8月8日に兵庫県内で開催の卒業コンサートで約4年のアイドル人生に終止符を打つSTU48・薮下楓(20)。ファンに支えられてきたと語る薮下がその集大成に発売するのが卒業アルバムと位置付ける写真集『さよならの余韻』(撮影・佐藤佑一、版元・玄光社)。ファン投票によって選ばれた水着やシチュエーションで撮影。笑顔が印象的な彼女とは異なる大人な表情も切り撮った。薮下にとってアイドル、そしてこの写真集はどのようなものとなったのか。【取材・撮影=木村武雄】
卒業後は陰で支えたい
――卒業発表された時は驚きました。1月にインタビューをしていますが、その翌月には発表されて。今振り返れば思い当たる節もあったなと。
ばれてました?(笑)。年末から考え始めて徐々に気持ちが固まっていった感じでした。でも、もともと自分のことを話すのが苦手ではないので、それもあったかもしれないですね(笑)。
――他のメンバーもそうですが、薮下さんがいなくなって石田千穂さんは大丈夫かなと。
すごく寂しいと言ってくれています。一時期は四六時中一緒にいたので。卒業後はアイドルとして同じステージに立つことはないんですけど、プライベートではずっと仲良しなので、陰で支えていけたらなと思います。
――卒業を決めたのは「アイドルとしてやり切った」「アイドルとしての薮下楓はここでおしまい」と思ったからだそうですね。
自分の中でのタイミングで、ふと落ちて、今だなって思えたんです。
――コロナの影響も大きい?
無いと言ったら嘘になります。自分の事を考える時間が増えたからというのはあるかもしれないです。
――ここまで吹っ切れていると、ファンの皆さんは、悲しいよりも笑顔で送り出したいという気持ちの方が大きいんじゃないですかね。
そうだと嬉しいです。ファンの皆さんは本当に応援して下さる方ばかりなので、私がウジウジしていたら不安になってしまうと思いましたし、本当に温かいファンの皆さんに助けられていると思います。
――ウジウジという事は、どこか気持ちが引かれるとろころも?
もちろん寂しいです。でも後悔みたいな気持ちはないです。ただ、そういう表情や一面が出てしまうと不安になるかなって。皆さん、私の事を私よりも分かって下さっているので、そんな風に見せていないかな?って自分では意識していないことでも「楓ちゃん、元気ないんじゃない?」と心配して下るので。
要望多かった水着、人間だなって
――さて写真集ですが、もともと出したいとは思っていたんですか。
全然考えたことがなかったので、びっくりでした。私がよく行ってたお店とか広島で4年半一人暮らしをして、思い出に残っている場所に行けたのですごく嬉しかったです。
――ファン投票でシチュエーション等が決まりましたが、そのなかで水着は初挑戦ですね。
そうです。結果を見て面白かったです。みんな人間だなって(笑)。やっぱり水着も求めていたんだなって。私もそれに対して嫌な気持ちはなかったですし「瀬戸内海だ~!」っていう気持ちだったのでワクワクしていました。新しい一面が見られることもそうでうすし、最後の形としてこういうのが残せるのが嬉しいと思いました。
――体づくりは?
筋トレをしました! 私、面倒くさがりで、ご飯を全然食べなかったんですけど、ちゃんとしたものを食べるようにしました。例えば、お豆腐に納豆とキムチ、鯖缶とか。そればっかり食べてました。低カロリーですし。タンパク質も意識して。筋トレは、メンバーがレッスン前に筋トレをするので、プランクという体幹トレーニングを一緒にやってました。
――ロケでは、これまでのシングルのミュージックビデオ(MV)の撮影地を周りました。
懐かしい気持ちでした。MV撮影地って撮り終わったらまた行くことってあまり無いので、すごく新鮮でしたし、一人でいるのが不思議な感じでした。
――この階段走ったなとか(笑)
めっちゃ思いました(笑)。その土地その土地で当時の気持ちを思い返して撮影していたような気がします。
20歳の私を残したかった
――写真集の撮影では、自分の要望を伝えたり、カメラマンの要望に合わせるというのがあると思いますが、今回は?
