INTERVIEW

本西彩希帆×岩立沙穂

「深く考えていただくいい機会に」食事や命について思うこと:『明日、君を食べるよ 2023』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年11月29日

読了時間:約11分

 元劇団4ドル50セントの本西彩希帆と岩立沙穂(AKB48)が、12月1日~12月3日に新宿村LIVEで上演される舞台『明日、君を食べるよ 2023』に出演。本西は母親が再婚し、移住先で命と向き合うことになる少年サナギを、岩立は再婚相手の連れ子でサナギの姉となったミゾレを演じる。本作は2014年の初演時に杉並演劇祭で優秀賞を受賞しており、今回で4度目の再演となる。移住先で出会った食用牛、うしのすけと出会い、命をいただくとはなんなのか、サナギが葛藤しながら成長していくストーリーとなっている。インタビューでは、『明日、君を食べるよ 2023』に臨む姿勢から、食育について2人はどのように感じているのか、話を聞いた。

お互いの印象は落ちついた人?

村上順一

本西彩希帆&岩立沙穂(左)

――お2人でインタビューを受けるのは初めてですか?

本西彩希帆 3回目くらいです。

――先ほどの撮影で「向かい合って撮るのが慣れてきた!」とお話ししていたのは、回数を重ねて馴染んできたからで。

本西彩希帆 そうなんです。私が人見知りなところがあるので、初めてお会いした撮影の時は緊張してしまって。

岩立沙穂 えっ、人見知りなの? 全然そんな風に感じなかったよ。稽古に入ってからもそんな風に思ってなかった。

本西彩希帆 人見知りなんです(笑)。私、お仕事だと大丈夫で、こういった取材や役柄があるとお話しできるんですけど、たとえば仕事とは関係ない友達の友達としゃべるのは本当に苦手で...。

――それはけっこう難しいと思いますよ(笑)。さて、お2人が初めて会ったときのお互いの印象はいかがでした?

本西彩希帆 沙穂さんは、今もそうなのですが、すごく落ちついていて綺麗なお姉さんというイメージがもともとありました。私は、先ほどもお話ししたように役がないと話しかけたりできないので、最初にお会いしたときは、とにかく失礼がないようにと心がけていました。

――岩立さんは本西さんの印象は?

岩立沙穂 初めて会った日は撮影もあり、その日はお互いほとんどしゃべれていなくてご挨拶をした程度でした。印象としては「あまりしゃべらない子なのかな?」と、それこそ落ちついた人に見えていました。ですので、仲良くなれるかな ?と思っていたんですけど、会うたびにどんどん距離が縮まって。すごく話しやすかったです。

本西彩希帆 うれしい!

岩立沙穂 稽古場でもしゃべりますし、帰りの電車でも他愛もない話で盛り上がりました。この前もスマホの待ち受け画面を変えたことを報告してくれたり。

本西彩希帆 以前は姪っ子の写真を待ち受けにしていたのですが、姪っ子に似ているクアッカワラビーを待ち受け画面に変えました。ずっと笑顔のワラビーがオーストラリアに生息していて、そのワラビーと一緒に写真を撮ると幸せになれるみたいなんです。クアッカワラビーを見ていると自然と笑顔になれるんです。

――岩立さんはその写真を見て、どんな返信を?

岩立沙穂 ワラビーが姪っ子に似ていることは教えてもらっていなくて、「ワラビーに会いに行きたい」と言っていて。それを受けて私は「オーストラリアにいってらっしゃい」と返事をしました(笑)。

――かなり打ち解けているんですね!

本西彩希帆 私、三姉妹の末っ子なんです。お芝居を始めてからも年上の方と一緒の現場が多かったので、年下よりも年上の方がお話ししやすくて。尊敬できるところがたくさんあるので、年上の方とは話しやすいんです。

――良い関係値の中で育まれている舞台という感じですね。

本西彩希帆 本当にその通りです!

課題はいかに重くなりすぎず伝えられるか

村上順一

本西彩希帆

――お2人が思う本作の見どころは?

