[Alexandros]を凝縮した「閃光」、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』主題歌 公開でロングヒット必至
公開前にヒット、このタイミングだからこそ生まれた名曲

[Alexandros]
新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言延長の影響で、三度にわたって延期になってきた、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の公開日が、6月11日(金)になることが、6月1日(火)の18:00にアナウンスされた。
という事情により、その映画の主題歌である[Alexandros]の「閃光」は、結果的に、公開よりかなり早いタイミングで、各配信サイトにアップされることになった。が、その5月5日のリリース以降、1ヵ月弱でYouTubeのMVの再生回数は260万回を超え、各配信サイトの最新ヒット曲を集めたプレイリストにも入り続けている。つまり、映画の延期というアクシデントが無関係なくらい好調に、広く聴かれる曲に、既になっている。
そもそも、大きなタイアップや、SNS発のバズでヒット曲を生むことで、大きくなってきたタイプのバンドではない。全国各地のライブハウスを、マメに回り続けるツアーの1本1本、出るたびに初めて観たオーディエンスを確実につかんで来たフェスの1本1本で──つまり、泥くさく「足で稼ぐ」ことを積み重ねて、じわじわとスケールアップしていき、アリーナ/スタジアム規模までたどり着いた、言ってしまえば、昔ながらのロック・バンドのサクセス・ストーリーを歩んで来たバンドである。
ゆえに、リリースと同時に世の中を席巻するようなヒット曲を放ったことは、ない。ただし、だからといって、ヒット曲がないわけではない、むしろはっきりとある、という事実が、このバンドの、ちょっとややこしくて、ちょっとユニークなところだと思う。で、ちょっと素敵なところだとも思う。いや、「ちょっと」じゃないな。「かなり」だな、ロック・バンド好きの音楽リスナーとしては。
いきなりどかーんと売れはしないが、延々と聴き続けられることで、リリースから1年2年経った時点では、いつの間にか「どう考えてもヒット曲」な存在になっていました、チャート1位は獲ってないけど、フェスでイントロが鳴った瞬間に数万人が大熱狂──というような愛され方をしたヒット曲が多い、[Alexandros]には。そんな気はしないだろうか。
たとえば「ワタリドリ」がそうだ。「風になって」もそうだ。「月色ホライズン」も、気がついたら、いつの間にかそういう曲になっている。というのも、ある種、古式ゆかしいロック・バンド的な「ヒット曲の残し方」だ。
という中で比較すると、今回の「閃光」の注目のされかたは、出足が速い方だ、とも言える。3月20日(土・祝)・21日(日)、幕張メッセ国際展示場ホール9〜11で行われたデビュー10周年ライブを最後に、ドラマー庄村聡泰が、局所性ジストニアのために「勇退」し、それまでサポートでバンドを支えてきたリアド偉武が正式加入してから、最初に発表したシングル曲である。という点で、リリースの時点で、これまで以上に注目が集まっていたのかもしれない。
まだ違うバンド名だった初期の頃を思い出させるような、性急でラウドなアレンジにでっかい抑揚のメロディが乗る曲調が、聴き手を強く捕えているのかもしれない。
それを、スタジアム・バンドとなって以降の現在の、バンドとしての基礎体力でもって音源にしたことで、過去と現在の最強ポイントを合体させたような曲になっているからかもしれない。
聴いて踊ることにも、暴れることにも、大きな声でシンガロングすることにも最高レベルで適した、今後間違いなく、ライブにおいてキラー・チューンになっていく曲だからかもしれない。
英語のラインと日本語のラインが並列に、同じ響きでメロディに乗っていく川上洋平の歌が、新しい聴き手にとっては新鮮で、古くからのファンにとっては「これこれ!」とうれしくなるものだったかもしれない。
ともあれ。「目標はグラストンベリーのヘッドライナー」と言って登場した、がっちり洋楽マインドのバンドでありながら、同時に、日本の土壌で闘うというのはどういうことかを身体でわかっている。逆に、テレビの音楽番組の常連になっていたり、ゴールデンタイムのテレビドラマに俳優として起用されるメンバーがいたりするバンドのわりには、ライブハウスから出てきたロック・バンドである、というルーツが揺らぐような曲は作らないし、揺らぐような音は鳴らさない。常に地に足が着いている。
そういうバンドである[Alexandros]の最強ポイントが、1曲に濃縮されたのが「閃光」だ、とも言える。10周年を終えて次のフェーズに入ったこと、リアドが正式加入して新体制になったことなど、いろんな意味で、今のこのタイミングだからこそ生まれた曲なのかもしれない。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の公開に伴って、さらにロング・ヒットしていく曲になるだろう。
なお、前述の幕張メッセのライブの2日目を完全収録し、そのさまを追ったWOWOWの番組(4月に放送された)に未発表映像を追加したドキュメンタリー等もパッケージされた映像作品『“Where’s My Yoyogi?”at Makuhari & Documentary』が、7月28日に発売される。「閃光」を初披露したのは、このライブである。
【記事:兵庫慎司】
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