今年2月12日に行われ、PassCode史上No.1ライブと評された日本武道館公演のBlu-ray&DVDの発売が、ついに来週へと迫ったPassCode。発売に先駆け、彼女たちがこの公演に向けて駆け抜けた日々を綴ったドキュメンタリーのティザー映像が 24日18時に解禁、公式YouTubeで公開された。

 今回の映像は、6月29日に発売されるLive DVD&Blu-ray『PassCode NIPPON BUDOKAN 2022』のDISC.2に収録されたもの。武道館公演に至るまでの4人の姿を追った2時間を越える長編ドキュメンタリーで、ほかでは見ることのできない彼女たちの姿を収めた豪華映像に仕上がっている。もちろん、本編となるDISC.1には記念すべき日本武道館公演の全容をノーカット収録されている。

 また6月21日行われた私立恵比寿中学との対バンが実現したイベント「VERSUS PASSCODE」のライブレポートも公開。

【ライブレポート】

 PassCodeが毎年不定期に開催するイベント「VERSUS PASSCODE」は、その名のとおり、彼女たちが対バンしたいと思うバンドやグループに声をかけ、バチバチの2マンライブを繰り広げるというもの。昨年はMY FIRST STORY、THE ORAL CIGARETTES、もっと遡るとBAND-MAIDとステージをともにしたこともあった。これまではバンドを誘うことが多かったが、今回は初めてアイドルグループ私立恵比寿中学(以下、エビ中)が登場。元々、PassCodeの南菜生とエビ中の真山りかと星名美怜はプライベートで仲がよく、南から2人に「エビ中に声かけたら出てくれる?」と打診したところ、2人は快諾。しかし当時、真山はよくある社交辞令かと思っていたらしい。それをしないのが南という人間だ。すぐさまスタッフ陣に話をとおし、エビ中サイドへ正式オファー。その結果、6月21日に豊洲PITにて開催の運びとなった。両者の友情から生まれた1日なのである。

 しかし、大きな枠でくくれば同じアイドルとはいえ、2組のサウンドの方向性はまったく違う。いったいどんな2マンになるのか誰も想像がつかなかった。まずステージに立ったのはエビ中の9人。1曲目「売れたいエモーション!」のイントロが聞こえてきた瞬間に場内に低音のきいたどよめきが起こった。そりゃあそうだろう。誰もこんなインディーズ時代の楽曲でオープニングを迎えることは予想していなかった。敢えて「これこそがエビ中だ」と言わんばかりの曲をぶつけてきたのは最高の一手だった。「一緒に踊るよー! 恥ずかしがらず踊ってみようよー!」と真山はPassCodeのファンを意識してフロアへ呼びかける。実はこのとき、PA卓付近からステージを見守っていたPassCode大上陽奈子は感極まって涙を流していた。大上は元々エビ中のファンで、オーディションで彼女たちの曲を歌ったり、CDのお渡し会に参加したりしていたらしい。南、真山、星名の友情とは別に、大上には大上なりのエビ中とのヒストリーがあるのだ。

 「YELL」が終わると、ショートMCで「かわいいエビ中を見てほしいな」と柏木。その発言のとおり、「ラブリースマイリーベイビー」「仮契約のシンデレラ」「イヤフォン・ライオット」と続いていくのだが、これが壮大なフリだったことにこのときはまだ誰も気づいていなかった。

 それにしても場内の熱気がすごい。タイトルコールだけで声にならない唸りが響き、ライブが進むにつれてその音量は大きくなっていく。エビ中の単独ライブでも経験したことのないような雰囲気だ。これぞ2マン。

 エビ中は昨年5月に3人の新メンバーが加入し、現在9人体制初の全国ツアーを行っている最中。それを観ていてもわかるのだが、桜木心菜、小久保柚乃、風見和香の成長ぶりがすごい。歌、ダンスともにかなり実力をつけてきていることがわかる。「かわいい」のプライドを見せつけながら、踊りはダイナミックに、歌は力強く。長年にわたってアイドルシーンのトップを走り続ける実力派グループとして遺憾なくその実力を発揮していく。

私立恵比寿中学

 パフォーマンスの雰囲気が変化していったのは、MCで「うちらアイドルってかわいいじゃん?」とさすがにちょっと不自然に感じるぐらい「かわいい」を押し出した直後から。最新作『私立恵比寿中学』収録の「シュガーグレーズ」でまず頭にクエッションマークが浮かぶ。なぜならこれはどちらかというと、かわいいというよりもPassCodeのサウンドに近いエッジの立ったエレクトロな楽曲だからだ。レーザーが場内を貫き、曲が激しく展開し、「これのどこがアイドルなんだ……?」という疑問が強くなっていき、それがバチンと弾けたのは「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX」のピアノイントロが鳴った瞬間。あの場にいたエビ中ファンは全員が熱狂しながらこのあとに予想される展開が思い浮かんだことだろう。実にアイドルらしい、エビ中らしい新旧の楽曲を披露したあとに、グループを代表するハードチューンを立て続けに投入してきたのである。Pay money To my PainのギタリストPABLOが手掛けた「PANDORA」では星名のハイトーンボーカルが鋭く鼓膜を突き刺し、元ヌンチャク溝口和紀による「イート・ザ・大目玉」ではお姉さんメンバー6人が豪快なハーモニーを聴かせ、TOTALFATのJoseが詞曲を提供した「HOT UP!!!」では、「頭のネジはずせー!」と柏木が叫んだ。会場の音響のせいなのか、いつも以上に低音が体に響く。それは暴力的ですらあった。

