(撮影:引地信彦)

 東山紀之が主演、谷原章介が共演、宮本亞門が演出の舞台『チョコレートドーナツ』(PARCO劇場ほか)が20日初日を迎えた。今月7日に開幕する予定だったが、公演関係者に新型コロナ感染が確認されたため、延期となっていた。

 舞台は1979年のウェスト・ハリウッド。ゲイの男性が育児放棄された障がいを持つ子供を育てたという実話に着想を得て製作された映画『チョコレートドーナツ(原題:ANY DAY NOW)』は、社会的マイノリティが直面する問題を告発しつつ、愛と自由を求める人間の本質を描いている。

 この映画を、世界で初めて、東山紀之主演、宮本亞門演出で舞台化。東山紀之が演じるのは、シンガーを夢見ながら、ショーパブの口パク・ダンサーとして日銭を稼ぐルディ。出口の見えない生活の中、ルディの人生は、運命の人ポール、隣室のダウン症のある少年マルコと出逢うことで変わっていく。映画ではトニー賞受賞俳優アラン・カミングが演じたこの主人公に、東山紀之がその魅惑のダンス、唄、演技で挑む。

 そしてルディと共に少年マルコを育てようと、世間と闘う検察官ポールを演じるのは谷原章介。ゲイのカップルであるルディとポールが悩み、迷いつつ、手を組んで世の中に立ち向かっていく。またダウン症のある少年マルコ役として、実際にダウン症のある高橋永と丹下開登がダブルキャストで出演、高畑淳子ほか多彩な俳優陣が共演する。

 開演前に先立ち来場者に感謝を伝えるため挨拶に立った演出の宮本亜門は、初日が延期なってからの今日まで、キャスト・スタッフが混沌としていたものの、この状況の中でも劇場に足を運んだ観客がいることに、唯一の希望にして頑張ってきたと話していた。また、療養中の二人は回復に向かっていることも伝えられた。

 カーテンコールは始めから総立ち。会場が割れんばかりの拍手が鳴りやまず、東山紀之、谷原章介をはじめとする出演者は、客席に向けて深々と礼をした後、笑顔で手を振り、観客へ感謝を伝えた。

妃海風(モニカ)&高橋(マルコ)&谷原(ポール)(撮影:引地信彦)

宮本亞門(演出):コメント

 こんなに観客の皆様と舞台が一つになった初日は、はじめてです。カーテンコールの熱い拍手はボクの人生でも聞いたことがなく「世界の誰もが幸せになるべきだ」というメッセージが皆様に伝わったのだと思います。正に、このコロナ禍で「分断」を越えた感動が劇場に充ち溢れる、最高に幸せな時間でした。特にマルコ役を演じた丹下開登君の芝居にはノックアウト、凄い役者がまた1人生まれました。東山紀之さんもルディ役が乗り移り見事としかいいようがない!2人は愛おしすぎる親子でした。明日の永君もきっと素晴らしい演技を見せてくれると思います。このカンパニー全員が一丸となって作った愛情溢れる舞台を、ぜひ世界中の人に観てもらいたいと、心から思った初日でした。

東山紀之:コメント

 これまで経験した初日とは全く違った想いがありました。世界がコロナで変わってしまった今、僕らつくる側だけでなく、お客様の「エンターテインメントの灯を絶やしちゃいけない」という想いも強く感じられました。初日というのは人の心に灯をともすような感じがします。これが大きな灯になって聖火のようになってくれるといいと思います。オリンピックにつながるように。

谷原章介:コメント

 無事に初日を迎えられてホッとしたと同時に、僕たちが積み重ねてきたことが、きちんとお客様に届いて嬉しかったです。まだ、カンパニーの中で復帰していないメンバーもおりますが、早く全員一丸となって少しでも楽しいステージを届けられるよう頑張りたいと思います。

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