ルーツはパンク
――話を格闘技に戻しますが好きな選手は
KOKI うーん、バダ・ハリさんとか好きでしたね。踏みつけ将軍って言われた選手です。日本でしたら山本“KID”徳郁さんも好きでした。彼らはもちろん強かったけど、強い弱いに関係なく、ああいうカリスマ性のある選手が少なくなったなという気がしますね。ボクシングでいうう辰吉さんや薬師寺さんとか。圧倒的なカリスマが必要だなと感じますね。
――音楽におけるカリスマは
KOKI ずっと言っているのは、演奏が上手い下手は関係ないって僕は思っていて。もちろん上手くて演奏を間違えないのが大前提ですが、もともと僕が好きになったのはシド・ヴィシャスが最初だったんで。ベースも上手くなければ歌も上手くないし。だけど、パンク史上一番かっこいい人だったのかな。そういう意味でカリスマなんだろうなと思いますね。ステージに立つ以上、カリスマでなきゃいけないって思います。
――彼の影響は受けている
KOKI そうですね。「アイツよりこのプレイが上手い」とか「アイツより高いキーが出る」「アイツより歌が上手い」というのは個々色々あると思いますけど、鏡を見てみたり、楽器持ったりしてその姿が格好良くなかったら、上手い上手くないは関係ないのかなと思います。
――その点において自身のプレイやパフォーマンスでも気をつけている
KOKI 格好つけなきゃいけないと思います。ステージに立つ以上、相手が子供であれ、同年代であれ、女性であれやっぱり「頑張ろう」という気持ちや「泣ける」とか「夢が持てる」と思ってもらえるように、格好つける部分も必要なのかなと思いますね。どのジャンンルでもそうだと思います。
――そうしたなかでの歌詞はどのような意味を持つのでしょうか
KOKI 僕の中で、ボーカルは一番の飾りだと思うんです。リズムを作るドラムが演奏の基礎を築いて、その土台作りでベースがいて、ドラムとベースだけで曲は成り立ってしまう。その土台の上にギターが大きな輪郭を描いて、キーボードが華やかな飾りを加える。そして、そこにボーカルという声を入れる事によって色付けされるんです。INKTの歌を別のボーカルさんが歌うとまた違う曲になると思うし。そうなるともう「ラララ」でも楽曲になる。だけど、曲に直接的な表現で意味を伝えるとなると歌詞は必要で。すごく大事だと思うんです。一番気を使うし、一番最後の仕上げと言うか、彩りですね。歌詞1つで、赤くも青くもなると思う。
――今の制作スタイルは、先にメロディができて後から歌詞をつくる
KOKI 今のところそうですね。一応ストックとしての案はあるんですよ。こういう曲も歌ってみたいとか。
――作曲者がこういう思いで作ったと伝えてくる
KOKI 伝えてくれたりもするし、格好良いメロディや「こういうものを作ったんであとは任せます」と言ってくる場合もあるし。
――思いとは違う方向になった曲もある
KOKI ありますね。例えば今回のアルバムだったら「サイサリス」かな。先ほども言いましたが最初は破滅的な恋愛がテーマだったので。
――10年後とか、20年後とか、何をやってると思いますか
KOKI 何やってても歌は続けてるんだろうなと思いますね。どういう形であれ、音楽はしてたいな。
音楽に真摯に向き合いたい
――KOKIさんにとって音楽とは
KOKI 他は不真面目でも、音楽には真面目に真摯に向き合いたい。自分の人生で一番寄り添ってくれていたような気もするし。音楽に対しての恩返しの気持ちもありますね。
――辛い時も音楽に助けられた
KOKI 昔、失恋して辛いときにこの音楽を聴いて助けられたとか、中学のときに先輩に「お前あの公園来いよ」と言われて、「怖っ!」て思って音楽を聴いて勇気を奮い立たせて行ったとか(笑)。いつもどこかにあったんだろうな。「この歌ってあの時に好きだった子と聴いてたな」とか。何かしらの節目節目にもあったし。
――ライブで格好良い姿を見せていくのが今後の目標
KOKI それが一番。それに尽きるのかな。
――ライブ会場で伝えたい事は
KOKI 一番は、もちろんINKTを好きな人に来てほしいし、アルバムを聴いてくれた人には生で聴いて欲しいというのがあります。でも僕の中ではアルバムを聴いた事がない、興味がない人にもすごい来て欲しくて。それがライブハウスでツアーを回る事の意義だったり意味だったりするのかな。「ほら、こんな熱い事やってんぞ」というのもそう。「30歳手前にしてスタート地点だぜ俺」「でもこんなに頑張ってんぞ」とか。見たいものを見せれると思う。やっぱり単純にINKTとしての下積みも沢山欲しいですしね。実戦経験を。メンバー個々にいろいろな事やって来ているけど、INKTとしての実戦経験はまだ少ないので。
――地方に回るときは車で
KOKI ありますね。機材も多いですしね。場所によっては、あると思います。
――自分で運転とか
KOKI 全然全然。あります。
――ザ・ロックバンドですね
KOKI そのほうが楽しいですし。最初からトップにいるバンドなんかいない。みんな下積みがあって、だと思う。メンバーおのおの下積みはあるけど、INKTとしての下積みはこれから積んでいって、INKTとして何が出来るかを見出していきたい。
――今回のアルバムがクオリティが良くて、これからライブで下積みをやっていくことを考えると、より一層深みが増す感じがします
KOKI そうですね。自分らを今から作り上げていこうという意味。まさにライブ向けの1枚です。
(取材・木村陽仁)