PERSONZが10月8・9日、東京・大手町三井ホールで『PERSONZ THE BEST : GREATEST SONGS_ ver.03/』を開催した。結成38年、オリジナルメンバー4人で今なお意欲的に活動を続けるPERSONZ。2016年からは、彼らの往年の名盤を最新の状態に更新する“RELOAD PROJECT”に取り組み、この2月には2ndアルバム『MODERN BOOGIE』をアップデートして東京・大阪公演を開催。また、今年7月と9月には、歴史的な建築物にてアコースティックなアプローチを試みる<ARE YOU EXPERIENCED?>公演も行っている。2021年からは<PERSONZ THE BEST : GREATEST SONGS>と題したライブもスタートさせた彼らだが、そのシリーズ3回目となる<GREATEST SONGS_ ver.03/>が10月8・9日の2DAYS、東京・大手町三井ホールにて開催された。今回のライブはサブタイトルに“DO YOU REMEMBER?”とあるように、懐かしい楽曲を散りばめながら、2022年のPERSONZの集大成を楽しめるライブ構成。会場ホワイエには過去ポスターやメンバーの衣装などが展示され、当時のライブ告知フライヤー復刻版が配布されるなど、古くからのファンにはたまらない貴重なアイテムが並ぶ。そんな<GREATEST SONGS_ ver.03/>から、2日目・10/9の模様をレポする。

 クイーンの「God Save The Queen」やセックス・ピストルズの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」など開演前BGMが流れ、期待感が高まる中、SEとともにメンバーが登場。JILLはキラキラ輝く紫色の王冠をかぶり、黒いスパンコールのミニドレス。オープニングナンバーは5thアルバム『PRECIOUS?』(90年発表)から「PRECIOUS LOVE」だ。間奏でJILLは両手を交互に挙げて観客とコミュニケーション。その勢いのまま演奏されたのは「REMEMBER」、1stアルバム収録の初期曲だが、♪リメンバー、想い出してよ あの日のこと♪という歌詞が今回のライブテーマに通じるようで興味深い。キレのいいギターといい、JILLの艶のあるハイトーンといい、35年前にこの曲を初めて聴いた時に感じたパッションと全く躍動感が変わっていないのには驚く。

 「ネオアコースティックのツアーではメドレーで久々にやった曲なんですけど、良いメロディーなんですよ。本田さん(がライブで演奏するの)も初めてだし、アレンジが良いので、こうやって(拳を挙げて)ノってください」とJILLが曲を紹介し、8thアルバム『砂の薔薇』から「悲しみの天使」を。一緒に口ずさみたくなるようなキャッチーな歌メロが印象的な良曲だ。ギターソロは、リズミカルなカッティングが心地よい前半とゆったりメロディアスな後半、タイプの違うスタイルで楽しませてくれる。ダンサブルなグルーヴが魅力の「SPECIAL SPARKLIN' HEARTS」では、ストイックに刻むベースがクール。間奏では攻めのベースソロも展開された。

(撮影=アンザイミキ)

 空気感が変わったのは中盤の3曲で、どこか憂いの色を持つミディアムスローが披露された。「私は浅草生まれで、隅田川を見ながら育ちました。皆さんにもそんな川があるんじゃないかと思います。人生をそんな川に喩えて…」と紹介された「RIVER」では、JILLがアコギを弾きながら歌唱。また、JILLが三日月のオブジェを手に持って歌った「月の輝く夜に」も、ロマンティックな中に切なさが漂うナンバー。そして、「PERSONZのメイン路線ではないけど、こういう世界もございます。MVを鶯谷の東京キネマ倶楽部で撮影したものの未発表だったんですけど、先日(YouTubeに)アップしたので見てください」と紹介された「MIRRORBALL」では、JILLが映画「キャバレー」の踊り子を彷彿させるラメ帽子をかぶり、感情を秘めた抑えた唄い方で、儚く刹那的な恋物語を表現した。

