majikoの2年ぶりとなるメジャー3枚目のオリジナルアルバム『愛編む』のリリースを記念したスタジオライブのパフォーマンス映像が、11月26日20時にプレミア公開された。

 収録ライブという形での公開となり、画面の前で待機していたファンの目に最初に飛び込んでくるのは、ニューアルバムのリード曲「Princess」の冒頭をイントロ無しで訥々と歌い始めるmajikoの姿。やがて、180°LED装備のスタジオの全貌が明らかとなり、バンドメンバーの姿も見えた。

 襟の高いフォーマルで上品なシャツに蜘蛛の巣を想起させる赤いロープを張り巡らせた黒のジャケットを羽織ったmajikoは、女郎蜘蛛が次々と獲物を捕らえていくミュージックビデオを図形化したようなアブストラクトな映像を前に透徹したファルセットや美しいハイトーンと激しいシャウトを織り交ぜながら、純粋さと狂気が行き交うラブストーリーをダイナミックに表現していく。揺れ幅の大きいヴォーカルに圧倒されていたのも束の間、majikoは、ニューアルバムがリリースされたことを告げ、「ヤッホー!!」と少し気の抜けた喜びの声を上げて、画面越しの観客を脱力させた。

 リリースされたばかりのニューアルバムに関して、「大好きな曲だらけになりました」と語った彼女は、最新作の新曲を次々と披露。画面に俯瞰から撮影された渋谷のスクランブル交差点が映し出されたアーバンR&B「交差点」では、メロウソウルのグルーヴのなかで、時にアンニュイなため息を吐き、時に愛を渇望してシャウトし、バンドメンバーが光るアイグラスをかけた「FANTASY」ではエレクトロとバンドサウンドを融合させながら、ユニークなダンスも飛び出した。画面が暗転している間にジャケットを脱いだ彼女は、明転すると、10月28日の誕生日にたくさんの「おめでとう」を送ってくれたファンに向けて感謝の気持ちを述べた。

スタジオライブの模様

 そして、「節目の歳になったんですけど、子供の頃に思い描いていた人間とはかなりかけ離れた人間になっていると思います。もし今、全世界の人間が一本ずつリコーダーを持たなければいけない法が可決されたとしたら、私はまた好きな人のリコーダーを舐めてると思います。次の曲はそんな曲です」と語り、全くそんな曲ではなく、さらに言えば、リコーダーではなく、ピアニカの調べが印象的なピアノバラード「時空小箱」へ。その歌声でノスタルジックな原風景を引き連れてきた彼女は、画面に向かって紙ヒコーキを飛ばし、歌詞のフレーズを体現。フィルムで撮影された白黒映画のような余韻を残したかと思えば、青春の疾走感に溢れたポップロック「ジャンプ」では一転して、アニメのようなカラフルな映像が踊り、majikoもジャンプを繰り返して、爽やかで勢いのある歌声で演奏を牽引した。

 最後に、「短い時間でしたが、新曲を歌えてとてもよかったです。楽しかったです」と話したmajikoは、2018年にリリースしたメジャー1stアルバム『寂しい人が一番偉いんだ』のリード曲で、ボカロPのカンザキイオリが提供した「エミリーと15の約束」をエモーショナルに絶唱。画面に母から娘へと向けられた約束が1つずつ記されていく中で、majikoは何度も<会いたいよ>と繰り返し、真っ白い光が彼女に集まったとこで、手を振って別れを告げた。ミクスチャーロックから始まり、ソウル、テクノ、バラード、ポップロック、そして、彼女の原点でもあるネットカルチャーへの回帰と多彩なジャンルを横断する才能と立体的な表現力を存分に見せつけたライブだった。

 最後のMCでmajikoは「会いに行きます。久しぶりの方は、久しぶりと言いにきてください」と語り、12月18日(日)に控える浅草花劇場でのワンマンライブのチケットがソールドアウトしたことを伝え、2023年4月からスタートする東名阪ツアーの開催にも触れていた。majikoのヴォーカリストとしての凄みすら感じる圧巻のパフォーマンスを生で体感したいと強く感じたのは、この新感覚ライブで感動に胸を打たれた筆者だけではないはずだ。【永堀アツオ】

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