INTERVIEW

武藤十夢

目標に変化「やりたいことが広がった」
『未成仏百物語』インタビュー連載


記者:鴇田 崇

写真:鴇田 崇

掲載:21年09月17日

読了時間:約6分

<『未成仏百物語』インタビュー連載>武藤十夢
 AKB48から選出された8名のメンバーが、巷にあふれている不可解な出来事やミステリアスな世界、心霊現象などを成仏させるという、かつて類を見ない怪談エンターテイメント映画『未成仏百物語~AKB48 異界への灯火寺~』に出演した。8名それぞれが怪談エピソードを座談会で語り合い、その後供養するドキュメント形式で、メンバー全員が紹介するエピソードのうち、小栗有以、倉野尾成美、込山榛香、武藤十夢はドラマパートとなり、坂口渚沙、鈴木優香は事故物件サイトの運営でおなじみの大島てる氏との事故物件現場による対談。行天優莉奈は都内某所による心霊スポットへの体験ツアーへ向かい、大盛真歩は“怪談語り”と様々なアプローチで怪談話を披露する。今回、MusicVoiceでは8人全員のインタビューを連載。アイドルとしての笑顔を封印して映画に身を投じた彼女たちは、出演を経て何を想い、何を感じたのか。話を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】

武藤十夢

わりと素は出た

――相当な恐怖譚でもありましたが、そもそも怪談はいかがですか?

 めちゃめちゃ苦手です(笑)。最初は「怪談か、大丈夫かな?」と不安になりました。お話をいただいた当時は舞台をやっていたので、似たようなお仕事をしたことがある共演者の方たちに経験談を聞くことで様子をうかがったりもしました。

――役に立ちましたか?

 そんなには(笑)。ただ、観客として怖い映像を観るのではなく、裏側にいるわけなので「大丈夫じゃないか?」と言われ、実際そのとおりでしたね。

――実際やってみていかがでしたか?

 わたしのパートは「あそぼう」という建物に霊がいるという、ちょっと怖い世界観の作品だったのですが、撮影が始まってすぐラストシーンだったので、クライマックスだなと思いながら撮影するため、イメージしながら演じるのはとても大変でした。ただ、実際に白塗りの男の子と撮影している時は怖いなと思っていましたし、こういうホラー系の作品の現場では怖がりの自分でよかったかなと思いました。

――素は出ましたか?

 そうですね。廊下を歩いていた時に暗くてよく見えなかったので「うわ!」ってなりました(笑)。普段でも暗い階段など無機質なところを歩いていると、暗くて怖いなと思うことがあるので、わりと素は出たと思います(笑)。

――本作に参加して良かったと思うことはありますか?

 演技のお仕事は新しい発見が多いのでプラスにももちろんなりますし、今回は8人の作品があって、みんなの作品を観たので「こういう感じなのか!」と、それぞれのいろいろなやり方を知ることができたので、そこも勉強になりました。

武藤十夢

メンバーの活躍

――どのメンバーの活躍が印象に残りましたか?

 ゆいゆい、こみはるの回は、めちゃくちゃ怖かったですね(笑)。行天ちゃんの回は、わたしはやりたくないなと思いましたし、アテンドしてくださったミセス・ヒロコさんも怖かったですよね(笑)。とても勉強になりました。

――行天さんの「心霊スポット体験」は、ちょっと凄まじいものがありますよね。

 まずはお芝居パートじゃない3人はすごいですよね(笑)。お仕事なので行けと言われたら行くわけですけれど、実際にそこに行ってインタビューしたり、そこでいろいろなモノを見たりする勇気はすごいなと思います。わたしだって「ここ出るんですよ!」みたいなところへ行けと言われたら「ちょっと1回、考えさてもらっていいですか?」という感じになると思います(笑)。

――込山榛香さんの「見逃し」は、絶賛しているメンバーの方がいました。

 演技のパートでは、わたしも印象に残っている作品は、こみはるの作品なのですが、あれが1発目で出てきて、こういう感じのものが後7個も続くのかと、けっこう「しんどいです!」ってなりました(笑)。でも、だんだんやつれていく演技とか、勉強になるところはたくさんありました。メンバーの表情を観てハッとする感じもありました。

――その本作、ファンの方たちには、どうおすすめしますか?

