Uruが音楽を通して伝えたいこととは
INTERVIEW

Uru

Uruが音楽を通して伝えたいこととは


記者:編集部

撮影:

掲載:21年09月23日

読了時間:約10分

 デビュー5年目を迎えるシンガーソングライターのUruのニューシングル「Love Song」は、Uruの通算11枚目のシングル。本作はUruがドラマ『推しの王子様』のために書き下ろした楽曲で、徐々に積もっていく恋心と大切な人とのかけがえのない時間を描いたラブソングでありながら毎日を懸命に生きる人への応援歌としても聴こえる新境地の一曲。カップリングには、終わりを迎える恋愛模様を描いたAmPmプロデュースの「I don’t suit you」、そしてAwesome City Clubのカバー「勿忘」、さらには今年2月にリリースした「ファーストラヴ」のギターアレンジによるセルフカバーと、様々な恋愛を描いた楽曲が並んでいる。本作の制作面やドラマ主題歌に対する想いなどの話題を中心にメールインタビューをおこない、デビュー5年目を迎えたUruの今の想いに迫った。【平吉賢治】

“ほんの少し”の大きな変化

――デビュー5年目を迎え、デビュー時からの変化としてどのようなものがおありでしょうか。

 あまり変わっていないような気がしますが、この節目に、自分が成長できているところって何だろう…と振り返ることができました。緊張して思うように歌うことができなかったデビューライブから、ドラマや映画、アニメやCMなどの楽曲を歌わせていただいたり、ツアーで今まで行ったことがなかった場所でライブができたり、本当に色々なことを経験させていただいて、確実に変化したところは、初めてのことに挑戦する時の気持ちの持って行きかたです。私はとても臆病で小心者なので(笑)、何か新しいことを始める時、「できない理由」を探すのがとても上手なんです。やる前からできないという決めつけをしていた1年目から、5年という時を経て、まだ慎重ではあるけれど、それでも、やると決めたからにはちゃんとしよう、何か新しい発見があるかもしれないという前向きさがほんの少し身についたような気がします。新しいことや未知な事が目の前に現れた時、不安しか感じていなかった自分が、少し物事を前向きに捉えられるようになってきたのは、自分という人間にとっては結構大きな変化なのかもしれないです。ほんの少しなんですけどね。

――6月から開催されたツアー『Uru Anniversary Tour 2021 「Punctuation」』を無事終え、これまでになかった新たな発見や新鮮な感覚などはございましたか。併せて、ご自身の中でライブのハイライトは?

 このツアーは、私にとって初めてのツアーだったのでとてもドキドキしていたのですが、各地で迎えてくださるお客さまの温かさがじんわりと心に沁みたツアーでした。自分の歌がこんなに遠くまで届いているんだなということを改めて実感できたし、5年前の初ライブの時に経験した、歌もMCも何一つ満足にできなかったというデビューライブから思うと、少しは前進できているのかな、いやできてないとまずいぞ(笑)、と思いながらステージに立っていました。

 デビューシングルに収録されている「すなお」という曲を歌ったのですが、この曲は私がデビュー前に先が何も見えなく悶々としていた時期に作った曲で、ライブで歌う前にもこのお話をさせてもらってから歌ったのですが、応援してくださるたくさんの方の前でこの曲を歌えているということがとても嬉しくて、涙が出そうでした。つい泣いてしまった会場もありましたが(笑)。

 あとは、これまでのライではステージ上の私とお客さまの間に、自分のことをよく知ってくださっているスタッフさんが用意してくださった紗幕があって。この紗幕のおかげで歌えてきたところも大きくて。でもそれが、1曲目を終えると私の前から上へと上がって行って、皆さんの顔や温度をしっかりと感じることができたというのもこのツアーの思い出です。今まで幕の内側で歌っていた私が、何も隔てることなくお客さんと音楽を共有できているという喜びはとっても大きかったです。上がって行く時は本当にドキドキとして自分でも脈が速くなっていることに気付くのですが、皆さんの温かさが伝わってきて、感謝の気持ちと共にいい意味の緊張感で歌やお話が出来ているというのが新しい発見だったかもしれないです。

「やっと辿り着いた」本作の制作秘話

――本作へのUruさんのコメントで、“自分の中にあるイメージが形になるまでこれでもかというほど何度も楽曲を作り、歌詞を書きました”(一部抜粋)と、ありますが、最初にあったイメージはどのようなものだったのでしょうか。

 ストーリーの登場人物が全員とても直向きで、それぞれ「好きなもの」、「推せるもの」を持っていて、そしてそれを認め合っていて。そんな仲間と過ごす日常の中で紡いでいく絆や信頼関係、「人を好きになる気持ち」を忘れていた人物が再び心の中に誰かを浮かべたりする心の変化などをどう描こうかなあ...と考えていました。

――イメージが「形になった」と判断する重要な要素は?