 本編後半は、アップテンポのナンバーを3曲続けて。「自分は愛されてないんじゃないか、なんて絶対に思っちゃいけない。絶対愛してくれてる人がいる、そういう気持ちを書きたかった曲です」と紹介した「誰かがあなたを愛してる」。ビートがハネる「PRIVATE REVOLUTION」 では、藤田がサステインの短いシンバル連打を繰り出し、オーディエンスもジャンプで応える。そして、仕上げは2020年にリリースされた最新シングル曲「I AM THE BEST」。コロナ禍がいちばん大変な時期に制作された楽曲だが、そんな状況を撥ね返すほどポジティブなメッセージに満ちたナンバーで、常に今がベスト!とリスナーを鼓舞してくれる、勇気満載の軽快なポップロックチューンだ。ベイ・シティ・ローラーズやラモーンズを思わせるキメのリズム“B,B,B,EST,B,EST,GO!”という全員参加型のキラーフレーズでは観客も手拍子で一体に。アッパーな3曲を一気にたたみ込み、華やかな熱気の中、本編は終了した。

 アンコールでは、濃いピンクのスパンコール衣装に着替えたJILLが、メンバーにライブでの思い出やエピソードを質問。「昔は40本のツアーとかしんどいと思ってたけど、今はあんなにツアーできたらなと思いますね」(藤田)、「今は一回一回のライブを大事にしたいと思っていて、そのために体調管理を考えてます」(本田)、「今回ミート&グリートがあるんですけど、皆さん良いことを言ってくれるんですよ。ファンの人と話すと気持ちが洗われます。初心に帰れるというか」(渡邉)と、それぞれの言葉でライブを大事に思っていることを伝えた。JILLが黒い変形ギター(ワッシュバーンのボール・スタンレー・モデル)を持ち、パンクスピリットとアバンギャルドなサウンドを炸裂させた「MODERN BOOGIE」。そして、ステージの照明も観客が手に持ったサイリウムも七色に輝く中、レインボーカラーに照らされてハッピーオーラ全開で演奏された「7 COLORS」と、アンコールは2曲。

(撮影=アンザイミキ)

 2度目のアンコールは、JILLが1990年の横浜アリーナ公演で着用した金色の襟飾りがついた黒い衣装で登場。 「40周年に向けてPERSONZは色々と練っております。幼い頃の夢を実現させていくまで…」と話し、スポットライトを浴びながらアカペラで「HALLELUJAH」を歌い上げた。そしてその流れのまま「GOD BLESS YOUR LOVE」へと繋げていく。ドラマティックなこの曲での演奏は見事としか言いようがなく、特に曲後半の熱量は素晴らしかった。声量も音域も伸びやかさも目を見張るほどのクオリティーを誇るボーカル、圧倒的な存在感を放ちつつ絶妙に歌と絡むギター。これぞロックバンドの一つの理想郷とも言えるライブならではのカタルシスに包まれたひとときだった。

 オーラスは、J-ROCK史に残るであろう名曲「Dear Friends」。シンプルかつメロディアスなAメロから、サビでの爆発ポイントと開放感。音源でもライブでも強みを発揮する、PERSONZらしさが凝縮された完成度の高い楽曲を堪能し、誰もが笑顔になっていたのは言うまでもない。1st〜6thアルバムからの楽曲をメインに、最新作である21stアルバムからの楽曲まで、計16曲。90年代のロックシーンを彩る名曲も押さえつつ、2022年の今だからこそメッセージ性を放つ曲たちも散りばめ、1本のライブとしての起伏や物語も感じさせる見応えのあるライブであった。

 「PERSONZの曲は300曲くらいありますけど、全曲やったら何日かかるでしょうか。舞台みたいに2週間連続とかでやってみたいですね。私たちは自分たちの曲を今すごく大切にしていて、“RELOAD PROJECT”もあるし、やっていないアルバムツアーもあるし。40周年に向けてそういうアプローチもしていきたい。いろいろな夢の欠片がありますけど、実現させていきたいですね。この4人でライブをやり続けていきたいと思います。“まだやってんのよ!”っていう底力を世界に見せていきたい」というJILLの言葉が、「私たちも止まってる暇なんてない」とファンの心にも火を付けたのではないだろうか。PERSONZは、11月に“RELOAD”バージョン『MODERN BOOGIE』をリリース、11〜12月には大阪と横浜のBillboard LIVE公演も決定している。彼らの夢はまだまだ続いていくのだ。(文:舟見佳子)

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