INTERVIEW

きゃりーぱみゅぱみゅ

先を見つ続ける“原点回避”の10年。dTV『Roots』でこれまでを辿る


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年08月27日

読了時間:約10分

 今年、メジャーデビュー10周年を迎える、きゃりーぱみゅぱみゅが、27日に映像配信サービス「dTV」で配信される、アーティストの原点に迫るオリジナルライブ番組「Roots」に出演する。「あっという間だった」。10年を、OKAMOTO‘S・レイジとの対談などで振り返る。「やりすぎが一生のモットー」と語る彼女。ファンを喜ばせるために歩んできた10年ともいえる。過去に戻るのではなく常に新しいことをという思いも込めた新曲「原点回避」。そして彼女の原動力とは。インタビューで探る。【取材・撮影=木村武雄】

きゃりーぱみゅぱみゅ

挑戦を怖れていた時期

――もう10年、まだ10年?

 もう10年です! あっという間に時間が過ぎて、デビュー当時18歳だった私がいつの間にか28歳になり「早っ!」っていう衝撃があります。もちろん大人になっている部分はあるとは思いますが、気持ちは高校卒業した時のままです。

――今年は自身でレーベル「KRK LAB」を立ち上げて、「原点回避」もリリース。心境の変化は?

 ありました! これまでの10年はアーティスト活動を中心にほかの事はやりません、というスタンスでした。でも10年経過したら、香水のプロデュースや声優などやりたい幅が広がって、アーティスト活動以外にもチャレンジしていきたいと思っています。

――挑戦したいと思えるようになったきっかけは?

 挑戦を怖れていた時期がありました。あるとき「もう可愛いことはやらないんですか?」「もう原宿系ではないんですか?」と質問されたことがありました。悪気があって質問されたわけではないと思うんですけど、「新しくやったり、印象変えるだけでそう思われるんだ」と。きっと18歳から「少女らしい」「Kawii」という印象があったと思うんです。そうしたこともあって少し大人っぽくするだけで「路線変更するんですか?」と言われることがすごく多くて。「またああいうことを言われちゃうんじゃないか」と、挑戦を怖れてしまうようになりました。でも10年という節目に「そんなことで怖れるのはもったいない」「悩んでいる時間があったら新しいことに挑戦したい」とスイッチが入りました。

――もともと原宿系モデルで活躍されていて、アーティストデビューした当時も似たようなことはありましたか。

 まさにメジャーデビューしたこと自体がチャレンジでしたね。サブカルチャー寄りだったこともあり、当時は、わたしの大好きな世界観をみなさんが受け入れてくれたことにすごく驚きました。

――きゃりーさんのデビューは音楽シーンに大きな影響を与えました。

 そう言ってもらえるのは嬉しいですね。デビューしたのが東日本大震災後でした。世の中自粛の空気もあって、派手な表現は控えた方がいい雰囲気がありました。私自身も考えていましたが、私は元気が取り柄なので、いま私にできることは日本を元気にすることだと思い、変わらないスタイルでやりました。ちょっとでも私の音楽や世界観を楽しんでもらい、またライブに行きたいなって思ってもらえたらいいなって常に思っています。

レイジの褒め言葉に「嬉しい」

――dTVの番組「Roots」ではターニングポイントになった人物や場所を訪れますが、収録はいかがでしたか。

 OKAMOTO’S・レイジくんと対談しました。レイジくんは、デビューして最初に仲良くなった友達です。レイジくんにはすごく友達が多いので私の友達はほぼレイジくんの友達っていうぐらい彼を通して友達の輪が広がりました。番組では出会った時の印象も話しています。レイジくんは「こういうきゃりーぱみゅぱみゅが見てみたい」とかいつもアドバイスしてくれます。他にはバンドやソロの違いなどの話で盛り上がりました。

――なかでもレイジさんに言われて印象的だったのは?

 レイジくんは、番組内で「きゃりーちゃんは性格がめっちゃいい」と言ってくれました。私自身はそういう自覚はないけど、「性格がいい」ってよく考えてみたら一番うれしい褒め言葉だよなって(笑)。

デビューは自身でも驚きだった

――そういう感覚は子供の頃から?

