秋元康総合プロデュースのもと、Sony MusicとANIPLEXがタッグを組んだ、デジタル声優アイドルプロジェクト22/7(ナナブンノニジュウニ、通称ナナニジ)の愛知、大阪、福岡、東京、4都市を巡るツアー「ナナニジスプリングパレード2023」ファイナル公演が、4月9日、Zepp DiverCity(TOKYO)で開催された。コロナ禍後、初めて歓声が許可された中、ラストツアーとなる宮瀬玲奈はじめ、メンバーとファンが会場一体となって繰り広げられた熱狂の時間。10thシングル「神様だって決められない」収録曲を中心とし、華やかな衣装でのフラッグパフォーマンスへの挑戦や、磨きを掛けたユニットパフォーマンスなど見どころも豊富に、心跳ね上がる新たな季節の訪れを告げたのだった。夜公演の模様をレポートする。

 今回のツアーオリジナルとなる、軽快なマーチングバンド調のOvertureに乗せ、自身の名前の入った大旗を掲げたメンバーが、息の合ったフラッグパフォーマンスを披露するオープニング。いつもの制服衣装ではなく、大きなリボンで飾られたヘアスタイルや、丸襟や小花柄が愛らしいフレアワンピースなど13人13様のガーリーな装いが華やかに目を喜ばせる。1曲目がライブ終盤に歌われることの多い「循環バス」という意外な選曲に観客はざわめくが、ペアになって見つめ合い、手をぎゅっと握り合うメンバーたちの交流は目がたりないほどで、仲を深めながら最終公演へと辿り着いた道程をも想像させるツアーならではの幕開けだった。そんな互いの笑顔に照らされ、「Rain of lies」の涙に濡れて花開く「ヒヤシンス」が、暖かな季節の訪れを告げる。

 規制緩和を受け、ついに今回のツアーより歓声が許可されたとあって、この時を待っていた観客から次々と呼ばれるメンバーたちの名前。「『かわいい!』の声が小さかったから、頑張ってくださいね~」と気合いを入れ直させる“毎日かわいい”涼花萌をはじめ、ファンとのコミュニュケーションを通して会場の熱も高まっていった。

 Zepp DiverCity(TOKYO)のそばにガンダム像があることから、まさかの「ガンダムのパーツ、100個持って帰ろうよ!」と衝撃の曲振りを繰り広げた「晴れた日のベンチ」が、元気いっぱいに「To goでよろしく!」を披露し、ユニットコーナーが始まる。続いて「気の抜けたサイダー」が11thシングル衣装に着替えて登場するのだが、いつもの“ゆるふわ”な中にも刺激が感じられる奇妙な口当たり。天城サリーと涼花が「カントリーガール」の歌詞通り「やりたいことをやる」自由奔放ぶりで、セクシーユニットを乗っ取ろうとしていたのだ。もちろん、本家本元のセクシーユニット「蛍光灯再生計画」が「タトゥー・ラブ」のしなやかな純欲パフォーマンスでそれを蹴散らす。自身の演じる立川絢香と同じヘアスタイルで本公演に臨んでいた宮瀬玲奈が、キャラクターが憑依したかのような大胆さでアピールしていたことにも驚かされた。ダンスのみならず、月城咲舞と四条月の2人が切なく響かせる「タトゥー」のロングトーンも圧巻だ。

写真提供:ソニー・ミュージックレーベルズ

 さらに、椎名桜月プロデュースによる、最新の紅白ユニットも登場。ダンス選抜といっても過言ではないメンバーが揃った白組「最後のピアノ」は、連続してパフォーマンスすることとなった「蛍光灯再生計画」のメンバーを含み“最後”を覚悟するかの全身全霊のダンスと息を切らした歌声で、迫真のステージを作り上げる。顎を上げ下目遣いに相川奈央が放った「聴かせて欲しい」のセリフは、戦慄と興奮を呼んだ。対する紅組の「ハレロ」は、力強くも透明感のある神秘的なパフォーマンスで心の曇りを払っていく。椎名の柔らかな声に癒やされ、また『めざましテレビ』のリポーター「イマドキガール」としても注目を浴びる麻丘真央の明るさがまぶしい。両腕を広げ、清々しい笑顔で放たれた宮瀬の「ハレロ」の声は、22/7行く末を守るおまじないのように心に残った。

 ここで再び気持ちを13人ひとつに、このツアー限定の間奏曲「Interlude - hurray hurray -」にあわせて、制服衣装でフラッグのパフォーマンスを行う。隊列を崩さないように歩きながらくるくると回す、見事な技の数々。自分の背丈ほどあるフラッグの扱いに苦戦した小柄な清井がそれを“友だち”と言えるようになるまでどれほど練習したのか想像に難くない。

写真提供:ソニー・ミュージックレーベルズ

 ユニットコーナーを振り返るMCでは、激しいダンスによる衣装のアクシデントにより、途中でステージ袖に姿を消した西條和が「もう二度と制服で踊りたくない」と落ち込むと「私がみなさんの記憶を消しておきます」と椎名が頼もしくフォローする。

