ライブが全ての完成場所
――そうした点では、前作が自己表現だとしたら、今回のアルバムはリスナー目線に立って作った
KOKI そうですね。1stライブで一緒に歌ってくれたお客さんがすごく多かったので「じゃあ、みんなで歌える感じの曲を多めにしてみようか」と。ライブの一体感を意識しましたね。
――今回のアルバムは、5月5日に開催される六本木での単独ライブを視野に入れて作られたのでしょうか
KOKI そうですね。バンドは特にライブをやってなんぼだと思うので。なかにはCDを発売しなくてもライブをいっぱいやっているバンドもいますし、ライブが全ての完成の場所だと思っています。
――INKTのアルバムは1曲1曲が独立しているのではなく、関連性が非常に強くアルバム全体が一つの物語になっているように感じます
KOKI 今回は特にそういう意識を持っていますね。「アルバムならいいけどシングルは…」というものはないし、全部がリード曲のつもりで作っています。
――ところでKOKIさんが書かれているツイッターやブログを拝見するとイメージとは異なって文脈からは内面にある優しさが滲み出ています。見た目だけで判断すると「いかつい」という感じがしますが、そのギャップが面白い。本当は優しい人なんだなと感じました
KOKI そうですかね。ありがとうございます!
――そうした文脈をもつKOKIさんがしたためる歌詞はどのようなものだろうと思い、今回は歌詞に注目してみました。最初の曲「Wanderlust」は勇ましい感じがするのですが、その一方で「サイサリス」は少女の目線で書かれたように感じます。これは、どう思い、どういうコンセプトで作られたのでしょうか
KOKI 「Wanderlust」は放浪癖という意味なんです。良く昔からいろんな人が「人生は旅である」と言いますが「人生が旅なら放浪しようぜ」「難しい旅だけど一歩踏み出してみようよ。行けば分かるさ!」という歌ですね(笑)
――アントニオ猪木さんの格言が浮かびますね(笑)。これはやっぱり自身に重ねている部分もある
KOKI あまり意識はしていなかったりもするんですが歌詞はやっぱり、人間性とか、人生観とか、環境とかがすごい出ると思います。すごい暗い気分の時って、明るい曲って作れなかったりもすると思うので。
――ブログでは「喫茶店で歌詞を考えている」と書かれていましたが、この曲は喫茶店で作られた
KOKI これは…どうだったかな? これは家で作ったと思います。
――しかし、エモ的なサウンドを奏でているなかで、喫茶店で歌詞を作るというギャップがまた面白いですね
KOKI カフェの方が周りの音をシャットアウトできるんですよね。すごく楽に集中できますね。家は誘惑が沢山ありますから。あれをやりたい、これをやろうって。眠くなったら寝れちゃうのも家ですしね。
――さて「サイサリス」になると先ほどの勇まさから一転、何か深い悲しみが浮かんできそうな感じがします。これはどういった思いが
KOKI なんていうんですかね…、人に対してですが「自分を偽ってあきらめたり」とか「偽らなくていいんだよ」「間違えてもいいんだよ」という思いが込められています。
――この詞はすんなり出てきた
KOKI 最初書いた時はもっと破滅的だったんですよ。
――そうなんですか
KOKI 破滅的な恋だったんですが、メンバーとこうしよう、ああしようって話し合って書き直して、いまの形に出来上がりました。
――英語詞を多く取り入れているなかでこの曲は日本語のみで構成されています。原曲も英語は使っていなかった
KOKI 最後の最後に1言あったかなかったか、そんなレベルですね。曲調的に英語を多くすると伝わりにくくなると思って。
――英語詞を使用している楽曲が多いですね
KOKI 伝えたい言葉が曲調とうまいハマリ方をしなかったら英語にしてみたり。聴いてくれる人が日本の方だけじゃないので、そういう人にも伝えられるように、半々とまではいかないですけど、6対4、7対3くらいで入れていけたらと思っています。あえて大事な所を英語で言ってるところもあったりします。
――今回のアルバムは最後になるにつれて曲調がすごく柔らかくなっていきます。これは意図したもの
KOKI いや、それはアルバムを作って曲順をどうしようかと話しているなかで、曲を全部聴いて並び替えてみたらこれがベストだったということですね。
――アルバム全体を通して何か伝えるとしたらどのようなメッセージがありますか
KOKI 今回はいろんな曲調の曲があるのですが、どちらかと言うとポジティブな感じの曲が多いです。最後の曲「Flower of life」は悲しい曲ですが、他の曲はポジティブな歌詞が多いのかなと。「Flower of life」も全体通して聴くと「笑顔でさよなら」みたいな、ちょっとポジティブな歌詞が入ってたり。INKTのやってやろうぜ感が曲や歌詞にも出たのかなと思います。