古谷徹

 声優の古谷徹(68)、武内駿輔(24)、監督の安彦良和氏(74)が3月9日(ザクの日)、都内で『ザクの日スペシャル会見』に登壇。6月3日より全国ロードショーすることが決定した『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』のティザー映像、設定画などを公開し、映画化した理由など語った。

 1979年に放送されたガンダムの原点『機動戦士ガンダム』の第 15 話「ククルス・ドアンの島」。ガンダムとアムロの物語が、劇場版3部作でも描かれることのなかった伝説のエピソードと共に『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙』の劇場公開からおよそ40年の時を経て、映画化が決定。

 本作は、TVシリーズ『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイン・アニメーションディレクターであり、累計発行部数 1000万部を超えるヒット作『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を手掛けた安彦良和氏が監督を務め、名だたるスタッフが集結。6月3日より全国ロードショーすることが決定した。

 アニメの中の15話という話が映画化されることについて古谷は「驚きました。『え、なんでククルス・ドアン?』とまず思いました。アニメでは30分の話がどうやって2時間近い作品になるのだろうと。ファンの方にとっては話題となった素敵なストーリーの回で、それがいよいよ映画としてよりクオリティの高い作品になることにワクワクしました」。

 ククルス・ドアンを演じる武内は「親の影響で、70〜80年代の作品を見ていたこともあり、それがきっかけで声優になりたいなと思いました。ガンダムシリーズという歴史ある、生きる伝説のスタッフ陣の中に混ぜていただいて演技できることにプレッシャーもありましたが、強い感動もあり光栄だなと思いました」。

 「ククルス・ドアンの島」を映画化した経緯に安彦氏は、「偶然と必然が微妙に絡み合ってやろうと思った。(周りからは)神回と言われているけど、出来の悪い話なんです。パソコンで作画崩壊で検索するとククルスが出てくるのを最近知った。いわく因縁のある話が湧いて、サンライズの新旧2人の社長さんがたまたまいる中で(映画で)やりたいと話し、OKをもらった」と、映画化への経緯を語った。さらに、安彦氏は「これは15話のリメイクです。でも、全43話ある中の並びであるとは言っていません。この時系列は『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で変更しているので、この変更は必然的なことです。『THE ORIGIN』の中に位置付けるとは言いませんけど、時系列的には位置づけています。敢えて言うと15話より後のことだろうということで、15話の時点で登場しないスレッガー・ロウが入っています」と、明かした。

 この日発表されたティザービジュアルで、ザクがオリジナルでは持っていなかったヒートホークを持っていることについて、安彦氏は「(当時)武器を持っていなかったことに僕は最近まで気づいてなかった。『正拳突きと蹴りだけだった』と教えてくれたスタッフがいて、私が1stガンダムを観ていないことがバレてしまった」と苦笑い。

 ドアン役について武内は「劇場版ならではのドアンということで、今までのイメージを崩さないことが大前提した。自分なりのドアンとの向き合い方をして取り組みました」と役に臨む姿勢を語った。そして、ザクのフォルムが好きだと話、「最初、主演の1人とお聞きしていたので、『ついにガンダムに乗れるのか』と思ったけど、ザクだと聞いて、逆に“ザク乗り”という肩書きを背負って主人公の1人をやれるのはなかなかないので、俄然やる気が出たのを覚えています」と役をもらった当時を振り返った。

 古谷は40年前の現場について「当時のアフレコは全く覚えていません。40年の時を経て大スクリーンに戻ってくるのは感無量です。でも、また15歳のアムロを演じれるとは思いもしなかった」と、想いを述べた。

 安彦氏は「リメイクで20分の作品を伸ばすわけなんだけど、限りなくオリジナルを作っているという感覚があった。前に作ったオリジンは僕が描いたコミックの映像だったから、オリジナル、新作を作っているという感覚はなかった。今回は限りなくゼロから立ち上げる、新鮮で心地よく作業が出来ました」と振り返った。

 ここで、設定画を公開。その中で安彦氏はオリジナルで印象的な石を投げるザクについて言及。「石は投げなきゃダメですよと言われて、アニメを見直した」、投げているかどうかは映画を見てのお楽しみとのこと。

 ドアン役に武内を起用した理由に安彦氏は「声優さんを何人かピックアップして、その中で格段に若い武内さんがいた。そして、テレビ出演しているのを見ていいなと思い即決しました。あまりにも声が良かったから、キャラより若くてもいいだろうと思ったし、芝居も素晴らしい」と絶賛した。

 そして、古谷は15歳のアムロを演じることについて「やりにくさはなかったです。アムロを忘れたことは全くないですから。安彦監督がすごく丁寧に作ってくださって、アムロを活かして下さって、入りやすかったので自然に15歳のアムロになれました」。

 武内は「実年齢より高い役ということで年齢を埋める意識はした。1stを見返して、70年代に描かれていた大人像のイメージを崩さないようにして、現代版としてブラッシュアップしようと思った。当時よりもより青さとか洗練されている職人魂を感じるアムロがいたので、僕はそれを壊さないように前向きな面持ちで取り組みました。自分も40年後こういうふうになれたらいいなと思った」と。

 最後に3人がメッセージを送った。

 古谷は「40年ぶりに未熟で純粋なアムロ・レイがスクリーンに帰ってきます。僕が劇場版でアムロを演じるのはこれが最後になるかもしれません。生き生きと動いているアムロを僕の声とともに皆さんの記憶に留めておいて欲しいと思います。1stガンダムを観たことがある人は、随所に『あーっ!』と思うシーンや台詞があるので楽しんで欲しいですし、この作品が何を訴えているのか、是非考えて欲しいです」。
 
 武内は「ガンダムの予備知識がない方でも、楽しんでいただける内容になっています。うっと言わしてくれる演出が盛り沢山です。なぜ、このタイミングでこの作品が映画化されたのか、それは映画を見れば伝わると思います」。

 安彦氏は「僕にとってガンダムというのは1stガンダムしかないです。引退とは言いませんけど、ガンダムを映像でやるのは最後だろうと思います。もう一つ印象に残った嬉しかったことがあります。古谷さんが『家で練習していて泣きました』と言ってもらえて、それが嬉しかったですね。その一言が自信になりました。期待していただいて良いかと思います」と、イベントを締めくくった。【取材=村上順一】

Photos

記事タグ