どっちもありました。何でもない草っぱらで遊んでいたときに「ここいいじゃん」って撮ったり。自然体というか、素の感じで撮って頂けて嬉しかったです。素の表情も多いですし、4年半の思い出の場所も行きましたし、ギュッと詰め込まれているというか、一冊にいろんな表情が入っています。
――撮影期間は
5日間です。
――一般的な写真集よりも長いですね。巡っていく中で、一番印象的だった所は?
全部、印象的なんですよね。MVで行った場所なので、思い入れの強い場所が多くて。
――ずっと晴れていたんですか。
後ろ2日は危なかったです。雷雨の予定でまずいなって思っていたんですけど、なんとか持ちこたえてくれました。
――STU48では、尾道=雨っていう印象があります(笑)。
確かに!(笑)その日も天気が悪かったです。降ったり止んだりぽつぽつと。
――水着や尾道とかを周っている表情もそうですが、ディナーではこれまでとは違う表情ですね。
20歳って大人という印象があって、私も20歳を迎えたので、20歳の時に撮ったということが分かるように残したかったんです。夜景が見える大人っぽい感じで撮りたいなって要望を出して実現しました。
――上がってきた写真を見てどうでしたか。
我ながら大人っぽいなって思いました(笑)。自分でも知らなかった表情というか、アイドルで生写真撮影ってたくさんあるんですけど、こういうちょっとエモイ感じの表情はあまりしないので、私こういう顔もするんだって新発見でした。
――タイトルの「さよならの余韻」はすごくいいですね。誰が決めたんですか?
満場一致でいいねって。すごいワードセンスというか、卒業記念写真集にぴったりの単語が出てきて、初めて見た時に一番ストンと落ちたというか、めちゃくちゃいいなと思いました。
――卒業するタイミングでの写真集で、これまでにない表情も出て。でも芸能界は引退される。ご自身にとってこの写真集はどういうものになりそうですか。
卒業アルバムです。何十年後かも絶対見返すと思います。集大成じゃないですけど、高校の卒業アルバムみたいものです。
光になれていたら
――それと、カメラマンが特別に用意した秘蔵の地・鹿島で撮影されたそうですね。
そうなんです! 四つ葉を持った写真もそうです。メイクさんが四つ葉探しのプロなんです(笑)。海はすごくきれいでした。
――自然と気持ちも乗ってきた?
はい! 海に影響されてました。気持ちを乗せられて、すごい自然の地で、鹿もいました。人に慣れた鹿で。橋の下でも撮って。
――きょうの取材のメイクさんやスタイリストさんは写真集の撮影チームの方で、いまもすごく笑いが絶えなくて。こういう雰囲気のいい環境なら素の表情も自然と出ますね。
リラックスして臨めました。もう修学旅行でした!
――さて、薮下さんにとってこの4年は?
青春です。いっぱい泣いたし、めちゃくちゃ笑ったし、喜怒哀楽のバリエーションが増えたというか、自分じゃない自分にも出会えたし、人生の糧になるような4年間だったと思います。
――アイドルの印象を聞かれ「光」と答えていました。ご自身は「光」になれていたと思いますか?
それは、皆さんの他己評価で(笑)。でも光でいられていたら嬉しいですね。私はすごくネガティブで、私なんかを応援して下さって…という気持ちでずっとやっていたんですけど、握手会とかでファンの皆さんに「私なんか…って言わないで」と言って下さって。その言葉で、応援してくれる方のために自信を持たないといけないと思えたので、光れていたらいいなって思います。
――表紙のカットは自分で決めたんですか。
みんなです!
――すごいいい写真だなと思いまして。「アイドル薮下楓」さんを象徴しているようなカットだと。影もあるけど光も差している。制服は青春の意味にも捉えられて。
それはとても嬉しいです!(笑)
(おわり)
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