INTERVIEW

大谷亮平×品川ヒロシ

調理シーンは「アクション」:『異世界居酒屋「のぶ」Season2』


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:22年06月10日

読了時間:約8分

 大谷亮平が主演、武田玲奈がヒロインを務める『WOWOWオリジナルドラマ 異世界居酒屋「のぶ」Season2~魔女と大司教編~』。異世界につながってしまった居酒屋を舞台に、庶民的な居酒屋料理やお酒を通じて繰り広げられる温かな人間ドラマが描かれる。『Season1』の好評を受けての続編で、魔女のような女性・イングリドの存在が物語の鍵を握る。居酒屋「のぶ」を切り盛りする料理人で「大将」の矢澤信之を演じる大谷亮平、そして、脚本も手掛けた品川ヒロシ監督に撮影の裏側、そして「勝負めし」を聞いた。【取材・撮影=木村武雄】

スケールが大きくなった

――続編ということでどういうことを意識して脚本を書かれたのでしょうか。

品川ヒロシ 原作は、シーズン1と比べて政治的な要素が多く加わっているんです。小説なら自分のペースで読めると思うけど、中世ヨーロッパの世界観と政治の話をドラマのスピードにした時に、視聴者がついてこれないんじゃないかと。短い時間に詰め込むのもすごく難しいですし。なので視聴者が離れないように、キャラクターたちのユーモアさや料理、アクションなどをまさに味付けしました。それによって物語の重要な部分である政治的要素を入れて推し進めることができたんです。それとキャストの皆さんがすごく魅力的で、シーズン1よりも要素が増えさらに面白くなっていると思います。

――大谷さんはどう感じましたか?

大谷亮平 スケール感が大きくなって、自分が愛情を注いだ居酒屋や異世界のセットがとんでもないことになっているなと思いました(笑)。居酒屋の外で起きている問題の大小は、「のぶ」の店主である矢澤信之にはあまり関係ないことだけど、目の前に起こっていることなのでどうしてもその世界に入るしかなくて。巻き込まれた感がすごいなと思いました(笑)。でもそれって観ている方と近い意識というか、非常にドキドキワクワクしながら観て頂けると思うんです。それと常連客との距離感や武田さん演じるしのぶとのやり取りがシーズン1の時以上にコミカルになっているので、大将というキャラクターが更に愛してもらえるんじゃないかと、すごく楽しみです。

――約2年ぶりに再会してお互いの印象はいかがでしたか? 過去に品川監督は大谷さんの印象を「料理人そのまま」と話されていましたが。

品川ヒロシ 大谷さんはすごく面白い人なんだなって思いました(笑)。シーズン1の時はまだ「ちょっとくだけた人」というぐらいだったんですけど、シーズン2で「本当に面白い人なんだ」と確信して(笑)。大将という役柄としてもシーズン2の方が大谷さんが持っているユーモラスな一面を乗せられたんじゃないかと思います。異世界居酒屋「のぶ」を作るチームになれたと僕自身は思っています。

――シーズン1で品川監督は、裏ではまかないとかも作っていたそうですね。

品川ヒロシ シーズン1の時はよく作ってましたね(笑)

大谷亮平 僕の品川さんに対する印象はシーズン1を撮っている時も感じたことなんですが、シーズン2を撮るまでの2年間は、バラエティ番組に出られている品川さんを観ていて、その時は芸人さんの顔に戻られているんですね。でもシーズン2の撮影が始まると現場では監督の顔になっていて、キャスト全員にものすごく愛情をもって接してくれる。出番が多い少ないに関係なく気を配られて「参加してくれてありがとう」という気持ちを乗せてコミュニケーションしてくれて。バラエティ番組の時の鋭い品川さんとは違いますね(笑)

品川ヒロシ ちょっとバラエティの品川の印象が悪いみたいですけど…(笑)。

大谷亮平 たぶん皆さんが持たれているイメージだと思いますよ(笑)。

品川ヒロシ 勝手に皆さんのイメージを決めないで下さい(笑)

大谷亮平 バラエティで毒を吐かれるイメージとは180度違います。だからスタッフの方を含め皆さん品川さんに付いていくんだろうなって。すごく大好きな監督です。

大谷亮平×品川ヒロシ

「人間味」

――続編での大将に対する演出など何か要望を出されたのでしょうか?

品川ヒロシ シーズン1の時に演出は結構しました。特に調理シーンは、僕の中ではアクションシーンだと思って撮っているので、かっこよくしたいとシーズン1からずっと話してきました。なので、シーズン2で新たに付けたとすれば「人間味」です。例えば、料理に対する迷いや、常連客との距離感がより近くなったこともそう、そういうことを大谷さんと話して付け加えました。

大谷亮平 キャラクターの軸や大事にしないといけない部分はシーズン1の時にガッツリ言ってもらったので、常連客との距離感や中世ヨーロッパのような異世界と繋がってしまいそこで居酒屋を営むことへの気持ちの変化をしっかり持っていたら、意図的に何かを変えなくても自然に対応できるだろうと思いました。距離感が縮まったことでの常連客とのフランクさや、新しい客が入ってきて何か問題が起きても、根底にそれがあるからリアクションも自然と出てくるだろうと。シーズン1の延長の気持ちでその場にいることを大事にしました。

印象に残っているシーン

――撮影の中で印象に残っているエピソードはありますか?