 んー・・・ドラマの主題歌を歌わせていただく時は、この曲がこれで良かった、作品に寄り添う事が出来た、と思えるのは随分後で、そして、100%自分でそう思えるかと言えばそうでもなくて(笑)。自分であれこれ悩んで作っているからこそだとは思うのですが、でも観てくださった方が、ドラマと曲の親和性みたいなものについてのメッセージを届けてくださる時には、本当に嬉しいですね。いち視聴者になってストーリーを観た時に、どんな感想を持つか、どんな曲であって欲しいかを考えながら、そのイメージと実際の曲が重なった時に、よし、と思うことがきています。

――歌詞について、<一人でいたら 気付けなかった 誰かを想うことで強くなれること>という部分が特に好きです。Uruさんが本作の歌詞で特に想いが込められた一節はどの部分で、その一節が生まれたのにはどのような背景があったのでしょうか。

 私は、Dメロの「躓きながらも選んできた道、どれか一つでも違ったなら、あなたに会うことはなかったの、そう思えば悪くないね」の部分ですね。これは、恋人や男女間に限らず、今近くにいる友人や仕事仲間、自分の回りの色んな関係に於いて言えることだなと思っています。辛くて苦しい時はきっと誰でもあると思うのですが、その時間があったからこそ出逢えた人だったり、直接出逢いには結びつかなかったとしても、その時間を過ごしていなかったら交わらなかった出会いかもしれないと思ったこともあって。日常の中でふと、あぁ、この人に会えて良かったなあ、、、と思える瞬間って、過去の苦しみや悲しみも救ってくれると思っていたので、この言葉を歌詞に入れたい! と思いました。

――作曲面について、温かく跳ねたリズムに優しいメロディラインがとても印象的です。曲を作る起点となったポイントは?

 昔の洋楽が好きなこともあって、この曲も、ヴァネッサ・カールトンやダニエル・パウターなどの洋楽の雰囲気を入れたくて。ドラマの雰囲気に合わせると、バラードに傾きすぎず、とはいえ明るく元気にという感じでもなく、鼻唄を歌いたくなるようなちょっとした軽やかさと、でも人を好きになる事で感じる心がキュっとなる切なさも入れたい、その両方を活かせる曲を...と思って作りました。

――曲が完成に向かってだんだんと出来上がっていく時は、どのような感覚、感情が生じるのでしょうか。

 デモはアルバムが1枚作れるくらいの曲数を作りましたが、この曲自体はスムーズに作れました。メロディーを先に作って、後から歌詞を入れたのですが、今回は曲が完成した時、「やっと、、、、、やっと辿り着いた、、、、」と思いました(笑)。

――ドラマ『推しの王子様』の脚本を何度も読んで曲を書き下ろされたそうですが、ドラマをご覧になられてご自身の楽曲「Love Song」が流れ、どのような心境になりましたか。

 主題歌を担当させていただく際は毎回のことなのですが、やはり初回の放送がとても緊張します。今回もリアルタイムで拝見して、最初は自分の曲が流れてくることにドキドキしていて、イントロが流れた時に「きた!」と思ったのですが、そのシーンに見入ってしまって聴き逃してしまったので、録画をすぐに確認しました(笑)。歌わせて頂けて本当に有り難いなという気持ちと、このドラマに寄り添える曲が作れたかどうかというドキドキ感でいっぱいでしたが、ストーリーが進んでいくと共に、更に密着度の高い曲になって欲しいなと願いながら観ていました。

――Uruさんがドラマなどを観る時、どんなところに注目してみることが多いですか。

 単純に、そのストーリーの展開の面白さですかね。でも、これまで色々な主題歌やテーマソングを歌わせていただいてきたので、もちろん主題歌も、どんな曲でどんな歌詞で歌われているのかは気になったりしますね。

――世界中に、様々なラブソングがありますが、Uruさんにとって、本作のタイトルでもある“ラブソング”という音楽にはどんな役割があると思いますか。

 自分の気持ちを代弁してくれるような、寄り添ってくれるような、そんな役割を感じています。自分自身、泣きたい時は切ない曲を聴いて思いっきり泣かせてもらってきたし、想っている人への勇気を持ちたい時には同じ心境の曲を聴いていたし、自分の心に素直になれる、代弁してもらえてすっきりする、そういう役割が自分の作る曲にもあったとしたら、とても嬉しいです。

――カップリング2曲目、AmPmさんプロデュースの「I don’t suit you」はとても新鮮で素敵なテイストの楽曲と感じました。AmPmさんのアレンジで特に驚いた点は?

