INTERVIEW

山口まゆ

役を生きるために 『コウノドリ』の頃に始めた自作の“アナザーストーリー”


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:22年05月10日

読了時間:約10分

 女優・山口まゆ(21)が、短編集映画『3つのとりこ』の一篇『それは、ただの終わり』に出演。東京で失踪した恋人・臣を、その母親・衣舞と奇妙なやり取りを繰り広げながら探していく女性・みどりを演じている。ドラマ『コウノドリ』で未成年の妊婦という難役を演じ切って話題を集めた。以降、ドラマや映画など話題作への出演が続き、活躍は目覚ましい。今春放送のドラマ『未来への10カウント』にも出演中だ。小媒体が取材を行ったのは18歳の頃。映画『下忍 赤い影』という作品だった。演じることが好きで人の行動を観察するのが日課とも語っていた彼女はこの3年、どう過ごしてきたのか。役者としても更に磨きがかかった彼女が『それは、ただの終わり』で挑んだ会話劇ともいえる芝居にどう向き合ったのか。【取材・撮影=木村武雄】

3年での変化

――この3年どのように過ごしてきましたか。

 当時は大学に入ったばかりの頃でした。1年の時は大学で過ごせていたんですけど、その後、コロナ禍になって、大学には行けずリモートになり、家にいる時間が多くなりました。普通の大学生活を送れていたらどんな感じだったのかなって思う所もありますが、この3年はあっという間で、自分の事をよく考えるようになりましたし、改めて先は見えないものだと実感して、「今」を中心に考えるようになっています。

――役者としてはいかがですか?

 ありがたいことにお仕事は以前と同じように頂いていましたので、ストレスはなかったです。コロナ禍で『樹海村』という大きい映画に出演させて頂きましたが、これまでホラー映画に出演したことがなくて、いろんな筋肉を使うというか、見せるお芝居というのに苦労して、いろんなことを学びました。

――大きく見せるということでは舞台にも通じる気がしますね。

 例えば、内心はすごく驚いたり、怖がっていたり、感動していても、顔には出ないときがあると思うんです。他者からしたらどう感じているのか分からないというか。でもホラー映画の場合は怖いという表現を顔でもしないといけないので、そういうのが難しかったです。悲鳴でも、怖すぎて悲鳴になっていない悲鳴だったり。ホラー映画を見て勉強しました。

――その後、三吉彩花さんが監督を務めた『inside you』にも出演されました。三吉さんに起用理由を聞きましたら「お芝居が繊細だったから」と称えていました。オーディションはどんな感じだったんですか。

 三吉さんの前でナレーションをするというオーディションでしたので、すごく緊張しました。昔、N響のステージで谷川俊太郎さんの詩を朗読させて頂いたことがありました。(※2016年4月、NHK交響楽団定期公演、作曲家・武満徹氏の名作『ファミリー・トゥリー』)そうした経験もあり、『inside you』の内容も自分にも少し分かるような感じでしたので、感じたことをそのままやってみました。繊細と言われるとは思ってもいませんでしたのですごく嬉しいです。

山口まゆ

芝居の意識は手先にも

――その3年前のインタビューで「人に興味があって、いろんな人を見てます」と話されていましたが。

 今もやっています。無意識にやってることが多いんですけど、今日も電車に乗っていて、前に若い男性2人いたんですけど、ちょっとヤンキーみたいな方で、ずっとフラフラしているんです。なんでこんなに重心がないんだろうと思いながらも、もしヤンキーの役を演じる時がきたら活かそうと思いました(笑)

――そうした感じで実際に活かされたことはありますか。

 その都度、思い出して演じています。特に手遊びしている人は気になりますし、邦画とかドラマを観たときには「このお芝居上手だな」とか、無意識にやっている手の仕草をお芝居で表現されている時は「すごいな」って気になります。

――そういう手の仕草は結構自由なんですか。

 自由ですし、始めて演技するときはどうしても手が棒になってしまって。最近はそのクセを自分でつけながらやっていますが、オンエアを観て、ちょっと強すぎるなと感じることもあります。