 感情を揺さぶる22/7らしい楽曲が、めくるめくドラマを作り上げていく後半戦。10thシングル表題曲「神様だって決められない」は、タイトルとは裏腹に笑顔にあふれ、彼女たちの夢と未来を描く空のキャンパスが、決して一色には染まらないことを感じさせる。見る人の頬をツンツンと差すように左右の人差し指を繰り出す様は愛らしく、神様から遣わされた13人の天使だろうか。「謎の力」は、力こぶを見せる清井美那のパワフルな魅力にも牽引され、観客は湧き上がる思いを叫びに代えてステージにぶつける。愛嬌たっぷりに「生意気でごめんなさい」というセリフを担う天城には降参だ。自分の気持ちに正直に生きようと決めた清々しさのままに「Just here and now」。河瀬詩のわがままな指先が心を翻弄する。暗転の中でフォーメーションのセンターに立った白沢かなえが、首をガクリともたげたのを合図に始まる「地下鉄抵抗主義」で、会場のボルテージは最高潮を迎えた。コロナ禍以前、ライブで1、2を争う盛り上がりを見せたアンセムが後輩メンバーという援軍を迎えて帰ってきたのだ。そして、2月19日に大阪城ホールにて開催されたライブイベント「52OSAKA ~Girls Castle~」で初披露され、22/7の真骨頂たるセリフを核とした演劇的空間が衝撃を呼んだ「命の続き」。一人ひとりの心が歌い上げるようなセリフ、その声の震えに彼女たちが生きている“今”が響き合う。畳み掛けた思いの先で「なぜ、生きているのかって?」「明日になればわかるよ」と問いと答えを担うような天城と月城が抱き合った瞬間に生まれたのは“希望”だった。

 そこから、後輩メンバー加入後初のシングル9th「曇り空の向こうは晴れている」へと物語は続く。西條の笑顔が見られたことも、今ツアーでの喜びの一つだった。そんな彼女が「そんなに強くなんてなれないよね。だから、今はそのままでいいから……」と、真っ直ぐに前を向き、届けた言葉。現在、活動休止中の望月りのが「希望ちゃん」と呼ばれるゆえんとなったセリフは天城が担当し、先輩と後輩に結ばれた絆を感じさせるのだった。ちょうど1年前の春のツアーからライブに参加した後輩たちの成長は目を見張るものがあったが、ラストツアーとなる宮瀬と最高の思い出を作りたいという願いも、その原動力の一つになっていたことは間違いない。そうした思いとリンクする楽曲の「シャンプーの匂いがした」が、美しく切ない春の香りとなって会場に満ちた。最後には、ステージに一人になった宮瀬に向けてメンバーカラーのピンクが客席いっぱいに広がり、満開の桜のように包み込む景色が感動を呼んだ。

写真提供:ソニー・ミュージックレーベルズ

 アンコールの「ナナニジ!」コールも復活し、会場が一体感に揺れる。デビュー曲「僕は存在していなかった」は、歌われるたびに彼女たちの成長を物語るが、両手の平を合わせて作った花を高く空へと突き上げていく様は春の嵐に巻き起こる花吹雪のごとく力強い。そして、そこから少し自信を持って踏み出したかのような「ポニーテールは振り向かせない」へと、青春のきらめきで魅了したのだった。

 「私は自分の気持ちを言葉にして伝えるのが得意ではなく、いつも悩んでいます。でもナナニジのライブ、そして何かを演じるときには、自分の気持ちを乗せて表現することが楽しいと思えるようになっていきました。そんな大切な場所であるライブで各地を巡らせていただいて、たくさんの方に来ていただけて、すごくうれしかったです」と、ツアーを振り返る宮瀬。「みなさんと築いてきたこの6年半、このメンバーと共にやってきたことが私の誇りです。本当にありがとうございました」という飾らない言葉が、大きな拍手で讃えられた。

 5月25日には本公演と同じ会場にて「宮瀬玲奈 卒業コンサート」が開催される。別れを語るにはまだ早すぎるとでも言わんばかりに、流れ始めるラストナンバー「タチツテトパワー」のイントロ。宮瀬が「みんな行くぞー!」と鼓舞し、会場一体となって「タチツテト!」と叫ぶ。13人は、自身と望月のメンバーフラッグ2本を両手に、この日一番の笑顔でフィナーレを迎えたのだった。

 FC限定ライブ配信では、メンバー一人ひとりの感想が語られ、限定曲のパフォーマンスも披露されている。涙をあふれさせたメンバーの姿もツアーの完走を実感させた。だが、22/7のパレードは終わらない。これまで以上に多くの人を笑顔にしながら、希望とともに進むだろう。5月17日発売予定の11thシングルへの期待はふくらむばかりだ。【文章:キツカワトモ】

セットリスト

【「ナナニジスプリングパレード2023」】

■昼公演

Overture - spring parade ver.-
1.君はMoon
2.空を飛んでみよう
3.空のエメラルド
4.ソフトクリーム落としちゃった/気の抜けたサイダー
5.君は誰だ?/晴れた日のベンチ
6.交換条件/蛍光灯再生計画
7.最後のピアノ/22/7 白組
8.ハレロ/22/7 紅組
Interlude - hurray hurray -
9.神様だって決められない
10.謎の力
11.Just here and now
12.地下鉄抵抗主義
13.命の続き
14.曇り空の向こうは晴れている
15.シャンプーの匂いがした
Encore
En1.僕は存在していなかった
En2.ポニーテールは振り向かせない
En3.タチツテトパワー

■夜公演

Overture - spring parade ver.-

1.循環バス
2.Rain of lies
3.ヒヤシンス
4.To goでよろしく!/晴れた日のベンチ
5.カントリーガール/気の抜けたサイダー
6.タトゥー・ラブ/蛍光灯再生計画
7.最後のピアノ/22/7 白組
8.ハレロ/22/7 紅組
Interlude - hurray hurray -
9.神様だって決められない
10.謎の力
11.Just here and now
12.地下鉄抵抗主義
13.命の続き
14.曇り空の向こうは晴れている
15.シャンプーの匂いがした
Encore
En1.僕は存在していなかった
En2.ポニーテールは振り向かせない
En3.タチツテトパワー

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