INTERVIEW

山田杏奈×奥平大兼

「共演が楽しみだった」山田杏奈×奥平大兼が見せる化学反応:ドラマ『早朝始発の殺風景』でW主演


記者:木村武雄

写真:冨田味我

掲載:22年11月18日

読了時間:約7分

 山田杏奈と奥平大兼が『WOWOWオリジナルドラマ 早朝始発の殺風景』(放送・配信中)でW主演を務めている。青崎有吾氏による同名短編集が原作。クラスメイトの殺風景(山田)と加藤木(奥平)が通り魔事件の真相を追っていく物語を軸に、日常の風景が一瞬にして変化した高校生たちの“5つ”の密室会話劇を描く。今年デビュー10年目で、圧倒的な存在感と演技力で魅了する山田杏奈はドラマ『未来への10カウント』での女子ボクシング部員での好演も記憶に新しい。一方の奥平は映画『MOTHER マザー』でデビュー以降、話題作への出演が続き目覚ましい活躍を見せる。「共演が楽しみだった」と声を揃える2人は今回が初共演。現場で対峙した時に何を感じたのか。【取材=木村武雄/撮影=冨田味我】

人物像

W主演を務める奥平大兼、山田杏奈(WOWOW)

 ◆殺風景(さっぷうけい)/演・山田杏奈
 寡黙でクラスメイトと慣れ親しまず、一見何を考えているのか分からない謎めいた人物。だが、内に秘めたある想いが殺風景を突き動かし、加藤木だけがその一面を目撃する。

 ◆加藤木(かとうぎ)/演・奥平大兼
 映画研究部の部長であり、至って“普通”の学生。いつも友人たちに囲まれ、そつのない学生生活を送っていたが、早朝始発電車で殺風景と遭遇し、本当の自分を見抜かれる。

楽しみだった共演

――共演が決まった時の率直な心境とお互いの印象は?

奥平大兼 山田さんは共演したいと思っていたのですごく嬉しかったですし、どういうお芝居をされるんだろうと楽しみでした。

山田杏奈 『MOTHER マザー』や『恋する母たち』を拝見していて、お芝居が素敵だなと思っていましたので、決まった時は「あの作品の方だ!」と一緒にお芝居できることを嬉しく感じました。私はお芝居を見てその人がどういう方なのかは決め込まないので、お会いした時に大人っぽくて驚きました(笑)。

――奥平さんはこれまでの作品でも役作りはせず、現場で感じたことを体現していくと話されていますが、今回はどうでしたか?

奥平大兼 自分のなかに殺風景の印象はありましたが、それとは違ったものがくるだろうとは思っていました。現場で僕がどう感じていたのかはあまり覚えていないんですけど、加藤木の会話や繋げ方、セリフの間、仕草は間違いなく山田さん演じる殺風景を見て生まれたものだと思います。実際に映像で見える加藤木は、特に2人でのシーンは多少なりとも殺風景のフィルターを通して見えるものだと思っていて、特に序盤はそれが大きく影響していると思います。殺風景の目のおかげで加藤木はできたと思います。

山田杏奈 きょう初めて役を作って来ないと聞いてとても驚きました。私は自由に楽しくやらせて頂いたんですけど(笑)、奥平さんのお芝居はすごく柔らかいなと思っていて、ちゃんと会話している感じがあってとても楽しかったです。それは奥平さんの力だなと思いました。

山田杏奈

山田杏奈

奥平大兼

対峙して

――山田さんの魅力は「目」と「内にこもる心情の表現力」、奥平さんは「真っすぐさ」だと思っていますが、現場でより引き出されたものはなんですか?

奥平大兼 最初にある電車内のシーンで殺風景が僕を疑っている時の目がすごく印象に残っています。見透かされているのか、それともただ見ているだけなのか、どういう思いで見ているのかが感じ取れなくて。でもそれって加藤木にとっては一番焦る事だと思うんです。それを引き出してくれたのはあの目だったとすごく感じています。

山田杏奈 すごく嬉しい!

――殺風景は鋭い目や疑うような目と表情をしていますが、最後の方になると和らいでいるように見えます。それは意識して?

山田杏奈 たぶんお芝居の流れでそうなったんだと思います。目は特に意識していなくてお芝居によっても感じ方や捉え方は微妙に変わってくるのかなと思います。でも嬉しいです。奥平さんはすごく素直に反応してくれて、殺風景としても加藤木をコロコロと転がすのが面白くて楽しいなって(笑)。それは2人の関係性にも反映されたと思います。

――奥平さんのまっすぐさは魅力的ですが、役者として受けるとなった時に力量が試されて怖さも感じるのではないかと。

山田杏奈 今回の役としては、そのまっすぐさをまっすぐに殺風景が受け止めていましたので怖さは感じませんでした。でも確かに役や作品によっては怖く感じることがあるかもしれません。だから今度はそのまっすぐさをまっすぐに受け止められない役でご一緒したいと思いました。

――逆に奥平さんは山田さんとの共演で刺激になったことは?

