ、白のインナーの衣装だっため、微弱の暖色ライトだけでは松本は浮かび上がらない。しかし、それが迫力と雰囲気を醸し出していた。
4曲目の「リメンバー」も迫力は変わらなかった。時に語りかけるように唄い、呼吸の音をも使って表現する。伸びやかに広がる彼の歌声は深みがあり、すんなりと人の心の扉を叩いて入り込む。声量の強弱があればあるほど曲に重みが生まれる。一方では声をからしてまで思い届ける歌声、そして中原のベース、川口のドラムは力強く、会場を飲み込んでいく。観衆はその迫力にただただ無意識の状態で身を委ねているようだった。
ドラムのカウントで始まった5曲目「ボイド」は映画『夫婦フーフー日記』主題歌。ハイライトを予感させるドラムのスネアロールが楽曲の雰囲気を盛り立て、それに揺られ松本の声も迫力を増していく。そして、比較的他のバンドよりも音が際立つ中原のベースが高鳴らせる。
達成した観衆との合唱
「一緒に歌いたい」と松本が語った6曲目「multiverse」は今回のアルバムに収録されている楽曲だ。「多元宇宙論」という意味で、「自分の選んだ道はこれで正しかったっていう事を皆で言いたくて。皆で歌える曲にしようと思たんです。だから“ウオーウオー♪”というメロディがあるんですけど、ライブ会場で皆で歌って“今の自分が正しいっていう事を肯定しようぜ”という曲」とインタビューで松本が述べていたもので、この日実現したのだ。
7曲目「緑閃光」は彼らが放つ楽曲の奥深さを象徴させる楽曲だ。ミュージックビデオに描かれた光源の数々、浮かび上がる日本語詞とメロディの美しさをライブでどう表現するかが注目された。静かに流れるそれは、松本の冷静さを保ったダイナミックな歌声で再現されていく。数個のランプはさらに雰囲気を作り、光に照らされた3人は影絵のようにもみえた。シンプルな楽器だからこそ一つ一つがはっきりとし、そして深みがあった。彼らの世界観に惹き込まれる観衆は考えること、意識を捨てて、ただ彼らの音楽に見とれていた。
この日、披露した楽曲の多くは突然静かに終わるケースが多かった。それは衝撃が強すぎる彼らの音楽という媚薬を、そして魔法を解くのにいくばくかの余韻を残す“レムタイム”を設ける必要があったのかもしれない。そして、MCでの松本の語り口はとても滑らかで貫禄がある。そこには一切混ざり気のない純粋な思いと微動だにしない自信があるように思えた。現にMCで語った「忘れたくない一日にしたい」と言葉に観衆は大きな声で答えていた。
「このバンドが始まった歌です」と語った「L-R」や「ランデヴー」では、演奏を止めて生で歌声を届ける場面もあった。そして、ライブの佳境を告げるように激しくビートを奏でた。川口も激しく唄い、中原もステージ前に出て全身で心の高鳴りを表現した。そして、松本は川口のもとに向かって確かめ合うようにギターを奏でていた。