本西彩希帆 出てくるキャラクターがすごく愛らしくて、そこが見どころの一つであり魅力だなと思います。私は演劇においてお客様から愛してもらうということを役を作る時に心がけているのですが、そういうメッセージが脚本を読んだときに伝わってきました。

――それはなるせさんの特徴でもあって。

岩立沙穂 愛らしいキャラクターがたくさん出てくるというのは、私が前回出演させていただいた音楽劇『Zip&Candy』でも感じました。たとえばキャラにちょっと性格が悪い一面があったとしてもどこか憎めない、誰もが共感できるキャラクターが1人はいるんです。なるせさんの作品はそういう世界観が多いと感じています。

――岩立さんが思う見どころは?

岩立沙穂 私は台本を読んで、すごく温かい作品だと思いました。大事に育ててきたうしのすけを食べる日が来てしまう、命をいただくという重いテーマではあるのですが、それをいかに重くなりすぎずに伝えられるか、というところが見どころだと思います。そして、登場人物たちが命をどう受け止めているのか、そこに注目して見ていただけたら嬉しいです。

村上順一

岩立沙穂

――さて、本西さん演じるサナギは、甥っ子を参考にしているところもあるみたいですね。

本西彩希帆 甥っ子は8歳なのですが、その年代って好きなことは好き、やりたくないことはやりたくないと、すごく素直なんです。甥っ子は感情がまっすぐ出るのに対してサナギはそうではなく、ちょっと大人と言いますか、背伸びをしてしまうところがあります。本当は嫌だけど作り笑いをしちゃったり。そこが甥っ子とは差があって、普通の小学生ならこうしないのにみたいなところでヒントがもらえたりします。身近に甥っ子や姪っ子がいてくれてよかったです。

――岩立さんはミゾレに重ねている人物はいますか。

岩立沙穂 実際私には弟がいて、自分が弟に絡むときのテンション感がミゾレも似ていると思いました。ですので、割と自分そのままで演じています。

――ご自身の年齢とミゾレでは年齢が離れていると思うのですが、そこへの意識は?

岩立沙穂 歌のお稽古の時に「子どもっぽく歌っているね」と言われたことがありました。それは無意識だったのですが、その言葉を聞いて年齢を役に寄せなくてもいいのかなと思ったので、等身大で演じています。

――食育がテーマの本作、食事や命について考えたことはありますか。

本西彩希帆 食材を買う時に「これは鹿児島で育った牛なんだ」、「育てた人はこんな人なんだ」とかそこまで考えたことはなくて...。学校の授業で習ったこと以外で食事や命について触れたことはなかったのですが、屠殺場のことなど、この作品を通じて知ったことがたくさんあります。

――食事についてかなり向き合うことができた?

本西彩希帆 私は命について考えすぎてしまうと食べられなくなってしまうタイプなので、あまり深くは考えないようにしました。私はこの作品の持つメッセージをしっかりお客様にお届けすることが、 いま私にできる食育と向き合うことだと思っています。

――入り込みすぎてしまうんですね。

本西彩希帆 そうなんです。けっこう重く受け止めてしまうところがあるので、マネージャーさんからも「あまり入り込みすぎないようにね」と言われていて。ある程度距離感を保ちながらやっています。

――岩立さんが食事、命について考えたことは?

岩立沙穂 私の家庭では「食べ物を粗末にしない」とよく言われていました。その中で特にお米に関しては親戚がお米の農家というのもあって、“お米1粒1粒に神様がいる”と教わってきていたので、残さず全部食べるという習慣が身につきましたし、いまだにご飯を残すことはほとんどないです。お菓子よりもご飯が食べたいという気持ちが強いので、間食もほとんどしなくて。

――食事にはけっこう厳しい家庭だった?

岩立沙穂 それが当たり前のこととして育ったので、特に厳しいという感じではなかったです。やけ食いをして後悔するとか聞きますが、私はそういう感覚がほぼなくて、もし食べ過ぎてしまったとしても、「今日もご飯が美味しかった」と思えます。

活動のモチベーションにつながっている音楽とは?

村上順一

本西彩希帆&岩立沙穂(左)

――稽古に入られて改めて難しい、大変だなと感じたところはありますか?