奥平大兼 役としての落ち着き具合というか、それはそもそも殺風景が持っているキャラクター性かもしれないんですけど、そういう落ち着きは僕にはないものなのですごいと思いました。僕はよく男女関係なく役を自分が演じたらどうなるんだろうと考えていて、この前、別の作品で監督面談があって「こういう役はどうか」という話をしている時に「僕、お母さんの役がいいです」と言ったんです。それぐらい男女関係なく、役に対して自分だったらどうだろうと考えるのが好きで、殺風景ももし僕がやったらどうだろうと。山田さんが体現されたあの目や、落ち着き具合というのは間違いなく僕にはないものだと思うので、絶対に変わるだろうなと。やっぱりあの殺風景は僕には表現できなくて。それはいろんな役者さんに言えることだと思いますが、そうした僕にはないものはすごく刺激になりますし、それこそ山田さんが持っている武器だと思います。すごく魅力的でした。

山田杏奈

山田杏奈

奥平大兼

奥平大兼

会話劇、読み合わせで…

――会話劇ともあって苦労した点は?

奥平大兼 長回しも結構ありましたし、現場で変わることもあったんですけど、撮影前に読み合わせがあって、セリフをちゃんと覚えているかという確認みたいな場でした(笑)。

山田杏奈 そうそう!セリフを覚えているかという会だったよね(笑)

奥平大兼 僕にとっては「ちゃんと覚えられている!」という精神安定剤みたいな機会で(笑)

山田杏奈 私も!ありがたかった!現場ではわりとスムーズにいけたよね?

奥平大兼 僕自身は長セリフや説明のようなもの、普段使わない言葉もあったので少し不安もありましたが、順調に行けたと思います!

――監督から言われたことで印象に残っているものは?

山田杏奈 台本は「加藤木」となっているんですけど、監督に「かとぅーぎ」って言ってみようかって(笑)。それが良いスパイスになっていて面白く、素敵だなって思いました(笑)

奥平大兼 この物語においては、殺風景と加藤木の関係性がどうなのかが明確になっていないんですけど、監督からは殺風景のことを加藤木がどう考えているのかは意識して欲しいと言われました。好きなのか友達として助けたいのか明確に描かれていないんですけど、自分のなかではそういう意識を持った方がいいなと思いました。

山田杏奈

山田杏奈

奥平大兼

奥平大兼

なんでも受け止めてくれた

――ところで山田さんは『未来への10カウント』で、奥平さんの事務所の先輩でもある山本千尋さんとボクシングの名勝負を繰り広げましたが、山本さんが絶賛されていました。

山田杏奈 いやいや、山本さんの方が素晴らしかったです。私は全然運動はできないんですけど、山本さんがなんでも受け止めて下さったのであそこまで全力で臨むことができました。

――山田さんご自身、あの作品でもう一皮むけたような気もします。

山田杏奈 それは周りの方の力が大きいと思います。あの作品は人に助けてもらってなんとかやれていましたので、ボクシング指導の松浦(慎一郎)さんもそうですし、部員の方がいてこそだと思います。

山田杏奈×奥平大兼

山田杏奈×奥平大兼

全力で甘えたい

――そして、奥平さんはきょう19歳の誕生日(9月20日)を迎えて。意気込みを!

奥平大兼 子供として扱って頂くのはラストの年だと思うので、全力で甘えたいです(笑)。いろんな人に子供の特権を使いたいです!(笑)。

山田杏奈 子供の特権って?(笑)

奥平大兼 ミスしても許される…(笑)

山田杏奈 あはは!

冨田味我

山田杏奈×奥平大兼

(おわり)

山田杏奈
・スタイリング:中井彩乃
・ヘアメイク:菅長ふみ
奥平大兼
・スタイリング:伊藤省吾(sitor)
・ヘアメイク:速水昭仁

「WOWOWオリジナルドラマ 早朝始発の殺風景」(全6話)
11月4日(金)午後11:30放送・配信スタート
WOWOWプライムにて毎週金曜 午後11:30~放送
WOWOWオンデマンドでは、
11/4(金)の放送終了後に第4話まで、12/2(金)の放送終了後に最終話まで一挙配信

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山田杏奈
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