THE BEATNIKSと高橋幸宏による、世界的ブランド Yohji Yamamotoの、1990年代パリ・コレクションに書き下ろした画期的名作2作品『THE SHOW / YOHJI YAMAMOTO COLLECTION MUSIC by THE BEATNIKS』、『THE SHOW / YOHJI YAMAMOTO COLLECTION MUSIC by Yukihiro Takahashi』が6月23日、CD盤ならびにアナログLP盤で同時リリース。1996年にリリースされたTHE BEATNIKSによるYohji Yamamoto 1996春夏コレクションの音楽は、激しいドラムのリズムとギターの掛け合いによるオープニングから、ときにインダストリアル、ときにロック、ときにロマンティック、そしてそこかしこから感じられるユーモアといった渋めのバラエティ感。「THE SHOW VOL.4」 としてリリースされた本作は、久しく復刻のリクエストの声が上がっていたが、その音は2021年の今も色褪せることはない。自身の現在の心境もふまえ、本作の話を中心にメールインタビューをおこなった【平吉賢治】
“あらためて聴いてみたら――”
――コロナ禍という特殊な期間が続く昨今ですが、この時期に入り高橋さんが思うことは何でしょうか。
昨年から今年にかけては、自分自身も大きな病気との戦いがあり、コロナ禍の及ぼす社会への変化なども含めて、いろいろと考えざるをえない日々でした。
――音楽に対する向き合い方などについてはいかがでしょうか。
音づくりについては、目の前のやれることをひとつひとつクリアしていくということだけでしたね。
――今回の2作品が復刻リリースとなった経緯についてお伺いします。
スタッフから、かつてCDとしてリリースされたものを復刻したいというアイディアを聞かされて、今、それをするのならばヴァイナル盤も出そうよと言いました。
――本作の2作品を聴かせて頂くと、様々な音楽性が交差していてダイレクトに耳と心に飛び込み、2021年の現在も色褪せないという印象を受けました。高橋さんが改めて本作を聴いた印象はいかがでしょうか。
本当のことを言うと、THE BEATNIKS盤はよく覚えていたんですが、自分がやった方は内容をすっかり忘れていて(笑)、あらためて聴いてみたら、なかなかいい(笑)。こんなことやってたんだ!と、自画自賛しています。
――各盤の特色としては?
THE BEATNIKS盤の方は、慶一くんとのやりとりで、もう好き勝手やってますね。冒頭のドラムは林立夫くん、ではなくって林くんのお兄さん。ヨウジヤマモトのエライ人だったんですが、昔から知っていて、彼もドラムを叩いていたことを知っていたのでお願いして。そういう遊び心のようなものがいろいろと詰め込まれてます。
レコーディングのはじめの頃にスタジオにのぞきに来た耀司さんが、途中段階のものを聴いて、「ちょっと、曲になり過ぎちゃってる」という意味のことをおっしゃっていたのが印象に残ってますね。音楽が音楽然として前に立つことを避けたかったのかも知れません。実際のショーの現場用に、このアルバムに収録されている音源と、それぞれのトラック別の音源を用意しました。僕たちはパリに行けなかったので本番ではどんなバージョンが使われたかわからないんです。音楽に対するアヴァンギャルド加減は、耀司さんが一番でした。
能動的に聴くことで得られるもの
――本作はCD盤ならびにアナログLP盤でのリリースですが、高橋さんの思われるアナログ盤ならではの魅力のポイントは何でしょうか。
近年、また若いリスナーの間でアナログ盤が評価されているのは良いことですね。なんたって音がいい。流し聴きをして、そこで初めて出会う音楽もあるので、サブスクにも良いところはいっぱいありますが、針を落とし、能動的に聴くという行為をして音楽に対峙することで得られるものもまた大きいと思います。
――最近インプットした作品等で刺激を受けたものは? また、高橋さんが大切にしたほうがいいと思われることは何でしょうか。
最近は、新しい音に触れる一方で、1960〜70年代の音楽にあらためて刺激を受けたりもしています。ちょっとはまっているのがキンクス。20歳そこそこの若者たちがあんな曲を作り、演奏していること、そして彼らのファッションの、今に通じるカッコ良さ。それは僕たちの仲間にも言えることで、同年代も先輩の方々も含めいまだ現役で活躍されている。それも健康であってこそ。やはり健康が一番です。
(おわり)