――三吉さんが言っていたのはそういうところなのかもしれないですね。感情の機微をちゃんと表現されようとしているとか。

 それはすごく意識しています。役としてイライラや不満を感じるシーンで、携帯電話を投げたくなったりとか。そういうのは台本に書かれていませんが、やることもあります。携帯を置くというお芝居でも、この流れだと私なら投げるだろうなと思って。

役の背景を作る

――他紙の記事では、役について感じたことを日記にしていると。

 携帯電話のメモ帳に役の気持ちを書くことがあります。『コウノドリ』ぐらいから付け始めました。そのシーンまでの流れが台本に描かれてないことが多いので、気づいたときにメモにつけておくと、ちょっと変わってくるというか、この子だったらこう思うよなと思えるんです。

――『コウノドリ』は中学生の妊婦という役もあって特にそういうのがないと難しいですよね。

 出産シーンの撮影前日に「こんな感じだよ」とお母さんに教えてもらったり、関連した映像を見てました。彼と出会ってそうなるまでのことをメモに書いて。当日も朝から病院まで行く彼女の道のりみたいな気持ちも綴りました。そういう準備というか、気持ちを作っておくための前段階を書いたりしています。

――自分なりのストーリーみたいな。

 特に泣きの芝居は難しいので、なるべくそういうのを作っておくと、安心材料にもなります。現場では緊張して、本番では涙が引っ込んでしまったり、準備しすぎてテストで流してしまうこともあって。でも作っておけば引っ張り出せるので、大事なシーンがあるときはそれまでの道のりを作り、あとは現場で感じ取ったことを受けてお芝居するようにしています。誰も教えてくれないので自分で見つけ出してやっていくしかないんですけど、果たしてこれが正しいのかと言われると分からないです。みんながどうやってやってるかも聞かないですし、人それぞれ違うと思うので。

――いろいろな作品を観ながらも自分なりの答えを探すために試行錯誤の連続なんですね。

 そうですね。作品を観ながら参考にしたり考えたりしています。

山口まゆ

理解できないまま

――そして今回の『それは、ただの終わり』ですが、みどりという人物をどう捉えて演じようとされましたか?

 今回もオーディションでしたが、その時は脚本が全く理解できずにお芝居しました。その日はすごく疲れていて絶対受からないだろうなと思っていたら、まさか受かったのでびっくりしました。その後、本読みをやりましたが、やっぱり分からなくて。監督にもいろいろお話をして、キャラクターが難しいみたいなことを言ったんですけど、脚本自体が普通とは違うようなものだったので、そのムズムズは残しつつ演じていきました。

――失踪した恋人の臣を探す物語ですが、その臣は劇中には登場しなくて、かつ配役もないなかで、涙を流したり感情をあらわにするのは難しかったのではないかと。

 みどりは、彼のことが心配でありながらも、自分で精一杯の人で、どんどん目的からずれてるような感じで演じていました。

――そのなかで、臣の母・衣舞を演じる黒沢あすかさんと対峙していかがでしたか。

 本読みの時にお会いしました。セリフ自体が、落ちたり上がったりと波があり、会話になっていないような…、彼女も私に対しての会話が成り立っていないですし、私も私に対して独り言なのか相手に向けているのかとか、そういうことがいっぱいありました。黒沢さんもキャラクターをしっかりと作っていらっしゃったので、私はそれを受け止めつつも、自分の予想を反したセリフを言うことが多かったです。素では出てこないというか、考えながらじゃないと出てこないようなセリフで、いつもと違うような感じで難しかったです。

――セリフの意味を理解して演じるのが一般的ですが、見当がつかなかったということですね。

 役として「どうだと思いますか」と質問しても返ってくるのが「はい」とか。質問に対しての答えが返ってこなかったり、投げかけたものが別の方向に行ったり。「うん?」となるようなセリフが多くて。果たしてこれは正しいのかなとか思いながらやっていました。確かに日常的に会話しているとそういう人いるよなと思いながらも。発している言葉とは違うことを考えることは確かに日常にもありますが、それを作品として作るとなった場合、役者への負担がすごく大きいなと思いました。

――演じている時も考えながら。

 私はずっと腑に落ちてなくて、役が落ちてないのか、セリフが落ちてないのか分からなかったんですけど、監督にちょっと分からないんですよねって言うことがいっぱいありました。何が分からないのかさえも分からなくなるような。なので完全にみどりちゃんはもう分からないでいいんじゃないかなと思って。

泣くシーンの裏側

――泣くシーンがありますが、あれは母・衣舞に理解してもらえないという悲しさと、自分自身がもう分からなくて感情が溢れたという感じですか?