 子どもの頃からシャイで、人前で話したり、話の中心が自分になることがすごく恥ずかしくて…(笑)。子どもの時からファッションが好きで、クラシックバレエを3歳から12歳までやっていました。習い始めた理由は可愛いメイクをして素敵な衣装を着られるからでした。幼いなりにも発表会でステージに立つ気持ち良さは知っていましたし、かといって学生時代にアーティストを目指していたわけでもなくて。中田ヤスタカファンで「Perfume、めっちゃいいな」と言っていた普通の高校生でした。

――ではアーティストデビューは自身でも驚きだったんですか?

 もう驚きでした!(笑) 中田さんの音楽は大好きだったので「私でいいんですか!? そんなラッキーなことあるんですか? いえーい!」という感じでデビューして、そこから10年。いまだに信じられないです。ライブで歌う曲数が増えていく幸せもあります。私自身は他のアーティストのみなさんと比べて歌がうまい方ではないですし、クラシックバレエはやっていましたがダンスを習った経験がありません。だからといってデビュー後もボイトレやダンス教室も行っていないんです。でも、表現の仕方やこういう世界観でこういうライブをやりたい!というイメージははっきり持っています。

――そういう自然体の姿、ピュアさも魅力的に思う要因かもしれないですね。

 あまり先のことを考えるタイプではないです。もともとファッションがすごく好きだったので服飾の学校に願書を出していたんです。高校を卒業したら服飾の道へ進もうと思っていた時に、事務所の社長にアーティストデビューのお話をもらいました。「デビューして1年やってみてそれでも服飾に戻りたかったら戻っていいからと」と言ってくれたのでチャレンジしてみました。ステージ衣装を毎回スタイリストさんと一緒に考えているので服飾の夢も叶えられています。

きゃりーぱみゅぱみゅ

『みんなの放課後』で展望?

――「先の事は考えない」ということですが、MCを務めているdTV『みんなの放課後』では、2022年あたりにデザイナーズマンションを建てると。

 いやいや、そう言わないといけない空気感だったので(笑)。でも時期は分からないですが、いつかはやってみたいです。マンションとかインテリアが好きで物件も見に行くんですけど、内装はいいのに外装は良くないとか、逆に外装はいいのに内装がいけていないとか感じることがあって完全にばっちりハマるデザイナーズマンションを建ててみたいと思うようになりました。それを大金持ちに買ってもらえたらいいな(笑)。

――梅干しも?

 そうそう! 梅干しが大好きなので高級な梅干しもプロデュースしてみたいです。「KRK LAB」でやれたらいいですね!

――そういうこともこの番組で語っていましたが、次回の配信は9月でしたね。

 学生さんたちが放課後にスタジオに集れるような番組を予定していましたが、コロナ禍でまだ実現できてなくて残念です。BOSEさんとはとても喋りやすくアットホームな番組なのでぜひ楽しんで見てほしいです。

自分が重なった「原点回避」

――さて、新曲「原点回避」がリリースされました。中田さんはきゃりーさんをイメージされて曲を作ると語っていましたが、今回も?

 私のなかでは“振り返る10年”ではなく、“前に突き進む10年”というのがあって、それを中田さんに伝えていました。そこから原点に戻らず回避して進もう!というイメージで作っていただきました。

――曲調は初期の頃と最近のものが融合されている印象です。

 これまでの楽曲はどちらかというとピコピコなデジタルサウンドが多かったのですが、「原点回避」は今までになくすごく意外でした。歌詞もとてもよくて「このフレーズがいいです」と一つに絞れないぐらいです。きゃりーぱみゅぱみゅ史上一番J-POPっぽく作ったと中田さんが言っていました。

――歌いやすかったですか?

