SixTONESが2023年1月4日、ニューアルバム『声』をリリースする。本作はヒットシングル「共鳴」「わたし」「Good Luck!」「ふたり」に加え、YouTube限定発表で話題を呼んだ「PARTY PEOPLE」など、13曲の共通収録曲に加え、形態ごとのボーナストラックを含めた全形態合計21曲を収録。SixTONESの今の“声”をダイレクトに聴くことができる3rdアルバムだ。ここではアルバム『声』各曲をピックアップし、音楽面にフォーカスしつつSixTONESの今に迫りたい。

多彩な音楽性を積み重ねるSixTONES

『声』初回盤Aジャケ写

 SixTONES は2020年1月に「Imitation Rain」で衝撃デビューを飾り、2021年1月に1stアルバム『1ST』、2022年1月に2ndアルバム『CITY』、2023年1月に3rdアルバムとなる本作と、一定スパンでアルバムリリースを重ね、着々とグループとしての成長を遂げている。

 これまでの作品で彼らは様々な音楽的要素の中で表現してきた。ポップ、ロック、ダンス、HIP HOP、ブラックミュージック、EDM、バラード、アコースティック、80’sリバイバル、近代的エレクトロミュージック、チルと、あらゆるサウンドに対応し、それら全てをグループの血肉とし、SixTONESとしての音楽を積み重ねてきた軌跡がある。

 最新シングル「Good Luck!/ふたり」では、真逆のカラーの各曲をストレートに示し、「様々な音楽性を歌ってきたからこそ光る王道のアプローチ」という点を感じさせてくれた。

 アルバム『声』は、前述した多様な音楽性も含みつつ、さらに色彩豊かに景色が広がるボリューミーな内容。ここでは、各楽曲から今のSixTONESの音楽的魅力に迫っていきたい。

『声』に音楽的角度で迫る

『声』初回盤Bジャケ写

 1曲目「Overture -VOICE-」から期待を裏切らない導入で、本編への期待の念が高まる。昨今、配信やサブスクリプションでのリスニングが以前より増えたこともあり、「アルバム1曲目特有の存在感」に着目することが少なくなったかもしれない。

 そんな中、“Overture”という幕開けの役割を担うトラックが一発目に置かれると、アルバムをじっくりと頭から最後まで聴き、作品に没入する深みが増すとも言えるのではないだろうか。

 「Overture –VOICE-」からグッと引きつけ、アッパーチューン「Boom-Pow-Wow!」で一気にテンションを上げる流れをみせる。<Wow Wow Wow>というシンガロングを誘うバースや<天井ぶち破るShout>という詞などから、SixTONESとオーディエンスの合唱やパワフルなライブの想像をかき立てさせてくれる。

 そして<声上げろ>、<声あげな Say>という部分などからは、「新たな未来へ進もうというメッセージなのではないか?」など、様々な意味合いを抱いているのではないかという憶測も立てられる。

 アルバム導入から数分で温められ、淀みなく「Good Luck!」へと進む。この時点で、アルバムを通してのリスニング特有の高揚感が得られるのではないだろうか。

 そして、ソリッドなクラブサウンドの「Outrageous」へ。2曲ハイテンポが連なったところでミドルテンポを挟む。正確には、高速ビートの半分の速度と、速いセクションが交差するという楽曲構成。テンポも、鋭いシンセサイザーのサウンドも、各メンバーのボーカルも、かなり攻めているトラックだ。オープニングからの流れを汲みつつ、こういったアグレッシブな楽曲を4曲目にセットするのは、アルバムの流れと勢いを感じさせる重要なポイントと言えよう。

 続く「ふたり」でゆったりと一服の清涼感を味わいつつ、『声』の世界観の深い部分へアクセスできる。そして、バラード開けというある種の難しさも伴う次の場面で飛び込んでくるのは「共鳴」。ジャジーなイントロで空気を一変させつつも、本作の時間軸においての展開を提示するようで「ここから新たな部だ」とも感じられる。「アルバムを通して聴いて、今のSixTONESを楽しんでほしい」という想いが丁寧に込められていると感じることもできる。

 少なくとも、そういったビジョン込みで聴いていると、「次はどんな曲が来るか?」と、傑作小説の山場で次のページをめくる瞬間のようなドキドキ感が得られるのである。

アルバムならではの濃密な世界観

『声』通常盤ジャケ写

 事前に発表されている情報が少なく、その全貌が謎に包まれたままの7曲目「人人人」を経て、続く「Risky」では特徴的な電子音が散りばめられるサウンドの中、新たなSixTONESの表情を見せてくれる。一聴するとシンプルな全体像ではない楽曲構成かもしれないが、だからこそ、何度かリピートしたくなるような、なんとも後を引くユニークなトラックだ。こういった楽曲が1曲あるか無いかでは、アルバムの完成度に対して相当な影響を及ぼすだろう。

 攻め気味のあとに、落ち着く楽曲を。立て続けにガンガン来る構成も楽しめるが、ここでは「Chillin’ with you」という、正にチルな楽曲でリラックスさせてくれる。優しい歌声と豊かな低音域パートとのバランスは音像的に特に注目のポイントだ。「夜、1曲だけ聴いて落ち着きたい」という時にはうってつけのチルアウトとなるかもしれない。

 そして、気持ちをほぐすように刺激してくれる「SUBWAY DREAMS」がゆっくり微笑むように響きわたる。メインボーカル、コーラス、ラップと、SixTONESの様々な“声”が重なり、歌詞に寄り添う歌が、<信じて my life 目的地へ向かおう>という詞が、軽快なサウンドと明朗なボーカルと共に希望の光を照らしてくれるようだ。

 アルバムも後半。「もうひとつ、ギラッとした曲が聴きたい」というタイミングで「PARTY PEOPLE」が思い切り攻め込んでくる。この曲は何と言ってもSixTONESのエネルギッシュなボーカルの炸裂、加えて、サビ以外でループするキャッチーなギターリフ&ベースラインが肝だろう。SixTONESの熱気に背中を押されつつ、思う存分パーティー気分にさせてくれる。

 『声』13曲の共通収録曲の終盤は「わたし」、「Always」で締めくくられる。「わたし」では、SixTONESの色気を十分に受け取れるバラードボーカル、そして、ただのバラードではないと感じさせてくれるHIP HOPビートのテイストと荘厳なストリングスとピアノの組み合わせが絶妙だ。

 前曲「わたし」のフィーリングを引き継ぐ導入から始まる「Always」はアルバムラスト(共通収録曲において)にふさわしく、壮大に歌い上げるSixTONESの歌唱と様々な弦の音色が何色もの輝きをみせる。<信じる力にまた陽は昇る>というフレーズが健やかでポジティブな後味をもたらしてくれる。

 SixTONESの今の“声”が収められた本作。サウンドも曲調もカラフルでありながら“SixTONESらしさ”を感じさせるのは、彼らの声、歌、発する言葉の力、積み重ねてきた多種多様の音楽性、そして、グループとしての存在感と言えよう。

 オープニングチューンから始まり、各リード曲があり、アルバム楽曲特有の個性を持った楽曲があり、実験的なトラックも収録され、アーティスト色をディープに表す場面もあり、リスナー各々にとっての“隠れた名曲”を見つける楽しみがあり、ラストは物語の幕を閉じるかのように締めくくられる。

 本作『声』は、音楽アルバムというパッケージならではの魅力を提示すると共に、「アルバムで浸るSixTONESの音楽」という濃密な世界に誘ってくれるだろう。【文=平吉賢治】

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