 そうです。正直、臣くんのことなんてどうでもいいんですよ。目の前にいる人達をどうしても説得させたい。自分の思い通りにさせたいのにそうならない。子育てしてるお母さんと子供みたいな感じで、言っても聞いてくれないし、なんで分かってくれないんだろうという感じで、本来の目的を忘れてしまうみたいな、自分との戦いのような。みどりは礼儀が正しくていい家で育った子という設定だったんです。いい子だったら彼氏の親の前でため息なんてつかないですし、愛想もよくすると思うんです。それを監督に相談したら「そうだと思うんだけど、セリフはこうだから」って。じゃあどうすればいいんだろうと思って。彼女も切羽詰まってイライラして、もうそれどころじゃなくて自然とため息が出たのかなって。ギャラリーで放置される虚しさというか、話し合いしてるのにいなくなってしまったらそれで終わり。その悔しさとイライラで涙が出るみたいな感じでした。

――あの涙はそういう涙だったんですね。

 自分も最近は大人になってきて、思い通りに人は動かないということを学んで。それがあったからこそすごく気持ち悪かったんです。動かないのに動かそうと頑張っているみどりちゃんがかわいそうで。そこへの葛藤もありましたし、彼女は時間が経って周りが見えるようになったら、あの行動を振り返るんじゃないかなと。それほど切羽詰まって頭がパンクしてたのかなと思って演じていました。

役者同士の対決

――先ほど仕草の話がありましたが、この作品で特に意識した点はありますか?

 役を演じる時はどうしても自分自身が入るところはあるんですけど、本当にイライラしてる時って人の目は見れないんです。だからうつむいたり。目を見るのは難しくて。ドキドキもしますし。特に黒沢さんは目力がすごくて目を見るといろいろ引っ張られて。黒沢さんに限らず、引っ張られることを防ぐためにもあまり目を見ないようにしているんです。「見ない」ということを普段から無意識にやっているので、ちょっと嫌味を言うときは目を見ないとか、その辺りは気を付けました。

――確かにそうだったなという感じがしますね。この作品はドラマティックな展開がない上に、会話劇のように進んでいきます。役者の芝居力が試される作品だと思いますが、改めてこの作品はご自身にとってどういう体験になりましたか。

 お芝居は難しいと改めて感じましたし、果たしてこれがお客さんに伝わるのかという不安もあります。仕草や会話のテンポだけでその人物の人となりを出すのは難しいとも思いました。監督から「こうして下さい、ああして下さい」と言われることもなかったので、本当に役者・黒沢あすかさんと役者・山口まゆの対決みたいな感じでした。

――役者としてさらに磨かれたというか、これまで構築してきたものを全部出したみたいな感じはありますか。

 役者は今までの経験をいかに演技に反映させるかっていうことを学んだ気がします。どちらかと言えば、ここを直した方がいいと感じた経験でしたので、昔の自分を見ているかのような感じでゾワゾワもしました。

山口まゆ

蓄積していきたい

――『未来への10カウント』では役柄が16歳ですね。

 難しいです。今はもう高校生の時の思春期・反抗期というのを全部は出せないというか、あの感覚はもう思い出せないんです。体も覚えていないですし、周りもよく見えるようになりましたし。だから20歳の高校生だと思って下さい(笑)

――今を考えるようになったとも話していましたが、それでも何か描いてるものはありますか?

 私の周りが就活世代で将来に悩んでいるので、私も不安になってきて考えなきゃと思うんです。30歳になった時にいい仕事ができてるなって思えればいいかなと最近思ってきていて。人生を長い目で見た時に20代は頑張る時期なのかなとも考えていて、人間関係もそうですが、知識を得たり、いろんなことを蓄積していきたいです。

(おわり)

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木村武雄

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