 AKB48の若い子たちが参加していて、普段ホラーをやったことがない子もけっこういると思うので、そういう子たちの新しい一面は観られると思いますし、わたし自身の新しい一面も観られると思うので、ぜひそこは楽しんでもらいたいです!

武藤十夢

自信を失くすことも

――メンバーのこれだけの活躍を目の当たりにすりと、自分らしさについて考えたりはしますか?

 それはありますね。昔からずっと考えていることで、AKB48に入った時は、歌もダンスもまるでできなくて、わたしの取柄って何だろうと考え、自信を失くすこともよくありました。でもそれはわたしに限らず、みんな自分はどういうスタンスでアイドル活動をしていけばいいのか、もしかしたら全員が考えていることだと思います。

――それはいつくらいに考え始めましたか?

 3~4年くらい前までは、どうしたらいいだろうと模索していましたが、わたしは気象予報士の資格を取ったことが、ひとつ大きい出来事でした。気象予報士の資格を持っているアイドルということで、差別化は図れたかなと思っています。

 後は、妹も同じチームKでアイドルをして活動をしているので、AKB48では唯一の姉妹で活動させてもらっているので、これも一個の差別化のような気がしています。アイドル界で普通に考えたらチーム内でお姉さん的な立ち位置になってはいますが、妹がいることで、よりお姉さん感が強く出ているのかなと思います。

――5月で10周年でした。ここまで早かったでしょうか?

 早かったですね。いろいろなことがあったので振り返ると長い歳月ですが、あっという間でもありました。今はこれからのことを考えています。どうしていくといいだろうか、とか。昔はAKB48の中で選抜に入りたいとか、アイドルとして何位に入りたいとか、そういう目標でしたが、もっとこういう仕事をしたいとか、もっとお天気の資格を活かせる仕事をしたい、FPの資格も取り、株の雑誌の連載もやらせてもらっているので、経済系のお仕事をしたいとか。もちろん演技の仕事もしたいとも思いますし、やりたいことが広がった感じがしています。

――FPの資格など人生を逆算する作業もあるわけなので、ものの見方が変わりそうですね。

 そうですね。視野が広くなりましたね。確かにものの見方が変わります。実際に資格を取る時に例題じゃないけれど、どれそれのプラニングをやってみてくださいと、課題を渡されるんです。自分で計算して解答を書くのですが、保険とか年金とかお金を扱うことをよりリアルに感じるので、早く考えるに越したことはないなと思いました。いろいろ知識を深めたいと思いました。

武藤十夢

どれだけ外側に発信できるか

――グループとしてはコロナ禍もあり、どういう変化を感じていますか?

 コロナ禍でずいぶん変わりましたね。わたしたちAKB48もそうですし、ほかのアイドルグループにとっても芸能の全体が変わったと思うのですが、わたしたちは握手会がなかなか難しい状況になり、シングルも1年半出せてなくて、今回ようやくシングルを出すことができたんです。

――「根も葉もRumor」ですね。これはどういう曲でしょうか?

 ダンスナンバーで、群を抜いて難しい曲でした(笑)。めちゃくちゃ練習しました。ぜひとも動画でも観てほしいです!

――「乃木坂に、越されました」という番組も始まりましたね。すごいタイトルですよね(笑)。

 最初は「え?」って思いましたよ(笑)。みんな笑っていましたが、それがAKB48らしさかなとも思うんです。でも、本当に常に形を変えているグループだなと思いますし、自由にもやらせてもらえるので、わたしたちは今回のシングルや番組をきっかけに今一度、AKB48を盛り上げていけたらと思っています。わたしたちひとりひとりも自由な環境でどれだけ外側に発信できるか、頑張っていきたいと思います。

(おわり)

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鴇田 崇

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