 めちゃくちゃ難しいです。まだライブで披露していないので、歌えるかな、息継ぎどうしようかなって不安です(笑)

――<思い出補正が強すぎて 大事なコトを進められない>という歌詞は印象的です。

 これはまさに私が思っていることです。いろんな計画をするなかで新しい挑戦の提案をして頂いた時に「これはやらなくていいんじゃないですか、私、こうでしたし」という話をしてしまうときがあって。それこそ思い出補正が強すぎてチャンスを逃していて。10周年を迎えてそういうところも変わらないといけないなという思いがそのまま表れています。

――アートワークやMVでの巨大なリボンも印象的ですね。

 世間の人は私に対していまだに頭に巨大なリボンをつけている、イメージらしいんです。もう8年ぐらいつけていないですけどね。MVの打ち合わせの時に監督にそれを言ったら「巨大なリボンに追われていて回避できるのかできないのかというのはどうですか」と提案され、それいいですねと。リボンが好きなことは変わりないんですけどね。

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やりすぎがモットー、クスっと笑える要素

――それとYouTubeに上がっている企画会議の様子で「やりすぎがモットー」と話されているのも印象的でした。

 「やりすぎぐらいがちょうどいい」という自分のテーマがあって、例えばリボンの大きさももっといきましょうとか。でも、最近ココ・シャネルの本を読んだら「やりすぎないことが一番かっこいい、シンプルがいい」って書いてあって。「うわー、正反対だ」って思いました(笑)。それでもやり方は変えないですが、時にはシンプルなことも入れようかなって思います。バランスが大事ですね。

――それは演出面でも?

 例えば、上から銀のテープを落とすときにすごい量を落としてみたり、何回も落としてみたり。そういうクスっとできるようなところは意識しています。そうそう! きゃりーぱみゅぱみゅって完璧ではないですよね、常に。ビジュアル面やアートワークでは完璧に見えるかもしれないですけど、どこかでクスって笑えるところを入れてあるんです。笑える要素を大事しています。変顔もそうですし。

――そのなかできゃりーさんの原動力は?

 ディズニーの遊び心は尊敬しています。最近はディズニーチャンネルばかり見ているんですけど、ウォルト・ディズニーのヒストリー動画があって、そのなかにジャングル・クルーズの回があるんです。当時は気軽に旅行も行けないからテーマパークに動物たちを入れて船で世界一周するような気分を味わえるものを作ると。そういう発想が素晴らしいなって思いました。ウォルトも最初は普通に作っていたけど、2回、3回と乗る人が少なくて、それならクスって笑える要素を入れようと。それで人間が下から動物に襲われて棒にしがみついているというシーンが生まれたようです。それと「やり遂げれば見返りはある」と言っていて、人間は「成功したい」「お金持ちになりたい」ということばかり考えてしまうけど、まずは自分のやりたいことを追及してしっかり表現していけばそれが認められて、みんなからいいと思われ、ファンになってくれるときがくる、そういうことも学びました。

――ということはお客さんを喜ばせるというのが原動力?

 そうですね。お客さんを喜ばせたいですし、ライブが一番楽しいです。コロナ禍でできなくて、いろんな仕事をさせて頂いて新鮮な気持ちではあるけど、ライブをしている時の快感は、生でしか感じられないです。

ライブハウス失敗談、感謝の3年ぶりツアー

――3年ぶりツアーの開催も決まりました。

 本当は47都道府県を予定していました。でもホールが無くなった県もあって、今のところは28公演予定です。直接自分の足でみんなの近くに行って10周年の感謝の気持ちを言いたくて。東京の大きな会場に「みんな来てね!」ではなくて、細かく色んなところに行ってお礼を言いたいです。

――そういえばライブハウスでも過去にやったことがありましたね。

 そうでした! 気合を入れすぎて、会場内の香りをコットンキャンディにしたいと言って、スタッフさんが一生懸命に焚いてくれたんですけど、お客さんが入ったら汗のにおいと甘いにおいが混ざって変な感じになってしまったんです。ライブハウスならではのサイズ感だからいいかなって思ったけど…(笑)。それ以外にもライブハウスを私の部屋に見立ててベッドを置いたりもしました。どんな会場の規模にも合ったものを作っていきたいです。ホールだったら、2階からも面白く見えるようにしたいとか。

――過去の経験も今回のライブで生かして。

 そうです。それと今回は行ったことがないところも多くて、それも楽しみにしています。ぜひみなさんにお会いしたいです!

きゃりーぱみゅぱみゅ

(おわり)

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木村武雄

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