山本千尋が、現在放送中のTBSドラマ『埼玉のホスト』で連続ドラマ初主演を務めている。深夜ドラマ枠(火曜深夜25時~)『ドラマストリーム』9作目で、「埼玉のホスト」と「人を信用しない女」そして「ある秘密を持つ歌舞伎町ホスト」が送る新しいラブストーリー&青春コメディ。山本が演じるのは、埼玉のホストクラブ“エーイチ”の経営立て直しを依頼された超優秀コンサルタント・荒牧ゆりか。ナンバーワンホストを見出すためにスカウトしたのは超奥手な農家の息子・岩槻キセキ(福本大晴)だった―。山本は中国武術をベースとしたアクションで注目を集めているが、現代劇、そして連ドラ初主演でどういう姿を見せているのか。【取材・撮影=木村武雄】
自然と心を動かされた
――『鎌倉殿の13人』トウ役に代表されるようにアクションへの期待が更に増しているなかで、今回は現代劇でのドラマ初主演となります。
アクションを期待される役が多いのですが、今回はある意味文系でコンサルタントという役柄ともあって長いセリフもありますし、年下の男性共演者が多い現場も初めてでした。私にとって挑戦が多い上に主演を務めさせて頂くことが本当に嬉しいです。「座長だからこうしないといけない」というのではなく、スタッフさんも含め一緒に良いものを作ろうという熱い思いとフレッシュさがあって、そうした仲間と出会えてとても良かったです。個人的にシーズン2や映画化を狙っています(笑)。
――「人を信用しない」超優秀コンサルタントという役どころですが、どうアプローチされようとしましたか?
人間味はありますが、冷酷で淡々としている人物で、言葉一語一語に間違いがない。その説得力を持たせるためには知識が必要なのでホストクラブ見学や勉強をしました。見た目もスーツを着てピンヒールを履いて立っているだけで「バリバリ仕事ができる」雰囲気が出せるように意識しました。
――『鎌倉殿の13人』で演じたトウの時はただ冷酷さだけではなく、根の優しい部分を意識されたという事を話されていました。立場も時代も全く違いますが二面性という点では今回どうですか?
トウの場合は「彼女の人生がそうなってしまった」という所が前提にあります。ゆりかの場合は自分の意志でその道を選んでいて、そこに人間らしさを感じる部分があり愛着を感じました。現代において自分を突き詰めるとこうなる、という所に共感して、もしかしたら自分と共感する部分が一番多い役に出会えたかもしれないです。
――『正義の天秤』では強い正義感が故に過ちを犯す警察官を演じました。山本さんが表現する役柄の表裏を楽しみにしていますが、今回はどうですか?
今回の作品としては、ゆりかも含めて皆で一緒に成長していく物語ですのでそこが見どころだと思います。私自身、「エーイチ」のメンバーそれぞれに愛着はありますし、共演者皆の人間性のお陰で役にすんなり入ることが出来ました。途中から役を意識しなくても自然と演じられる状況にもなっていましたので、本当に恵まれた環境だったと思います。感情を素直に出してくれますし、心から泣いたり、真剣な眼差しで戦ったり、そういう姿に私も心が動かされました。そういう意味では皆も一人一人が自分と重ねながら演じていたんだと思います。
探す作業が楽しかった
――最初に脚本を読んだ印象は?
私が10代の時に観た、木村了さん(エーイチのオーナー・浦西コバト役)が出演されていたドラマのワクワク感が蘇ってきました。真面目にバカするほど楽しいものはないなと。『埼玉のホスト』にはその良さが出ていると思います。ただコメディはアクションと同じくらい難しいと思っていて、狙ったら面白くなくなってしまいます。その辺を、男性キャスト陣の素晴らしい才能と、撮影前に用意して下さったリハーサル期間中で深められた仲の良さでカバーできたと思います。
――コメディと言えば『誰かが、見ている』にも出演されていました。今回はどうでしたか?
このキャラクターだからこそ成立する、真面目が故の面白さがあると思っていましたので、脚本を読んで「ここはふざけてもいいんじゃないか」というポイントを探すのが楽しかったです。
難しかったこと
――共演者の印象は?
福本さんはお芝居に真面目で真摯でした。でも裏では関西弁バリバリで明るい。彼はこの作品の“ヒロイン”だと思っています。私も関西出身なので裏では関西弁で話しますし、でも本番になると標準語のイントネーションが関西弁につられてしまって。セリフも多かったですし、ホスト用語もあって、それが大変でした(笑)。楽駆さん(歌舞伎町トップホストクラブ「ラブ2000」のNo.1ホスト・赤坂ゲンジ役)は一番大人で、ゆりかを支えてくれる大事なキャラクターです。繊細な表情でゆりかの思いを引き出してくれました。
――難しかった点は?
回を重ねるごとに「ときめていく」という流れが初めてで難しかったです。福本さんや楽駆さんが同じ目線に立って、どの角度だったらキュンとするんだろうね、と一緒に考えてくれました。アクションの手合わせをしているような感覚があって有難かったです。
――ハプニングは?
ゆりかは笑わない性格なのに、笑い過ぎてNGを出すことが多かったです(笑)。たった1行のト書きも、木村了さんが膨らませて笑わせに来ていたので、それを堪えるのが大変でした。でも一番笑っていたのはプロデューサーさんで、遠くから聞こえる笑い声は嬉しかったです(笑)
全力投球で
――さて秋には念願だった劇団☆新感線43周年興行・秋公演があります。
すごく楽しみです!出演は上京した時からの夢でしたので、ちょっと時間かかりましたが、上京して最初に観て衝撃を受けた劇団☆新感線さんの舞台に出させて頂くことが本当に嬉しいです。身体を壊してもいいと思うぐらい全力投球で頑張りたいです。
――キャリア的に考えると、一気に扉が開いた感じがしますね。
これだけ長期で舞台に入るというのは初めてですし、劇団☆新感線さんに過去に出演された、『鎌倉殿の13人』で共演された方や、木村了さんからアドバイスもたくさんもらったので、それを踏まえてみんなに観に来てもらえるように「よかったよ」と言ってもらえるように頑張りたいです!
(おわり)