INTERVIEW

東山紀之

満身創痍の役どころも「抵抗はなかったですよ。50歳を越えて『なんでもやるぞ!』って」


記者:編集部

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掲載:22年07月12日

読了時間:約5分

 東山紀之が、Amazon Originalドラマ『GAME OF SPY』で主演を務めている。法務省外局・公安調査庁に設置された極秘スパイ機関の諜報員を演じる。配信ドラマ初主演作で超弩級の激しいアクションに挑戦。アクション練習中に骨折するなどまさに危険と隣り合わせのなかで挑んだ。そんな満身創痍の姿にも「抵抗はなかったですよ。50歳を越えて『なんでもやるぞ!』という気持ちになっています(笑)。観ている方を良い意味で裏切りたいです」。【取材=木村武雄】

体が動くうちに

 世界中の犯罪者からターゲットにされる日本を舞台に、依頼が入ると冷静かつ迅速に任務を遂行する極秘スパイ機関「GOS=Global Operation Service」の諜報員が、人知れずこの国を守るため奮闘する姿を描く。

 演じる羽柴猛は「GOS」のチームリーダーで、これまで幾度となく国家存亡の危機を影ながら回避させてきた日本屈指の諜報員。戦闘能力が高く、軍隊格闘カリ・シラットと「殺陣」を融合させた独自の格闘スタイルで相手を次々と倒していく。

 「羽柴は、多くを語らず率先して行動するんだけど、行き当たりばったりで意外と何も考えていないキャラクターが面白いと思いました。僕が今まで演じてきたなかでも掴みどころのない雰囲気を持った役で、それがかえって新鮮で。地上波と比べ制約がないなかで役を楽しみながら自由にやらせて頂きました」

 羽柴は、灼熱や高所、極寒など過酷な場所を好む性格で、目を離すとすぐ危険なところにいる一風変わったスパイ。東山はこれまで、数々のアクションシーンをこなしてきたが、本作ではそれを更に上回り、肉体の限界に挑んだ。

 「体が動くうちに1回はやっておきたかった、ということだったんだろうと思います。でもやってみたら『意外と動くぞ!』って、思っていたよりも動いて良かったです(笑)。ずっとボクシングをやってきたのが良かったみたいです。キックボクシングもいつか役に立つのではないかと思っていたけど、実を結びました。コツコツやってきて良かったです」

相棒・香月を演じた小澤征悦

抵抗はなかった

 なかでも目を奪われるのがビジュアル。火の粉が飛ぶ中、血だらけの東山が正面をまっすぐ見据える。何かを背負った孤高の男を彷彿とさせるが、東山と言えばスマートな印象が強いだけに鼻からも血が流れる満身創痍の姿は衝撃的だ。

 「全然抵抗はなかったですよ。喜んでやっていました(笑)。50歳を越えて『なんでもやるぞ!』という気持ちになっています(笑)。観ている方を良い意味で裏切りたいと思って。彼自身、無敵ではないですしね。登場して何をするかと思ったら、いきなり殴られて鼻血を出して。でも結果的に勝つ。そんなキャラクターですから」

 現在55歳の東山。年齢は彼自身の意識に変化をもたらしているのか。

 「そんなに変わっていないです。でも『楽しもう』というのは、今の方が強いかもしれないです。この役で遊ぼうみたいな。何をやったら面白いのかをずっと考えていて、昔だったら『こんな事ないんじゃない?』と言っていただろうことも今は現場の勢いのなかで『面白かったらどんどんやろう!』となっています」

 エンターテイナーとしての本能に突き動かされたともいえるが、実際のアクションシーンはハードを極めた。

 「あるシーンで市場を貸し切って深夜2時まで撮影していた時はみんなゾーンに入っていて面白かったです。ずっと人を殴っていましたからね。途中からアクション部も僕らも何をしてもゲラゲラ笑い出す極限状態になっていました」

練習中に骨折

 そう笑いながら振り返るが、アクションシーンの練習で東山は骨折した。

 「一本ポキっと綺麗に折れました。撮影が延びてご迷惑をかけましたけど、このことで学ぶことは多かったです。ちゃんとガードしないといけないんだなと思いましたし、衣装もそのことをきっかけに逆算で作られていきました。靴もブーツにしてもらって、身を守りながらちゃんとできる方法を探れたのでそういう意味ではこの骨折一本安かったですね(笑)」

 そのポジティブさも、記者の想像を超える。船上でのアクションにも挑んだ。

 「勝浦の海でやりました。風が強すぎて1回中止になったんです。船が揺れるのでみんな立っていられませんし、セットは飛んじゃうし。だったら港でやらなきゃいいじゃないかって一瞬思いましたけど、景色とかも含めてここでやる意味がありました。空間の縛りはあるのでやりづらさはありますが、その中でやれることをみなさん考えて下さいました」

 激しい銃撃戦や戦闘シーン。その激しさは衣装が物語っている。

 「この作品で衣装は5着ぐらい用意したんですけど、とにかく水の中に入ったり引っ張られたりいろいろしたので、よくもってくれたなと思います。水の中に入ってアクションするのは大変で、水を吸って80キロくらいになるんです。だから乾かしたり穴を縫ったり衣装さんはメンテナンスが大変だっただろうなって」

GOSの紅一点、檜山を演じたローレン・サイ

東山が捉えるシーンの現在

 本作で期待するのは、海外に負けず劣らずのスケール感だ。近年はアジア映画の台頭も目覚ましいが、配信によってよりグローバルになってきている昨今、東山はどう捉えているのか。

 「もともと日本の文化は素晴らしかったので、それが世界に回ってグローバルになってきた感覚です。『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞で国際長編映画賞を獲って、邦画が強い弱いではなく、どう表現するかというのが大事になってくるなと思っています。言語などを通り越していろんなものにいくんじゃないかなと。エンターテイメントとして、良いものを表現すれば色んな人の心に刺さるんじゃないかなと思うので、売れる売れないは別にしても、そういうものを大事にしたいと思いました。文化が世界的に盛り上がればそれでいいんじゃないかなと思うし、それこそ差別をなくすということに繋がるんじゃないかなって。みんな同じラインでいろんな作品が並ぶのかなと思います。でももっと気楽に観て欲しいですね。観た人が面白かったなって癒しの時間になってくれれば。嫌なことが吹っ飛ぶ、忘れられるとか、そのくらいがいいのかなと思います」

活動の原動力

 そんな東山は、役者だけでなく、ナレーターや報道キャスターなど活動の幅は広い。まさにエンターテイナーとして想像を超える活躍を見せているが、活動の原動力になっているものは何か。

 「いろんな方に会えて、いろんな空間でいろんなことができるので、それを楽しむということです。現場現場でそれぞれのチームの人たちにポリシーがあって、哲学も違うので面白いんですよ。いろんなところに行けるのが楽しい。それが原動力です。報道に携わる人たちはどうやって伝えるのか、スピード感を大事にしていますし、こういう作品はアクションでどう表現するのか、時代劇なら関わる世代も違いますし。ナレーションはその方の人生がより消化される感覚もあって。やっていくと新鮮ですね。そういうのが蓄積されて役に反映されるのかなと思います」

 そうした人々との出会い、情報の接触がエンターテイナー・東山紀之をより厚くさせていく。

 「報道を通して、世の中で何が起こっているのかを知るということが、周り巡って役作りに繋がっていると思います」

(おわり)

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