 アレンジがとてもかっこよくて、初めて聴かせてもらった時はビックリしました。私のデモは、どちらかというとR&Bテイストが強いサウンドで、もう少しテンポも遅かったので、同じ曲なのにここまで雰囲気が変わるんだと驚きました。その分、レコーディングも緊張しました。このサウンドに合ったボーカルにしたいという想いが強くて。音の重ね方というか、ここにこんな音を入れるんだ! という新鮮な音がたくさんあって、この音は、どの何を使っているんだろうと未だにわからない音もあります(笑)。きっと私が知らないプラグインや色んなサウンドを星の数ほどご存知なんだろうな、、、となりました。

――カップリング3曲目、Awesome City Clubの「勿忘」をカバー曲として選んだ理由とは? 加えて、特に気に入っている歌詞やフレーズなどあれば教えてください。

 Awesome City Clubさんが「勿忘」をリリースされた時から自分で楽曲を購入してずっと聴いていました。頭に残るメロディーと、バラードに寄り過ぎていないのにしっかり切なさもあって甘さもあって、とても魅力を感じていたのでこの曲を歌わせてもらえることになった時はとても嬉しかったです。

 <散ってしまいそうな心に 覚えたての愛の美しさを ねえ 咲かせて>というフレーズが好きです。<覚えたての>という言葉が加わるだけで、ギュッと心が掴まれるし、二人の時間の経過とか背景が見えて来るようで、とても素敵だなと思っていました。

――本作のジャケットの2つのさくらんぼのデザインに込められた想いはなんでしょうか。

 これは、担当してくださっているデザイナーさんが、この曲を聴いたイメージから作ってくださったものなのですが、2つで1つという、繋がっているものというイメージで作ってくださいました。とても可愛らしくて、素敵だなと思いました。背景の色は、私の好きな色が緑なので、緑にして頂きました(笑)。

音楽にして伝えたいこととは

「Love Song」通常盤ジャケ写

――Uruさんは映画、ドラマ、TVアニメなど、これまでに様々な主題歌を手がけておりますが、主題歌を制作、歌唱するにあたって大切にしていることは?

 とにかく、その作品の世界観を大切にすることです。その色というか雰囲気を掴む為に、何度も台本を読んだり、歴史のある作品であれば愛されている理由や過去作品に対しての感想を参考にしたり、その作品を観る方と同じ目線で考えられるようにしたいなと思っています。原作があるものであれば、原作者の方のあとがきは必ず読むようにしていて、その方が何を伝えたかったのかをちゃんと理解するようにしています。歌を入れる時は、登場人物を浮かべたり、作品によっては登場人物を画面に映しながら歌を録ったりもしていました。自分もその世界の中に一回入ってみるということを一番大切にしているかもしれません。

――今後、Uruさんが音楽にして伝えたいこととは?

 昔、辛いことが重なって心が沈んでいた時に音楽に救われたのですが、自分が音楽に救われたように、今、あの頃の自分みたいに心が疲れている人にとって、ほんの少しでも救いになれたり、いい方向へ変わるきっかけになるような音楽を、と思っています。ライブでいつもお話させてもらっているのは、背中は押せなくても、わかるよ、大丈夫、私も同じだよ、と背中を撫でる事のできる柔らかさと温かさを感じられるような、信念というには少し足りないかもしれませんが、誰かの気持ちに寄り添える音楽を作っていけたらなと思います。そして、それがどなたかの心に届いてくれたらとても嬉しいです。

 日常生活、人と人の出会いや繋がりの中で、「葛藤」「悲しみ」「苦しみ」という陰の部分と、「喜び」「幸せ」「感動」という陽の部分が必ず同居していて、そこから生まれる感情や考えかたは自分で体感して学んでいくものだけれど、もしそれを歌ってくれている歌があったとしたら、その人の心に寄り添う事ができるし、その人の気持ちをなんの躊躇もなく吐き出せる時間を作ることができるのかもしれないと思っていて。これからも誰かに寄り添えるような音楽を作っていきたいです。

(おわり)

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