 そして、最後に届けたのは近年のエビ中を代表する名曲「ジャンプ」だった。曲のエンディングで繰り返される<もう一度愛を込めて>というフレーズは、歌詞本来の意味合いと異なるとはわかっているものの、このあとに控えているPassCodeの4人へ向けたバトンのように感じられた。素晴らしいセットリストに素晴らしいパフォーマンス。私立恵比寿中学はPassCodeの誠意に全力で応えたのだ。

私立恵比寿中学

 エビ中の圧倒的なステージのあとに登場したのは、本公演の主催者PassCode。もちろん、バンドセットでのパフォーマンスである。南の「VERSUS PASSCODE、はじめます」という挨拶とともに披露したのは「Ray」。これはPassCodeを代表する名曲であり、以前南がパーソナリティを務めるラジオ番組に真山と星名が出演したときに、星名が好きだと話していた曲だ。ちなみに、真山のお気に入り「Anything New」はライブ終盤にパフォーマンス。これはセットリストを組んでいる南からの感謝の印とも言える。

PassCode

 PassCodeきっての美メロを響かせたあとは、まさかの「Club Kids Never Die」が投入。これはPassCode初期の激アゲチューンで最もフロアが湧く楽曲のひとつだが、近年は披露する機会があまり多くない。思いがけないタイミングでこのイントロが鳴った瞬間、この日最も大きな興奮と驚きのうねりが生み出された。実はこの楽曲、シャウトを主に担当する有馬えみりは本来の歌詞を変えてこう叫んでいた。<エビコード! エビコード!><PassCode from Universal Music!>。前者は本公演の通称としてファンの間で定着していたもの。そして、後者は先だってエビ中が披露した「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX」に登場する<SMEのエビ中です>という歌詞にリスペクトを示したもの。有馬はアドリブでこんな言葉を忍ばせていたのである。

 その後、4人は立て続けに「FLAVOR OF BLUE」をかます。徐々に激しさを増すサウンドに、さっきまでペンライトを掲げていた観客が力強く拳を突き上げた。「(エビ中から)最高のバトンを受け取ったので、いいゴールまで持っていきたいと思います。手伝ってくれますか?」というショートMCのあと、最新曲「Freely」や「Seize Approaching BRAND NEW ERA」と続けていくのだが、このあたりで気づいたのは、この日だけのセットリストを用意したエビ中に対し、PassCodeはいつもどおりの自分たちを貫いたということ。もっとポップ寄りなものを予想した人もいたかもしれないが、相手が誰だからといって大きく内容は変えない。いつもの自分たちを見せるのがPassCodeにとっての礼儀であり、プライドだと考えていたのかもしれない。エビ中に対する溢れるような思いを彼女たちはこんなふうに表現したのである。

 それが顕著だったのは、まだタイトルがついていない新曲をプレイしたこと。PassCodeファンですら観たことのある人が少ない曲をやったというのは、自分たちの今を見てほしいという思いにほかならない。メジャーコードの響きが雄大な空を思い起こさせるこの曲は、ラストのサビで転調が2度繰り返されるというPassCodeにとって初の試みが魅力的。まだ回数は多くないが、やるたびに完成度が高くなっている。初見の人が多かったはずなのに、最後には盛大なクラップが起こった。

PassCode

 2月に武道館公演を成功させたばかりのPassCodeは、長い活動歴のなかで今が最も注目を集めている時期。今年はROCK IN JAPAN FESTIVALへの初出演も決定し、勢いに乗っている。ラストの「It’s you」前にも南が話していたが、約7年前に某アイドルフェスにおいてPassCodeが横浜アリーナの通路に作られた小さなステージに立っていたときにエビ中はメインステージで喝采を浴びていた。それがいま、こうして同じステージに立っている。最強のアイドルグループと対バンができるところまで這い上がってきた。エビ中のライブはフロアにいた全員をぶっ飛ばすような圧倒的なパワーに満ちていたが、PassCodeもそれに負けじと食らいついている。昨年、PassCodeはメンバーが体調不良によって勇退。それによって一時期は解散を考えるぐらい追い込まれていたが、あのとき止まることを選んでいたらこんなステージを引き寄せることはできなかった。続けてきたから、可能性はゼロにならなかった。

 終盤は、「Shedding tears」「Anything New」「It’s you」というメロディアスな楽曲群で攻めたのだが、エビ中の名曲たちを浴びたからなのか、いつも以上に旋律の輝きを感じるパフォーマンスだった。大ハンドクラップが湧き上がるなか、この日何度目になるかわからない「本当にいい対バンだ」という言葉が頭に浮かぶ。最後に披露した、「It’s you」にはこれまでとはまた違う感動があった。

 すべてのパフォーマンスを終えたあと、再びエビ中のメンバーをステージに迎えて記念撮影(21時を過ぎていたため風見は不在)。ジャンルを問わず、こんなにバチバチで、かつ温かい対バンはなかなか味わえない。今後、PassCodeは8月から全国のゼップを含む全7公演のツアーを開催、エビ中は7月からスタートする対バンツアーと、8月6日と7日に山中湖交流プラザきららシアターひびきにて行う夏恒例の野外ワンマンライブ「ファミえん2022in山中湖」に臨む。

 エビ中の面々がステージを去ったあと、南から感想を求められた高嶋楓が叫んだ「楽しかった!」というあまりにシンプルなひと言は、これ以上の表現が必要ないぐらい心から同意できる感想だった。それぐらい素晴らしい夜だったのだ。2組の関係はこれで終わることはないだろう。またいつか、何年後でもいいから、再びステージで相見える瞬間に立ち会いたい。

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