本西彩希帆 セリフ量です。私はうしのすけとの会話が多いのですが、うしのすけは「モウ」しか返してくれないんです。それはいろんな気持ちを含んだ「モウ」なんですけど、そういうシーンがけっこうあって。そのキャッチボールが難しいと感じているので、うしのすけ役の山口(渓)さんとすり合わせができたらいいなと思っています。また、サナギは4曲、ミゾレは2曲歌うパートがあるのですが、歌いあげるというよりも「セリフを歌う」みたいな感じで、これは初めての感覚なんです。4拍子の中に3拍子が入ってくる曲があるのですが、3拍子が難しくて苦戦しています。先日、物語の最初の方で歌う曲を動きと一緒にやってみたのですが、動きがついたことですごく歌いやすくなって、ちょっと手応えを感じています。

――本西さんは相手のセリフを録音して自分のセリフを言う練習の仕方をされていると聞いたのですが、今回はうしのすけの「モウ」を録音して練習を?

本西彩希帆 「モウ」は録音しなかったです(笑)。

――とはいえセリフを録音して練習するのは、すごく良さそうですね。

本西彩希帆 そうなんです。相手のセリフの中に次の自分がしゃべりたいきっかけの言葉があるんです。そこを拾いながらやることで会話ってできると思ったので、相手のセリフを録音するようにしています。

――岩立さんが苦労されているところは?

岩立沙穂 私も長台詞が多い役で特に前半ですごい勢いでしゃべっているシーンは大変です。ミゾレはおてんばで明るい女の子なのですが、初めてサナギとお母さんに出会ってからテンション感がすごく高くなるので、自分もテンションが上がってセリフが飛んでしまいます(笑)。今まで出た作品の中で一番と言っていいくらいセリフの量がある気がしていて、シンプルにこれだけのセリフを覚えたことがないので、本西さんに覚え方を教えてもらいながら稽古しています。

――これまでの練習方法は?

岩立沙穂 基本しゃべらない役が多かったので、覚えるのもそれほど大変じゃなかったんです。今回は相手の言葉を受けて、セリフを発しなければいけないので、そこが課題の一つです。

――さて、MusicVoiceでは、毎回音楽についてお聞きしているのですが、お2人が活動のモチベーションにつながっている音楽はありますか。

本西彩希帆 私は元気がでない日は緑黄色社会さんが好きです。「Mela!」や、最近の曲だとアニメ『薬屋のひとりごと』のオープニングテーマ「花になって」をよく聴いています。他にも『千と千尋の神隠し』の「いのちの名前」(木村弓)が好きで、石川由依さん、幾田りらさんもカバーしているのですが、お風呂で聴いてリラックスしています。

――岩立さんどんな曲でモチベーションやテンションをあげていますか。

岩立沙穂 アニメの 『ラブライブ!サンシャイン!!』が大好きで、黒澤ダイヤちゃんというキャラクターのソロ曲「Pure heart Pure wish」を聴いています。自分の大好きなことに正直に生きていこう、というメッセージが込められていて、すごく勇気をもらえるんです。昨年リリースされた曲なので、1年ぐらいこの曲を目覚ましにしているのですが、いまだにフルで聴きたいから、目覚ましを止めずに最後まで聴いてしまいます(笑)。

――大好きなんですね! 最後に公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

本西彩希帆 「いただきます」という言葉ひとつとっても、深く考えていただくいい機会になると思います。私たちもお客様にそういうメッセージをしっかり提示してお届けできるように精一杯頑張ります。そして、小学生から高校生の方は無料の席もあって、チケット代を気にせずに観られる公演になっているので、ぜひお気軽に劇場に来ていただけたら嬉しいです。

村上順一

本西彩希帆&岩立沙穂(左)

(おわり)

公演情報

舞台「明日、君を食べるよ 2023」
脚本・演出:なるせゆうせい

出演:
本西彩希帆、岩立沙穂(AKB48)
遥りさ、上之薗理奈、渡辺優空、岡内美喜子(キャラメルボックス)、森山栄治、三浦克也、山口渓

日程・会場:12月1日~12月3日新宿村LIVE

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