LUNA SEA、結成30周年記念ツアーグランドファイナル「必ず帰ってきます。待っていてください!」
1月9日の模様(撮影=田辺佳子)
LUNA SEAが1月8日と9日、さいたまスーパーアリーナで結成30周年を記念したツアー『CROSS THE UNIVERSE』のGRAND FINAL公演を開催した。
「必ず帰ってきます。待っていてください!」(RYUICHI/Vo)。その力強い言葉に、迷いは一切感じられなかった。LUNA SEAの結成30周年を記念したツアー「CROSS THE UNIVERSE」が約2年の時を経て1月8日と9日、さいたまスーパーアリーナ2DaysにてGRAND FINALを迎えた。コロナ禍によって延期を繰り返した末、ようやく辿り着いた聖地。声の不調と格闘しながらツアーを敢行してきたRYUICHIが昨年12月、声帯にできた静脈瘤除去の手術に踏み切ることを発表。その後LUNA SEAは必然的に活動休止期間に突入するという衝撃のニュース以来、初となるステージだった。
ツアーは元来、2019年12月にリリースした10枚目のオリジナルアルバム『CROSS』を引っ提げ、2020年2月にスタートした。開幕直後にパンデミックに襲われ、公演は順延に次ぐ順延。復活の起点となるはずだった同年12月のさいたまスーパーアリーナ公演は、開催当日に真矢(Dr)のコロナ感染が発覚して中止に。コロナ禍の社会情勢に加えて、LUNA SEAというバンド自体も、祝うべき30周年という年に数々の受難に見舞われてきた。それでも、だからこそ、彼らは2021年3月の同会場での振替公演を起点に、音楽の火を消さないという覚悟の下、6月からはツアーを再開。換気休憩をプラスに転じた二部構成での公演スタイルを編み出し、本公演も第一部では最新アルバム『CROSS』収録の楽曲群を中心に披露。第二部には‘90年代から親しまれ続けている「I for You」や「ROSIER」などの代表曲群を連打。歓声やシンガロングは依然として禁じられているが、ファンは拳を突き上げクラップし、惜しみない拍手を送り、バンドと共に熱いライヴ空間をつくりあげた。
更には、公演ごとに異なるレア曲を披露してきたツアーの締め括りとして、そのレパートリーからファン投票を募り上位2曲を各日披露。Day1には「a Vision」を、Day2には「FEEL」を届け、ファンは大歓喜。RYUICHIは両日、ライヴ全体を通して声を温存するどころかむしろ激しくシャウトし、全身全霊で魂の絶唱を響かせた。声を出すのが苦しそうな場面があればメンバーはコーラスで補い、時には歩み寄って声を掛け、互いにアイコンタクトを交わし、常に支え合いながら想いを一つに音を鳴らしていた。
Day2のアンコールで行われたメンバー紹介では、トップバッターの真矢が「こんな事態の中、こうやって集まってくれてどうもありがとう」とファンに感謝。「RYUちゃんが本当に全身全霊で、思い切り表現してくれていて……」と感極まって言葉に詰まると、RYUICHIも目頭を押さえた。続いてJ(Ba)は「RYUが完全になるまで俺たち充電期間に入りますけど、それも含めて、俺たち全力で行きたいと思うんですけど、どうですか?」とファンに問い掛ける。コロナ禍に屈せず音を鳴らし続けて来た2年間を振り返り、「俺たち、強くなったんじゃないかな?」とロックンローラーらしい不屈の精神を覗かせた。
「コロナになって、延期になって……2年間掛かってしまいましたが。思えばこの2年間、ロックバンドだけじゃなくて、音楽業界だけじゃなくて、いろんな職業の人たち、地球上のすべての人が同じ歩幅で歩くことを学ぶことができたと思います」とINORAN(Gt)は一言一言噛み締めるようにコメント。LUNA SEAというバンドには「5人だけじゃなくて、スタッフもそして皆も、すべてがLUNA SEAという団度傘の中に入っている」と喩えて、メンバーもファンも一心同体であることを表現。「僕らちょっと、ツアー終わったら行ってくる(※活動休止)からさ。また必ず会おうよ!」と笑顔を見せた。
「このコロナの中で学んだ最も大きなこと。全てこの一瞬一瞬が信じられない奇跡の連続だということだよね」とSUGIZO(Gt/Vn)。本ツアーはエンターテインメントに強い逆風が吹く中で決行してきたツアーだが、「遂にここまで来ました。約2年間、模索しながら、でもツアーを続けてきて。ありがたいことにLUNA SEAのライヴで感染者が出たりクラスターが起きたりしていません。音楽は、ライヴは、安全に楽しめる方法があって、不要不急じゃなくて俺たちの人生に必要だ、と。それをここまで証明してきました。このツアーの最後まで一緒に歩いていきましょう。そして命ある限り、俺たちはLUNA SEAという旅を続けます」と決意表明。
SUGIZOから、「命を振り絞って歌っています、オン・ヴォーカル、RYUICHI!」と紹介されたRYUICHIは大きな拍手が鳴りやまない中でマイクを握った。「僕は声帯のオペを、この後する予定になっています」と手術について切り出すと、「光しか見えてないんで。先にはもっともっと強い光があって、もっと遠くまで照らせる光があって。何よりも今日実感したのが、本気になれること、人生を賭けられること、それがLUNA SEAっていう音楽であること。LUNA SEAという音楽がこの5人の人生だということ。そして5人だけではなくスタッフも、皆もLUNA SEAの一員として本気で、きっとここに集まってくれてるんだと思います」と切々と想いを語った。不安を言い出したらきりがないと述べ、「そんなことよりも、本気になれる人生と出会えた、本気になれる仲間と出会えた。そして今もこうしてこの景色を眺めている……必ず帰ってきます、待っていてください!」と語り、会場にはRYUICHIの声がかき消されるほどの大きな拍手が鳴り響いた。
メンバーも客席も、全員が互いに手を繋いでジャンプするLUNA SEAライヴ最後の恒例の場面は、コロナ禍ではエア手繋ぎジャンプ。メンバーはステージの端から端まで歩き、最後まで何度も大きく手を振ってファンとの別れを惜しんだ。ツアーは、会場がワクチン接種会場に重なり延期を余儀なくされた振替公演(大阪国際会議場 グランキューブ大阪)を1月31日、2月1日に実施して完走。RYUICHの手術はその後に予定されている。涙を流す人の姿も多く見られ、心を揺さぶるライヴだったが、決して暗い悲しみによるものではなかった。バンドとしての更なる飛躍に向けた前向きな決断であり、活動休止という名の充電期間であることを明白に感じ取れたグランドファイナルだった。【大前多恵】