代替物としてのオルタナティブロック、再生されたパンクロック

 「他の誰かになりたがることは、自分らしさの無駄遣いだ」(カートコバーン)

 1990年代、不毛で飼いならされた80年代の音楽界への反動、代替物としてアメリカでオルタナティブ・ロックムーブメントが発生した。ここでも軸になっているのが、否定、破壊、構築である。

 ニルヴァーナ、レッド・ホッド・チリペッパーズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、パールジャム、スマッシング・パンプキンズ、ソニックユース、ナインイチネイルズ、ジェーンズ・アディクション、ダイナソーJr.、サウンド・ガーデン、アリス・イン・チェインズ、R.E.M.、フレイミングリップス、ベック、ペイブメントetc…

 やはり、パンクに影響されているバンドは多い。いや、パンクの基本理念に忠実なバンドが多いといったほうが正解かもしれない。音楽自体はパンクはもとより、ファンク、ヒップホップ、ハードロック、ノイズミュージック、はたまた、テクノまでの影響を感じることができる。

 オルタナティブ・ロックとカテゴライズされていても、その音楽性は異なるバンドやアーティストばかりである。言い方を変えれば、自分に忠実に、自由に表現された音楽の集合体で構築されたのが、オルタナティブ・ロックである。

 いわば、パンクロックの再生であり、実にまともなパンクの再来であった。

 しかし、パンクらしくと言っては都合が良すぎるが、このムーブメントも瞬間最大風速で通り過ぎ、ニルヴァーナのカートコバーンの自らの否定と破壊によって構築を不可能にしてしまい、実質的な終焉を迎えた。

自らの手で快楽性を求めたパンク精神

 オルタナティブムーブメントと同時期に、イギリスでは若者たちの間で、
セカンド・サマー・オブ・ラブといわれる、ダンスミュージックムーブメントが起きていた。

 アシッド・ハウスというダンス・ミュージックが主流で、レイブパーティーを主とした、快楽性を第一に求めたムーブメントである。

 この快楽性を求めたレイブ・パーティーは、ロックやメインストリームの商業的な組織によるものではなく、非商業的な参加者の人々による、自分たちによる自分たちのための手作りのパーティーであった。

 いわゆる、D.I.Y精神であり、自分自身に忠実なパンク精神の表れである。音楽にしても、DJやアーティストが商業性のためではなく、自分たちが快楽を求めるための方法として存在していた。パンクの理念としては、実に的を得ているであろう。

 当然のことながら、ロック分野と比べれば、先鋭性は電子機器を使ったこちらの方に分があるのは、否定のしようがない。現に昨今では、パンク理念の強いアーティストは、エレクトロミュージックに傾倒していったケースが多いように思う。

パンクが作り上げた、現代の形

 オルタナティブ・ムーブメントとダンスミュージック・ムーブメントが、パンクの延長だと仮定した場合。2015年現在の音楽シーンは、やはりパンクが作り上げた現代の形と認めざるおえない。

 今でこそ、ロックにダンスミュージックを取り込んだジャンルは、認知され存在しているし、パンク理念からしたら、何となにが融合しようが知ったこっちゃないだろうが、どんな方法論でも自分に忠実であることが大前提である。

 パンクのもつ影響力、普遍性というのは強力なものだと思う。これからの世界がどう変わっていくのかは、誰も分かりはしないことだが、パンクが登場してから、約40年たった今でも、人々の生活、または人生にとって根底ではパンクの影響を受けていて、普遍であると認めざる終えない事実がある。

 時代、姿、形を変えても、本質的にはパンクが息づいているのである。

 「パンクとは自分自身に忠実であることだ。ファッションじゃない。"アナーキー"ってのはそもそも思考の自由を象徴してるんだ」(ジョニーロットン)

 Anarchy in the yourself alwaysである。(´・ω・`)  【文・ふうたろう】

 ◆セックス・ピストルズ 1970年代のイギリスを代表するパンクロックバンド。
ヒット曲に「アナーキー・イン・ザ・U.K.」などがあり攻撃的な歌詞やサウンドが特徴的。日本でも彼らに影響を受けたバンドが多々ある。

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