品川ヒロシ イングリド(演・水野美紀)の登場シーンとロドリーゴ(演・松尾諭)のビールを飲むシーン、そしてアルヌ(演・浅香航大)のアクションシーンです。イングリドの登場シーンは、馬蹄宿通りという中世ヨーロッパのような街角にランタンを持ってイングリドが現れるというところです。一見魔女のように見える人の登場シーンなので、イングリドを見て「魔女?」と思わせる説得力のある画作りをしたいとみんなで話し合って作り込みました。かなりかっこいい魔女の登場シーンになったと思います。ロドリーゴのシーンは、台本には一言も書いていなけど、ロドリーゴが生のジョッキを飲むスピードが異常に速いんです。本当にギュってやったらビュッてなくなるんです。あれには驚きました(笑)。そしてアルヌはとにかくかっこいい!

大谷亮平 大きな見どころは品川さんがおっしゃったところです。シーズン1より2の時の方が現場で思わず笑ってしまってNGとなったところが多くて。キャストの緊張感もシーズン1と比べ良い意味でほぐれてきたというのもあるかもしれないんですけど。水野さんもちょいちょい吹き出していたので(笑)。シーズン1より思わず笑っちゃうシーンが散りばめられていて、それでいてシリアスな部分はすごくシリアスで、心温まるエピソードも多い。現場で品川さんが思い付いたとある動きや、とあるセリフがあって、それをキャストみんなも楽しみながらやったというところが見どころだと思います。

美味しかったメニュー

――いろんな料理が登場しますが、その中でも美味しかったというメニューは?

品川ヒロシ アジフライです。アジフライが忘れられなくなっちゃって。僕、定食屋でアジフライは頼んだことなかったんです。それが、ドラマの撮影用にとんでもなく美味しそうなアジが手に入りまして、揚げて、先帝陛下(コンラート四世、演・大和田伸也)が手で食べるんですけど、バリッという音がとんでもなくうまそうでたまらなくなっちゃって。アジフライの編集のとき、食べたくて食べたくて辛くなっちゃって。そしたらランチの時にたまたま近所にアジフライの美味しい店があって、アジフライってこんなに美味いんだって。あっ天ぷらもうまそうだったなぁ~カキフライも~(笑)

大谷亮平 今回コロナの影響もあって、撮影中につまみ食いできなかったんですよ。普段だったらカットかかったら皆でちょっといただいたりして「これうまいね」というのがあったんですけど。でも強いて言うなら僕はローレンツ(演・庄司智春)が食べていた天ぷらですね。あの場で揚げて出しているので、お店によっては出来たてだけど多少時間差があると思いますが、うちの現場は出来てすぐ食べられるので。

品川ヒロシ 僕たち料理が出来上がってから、「よーい、スタート!」までの時間に命をかけてるんですよ(笑)

大谷亮平 「熱っ!」ってNGがちょいちょいあったぐらいなので。出来たてに勝るものないなってこの現場で思い知らされました。

品川ヒロシ 出来立てのリアクションを撮りたいので、出来た瞬間にはもうカメラ回していて、「よーい。スタート!」くらいで「パン」って置かれる感じです。

勝負めし

――今回は戦いもあって英気を養う場所がこの「のぶ」だと思いますが、お2人は勝負メシみたいなのものはありますか?

大谷亮平 僕は焼肉です。作品に入る前や終わった後、中間もそうですけど、全部焼肉で始まり焼肉で終わるという感じです。焼肉はパワーがみなぎります(笑)。最近は油っこいものは食べられないんですけど、タンから始まって赤身にいって最後冷麺で締めるみたいな。みんなで「何食べに行く?」って言っても結局焼肉になっちゃう。好きなんでしょうね(笑)

品川ヒロシ 「のぶ」が終わって、ちょっとビーガンやってみようと思って、ビーガン生活しているんですよ。なので、お肉も牛乳も魚も一切摂らずに、野菜とご飯だけしか食べていないんですけど、あまりやりすぎると周りに対してノリ悪いじゃないですか。大谷さんが焼肉好きだって言ってるのに大谷さんとご飯食べに行って「俺ビーガンなので野菜だけ」とかって言ったらつまんない。だからルールとしては人と食べに行ったらその人の食べたいものを食べる。だけど一人でご飯を食べる時は野菜にしているんです。出された弁当もお肉が入っていたら品川だけ特別にサラダにしなきゃいけないとか、現場を混乱させるようなことはしたくないので食べるんですけど。太りたくなかったので前はお肉は食べて炭水化物を抜くだったんですけど、それだと頭が回らなくなっちゃったりして。なので今は、米はたくさん食べていいと。糖質が脳みその栄養になっているので頭は疲れないというか。だから米ですね。おしんことご飯。おじいちゃんみたいですけど(笑)

――お肉を食べないと闘争心が減るという話も聞いたことがあります。

品川ヒロシ 俺は闘争心がないぐらいがちょうどいいと思う。自分のやりたい部分に向かってやるというのはありますけど、50歳で闘争心がめちゃくちゃある俺ってやばくないですか(笑)だからない方がちょうどいいんです(笑)

大谷亮平×品川ヒロシ

(おわり)

<大谷亮平>
ヘアメイク:MIZUHO(VITAMINS)
スタイリスト:伊藤省吾(sitor)/Shogo Ito(sitor)

<品川ヒロシ>
ヘアメイク:hm CIair
スタイリスト:渡邊浩司/hiroshi watanabe

『WOWOWオリジナルドラマ 異世界居酒屋「のぶ」Season2~魔女と大司教編~』
放送・配信日時:5月27日(金)午後11:00放送・配信スタート(全10話)
【放送】毎週金曜 午後11:00[第一話無料放送]【WOWOWプライム】【WOWOW4K】
【配信】各月の初回放送終了後、同月放送分を一挙配信[無料トライアル実施中] 【WOWOWオンデマンド】

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木村武雄

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