花澤とファンたち、お互いが「いなくちゃだめ」な存在

写真・花澤香菜の日本武道館公演2

 観衆とのコール&レスポンスを目いっぱいに楽しんだ「CALL ME EVERYDAY」、新たなパフォーマンスへのチャレンジとなったタップダンスを存分に披露した「タップダンスの音が聴こえてきたら」、哀愁味を感じさせた「Trace」、そして彼女自身の成長を示す意味でも、しっかりと気持ちを込めて披露した「25 Hours a Day」をはじめとした、前作アルバム『25』からの楽曲群。彼女の様々なカラーを見せながら、合間にまるで友達同士の他愛もない話を語るようなMCと共に、彼女の魅力を余すところなく表現し、観衆を魅了していった。

 あっという間に過ぎた、17曲のプレイタイム。ラストソングは、この2月にリリースされたシングル曲であり、自身初の主演映画の主題歌となった「君がいなくちゃだめなんだ」。この日花澤は、フロアに向かって何度「ありがとう」を告げたか知れない。そしてその声に大きく答えた観衆たち。まさに花澤にとってこの日訪れたファンは「いなくちゃだめ」な人であり、それは観衆にとってもしかりだ。

 君がいなくちゃだめなんだ
 君がいなけりゃこの世界は
 呼吸さえも 言葉さえも 時間さえも 止めてしまうんだよ

 サビのメロディと詞が、そのやさしくも力強い思いを会場いっぱいに伝えた。リズムに合わせて、青い光が揺れる。ブレイクの後、最後の詞を歌いきり、また花澤は観衆に向かって何度も語り掛けた。「本当にありがとうございました!」その表情は、終始見せていた笑顔の中でも、何かこみ上げてくるものを抑えているようにも見えた。

 ステージを完遂したその喜びを、目いっぱいに表しながらステージの一団が去った後、フロアから怒涛のようなアンコールが鳴り響いた。長く続いたその声にようやく応えるように、再びステージに登場したディスティネーションズの面々、そして花澤。

 しばしの沈黙の後「せーの!」という声に続いてプレイされたのは「恋愛サーキュレーション」。この曲はアニメ「化物語」第10話のオープニングに使用されたもので、ライヴでプレイされるとは、彼女の熱烈なファンでも想像がつかなかったと見え、フロアのあちこちで驚きの声が上がったが、次の瞬間には皆大喜び。ここまで来てもなお、皆の喜ぶ表情を引き出すべく全力で歌い、踊り、観衆との対話を楽しんでいた花澤だった。

未来に続く『Blue Avenue』へ。

写真・花澤香菜の日本武道館公演1お

 一方で、終わりを惜しむ思いを語った花澤。つらい下積み時期に、日本武道館公演というマネージャーの夢に後押しされ、ようやくここまで来た道のりを回想しながら一時泣き崩れたが、フロアの観衆からは惜しみない拍手と歓声が送られ、その後押しに再び立ち上がり、楽屋に向かって「うれしいかマネージャー!?泣け!」と叫び、ぐっと気持ちを抑えた。

 そして「泣いている場合じゃない!もっと楽しくできるように頑張るから、みんなも応援よろしくお願いします!」と改めて自身の決意を表明し、クライマックス、観衆と共に歌い上げる「星空☆ディスティネーション」へ。皆でこの空気を共有できた喜びを告げ、ステージを去った一団。さらに当初予定されていなかった2ndアンコールまでも披露し、息つく間もないほどに楽しい時間を提供したステージは、成功のうちに幕を閉じた。

 前作アルバムより、花澤はアルバムの制作で作詞の部分にまで大きくかかわるようになり、自己の表現を広げたという。この日のステージは、その曲の中にちりばめられた言葉一つ一つにまで、彼女自身のありのままの姿が表現されていた。

 「Blue」という言葉は、例えば音楽でいえばBluesなどの、愁いを感じさせるような暗いイメージを表すことがある。しかし花澤とその仲間たちがこの場で表現したものは、まるで晴天の青空を見るような清々しくポジティヴなものだった。

 彼女を取り巻く人たちが願っていた夢のひと時は終わったが、花澤と彼女を支える人々たちの晴れやかな道、『Blue Avenue』はずっと未来に続いていく。花澤たちはまだ、その第一歩を踏みしめたばかりだ。

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