INTERVIEW

石井杏奈

役に入ることが自分の生きがい。
『砕け散るところを見せてあげる』で玻璃役


記者:鴇田 崇

写真:鴇田 崇

掲載:21年04月09日

読了時間:約6分

 中川大志、石井杏奈がダブル主演を務め、井之脇海、清原果耶、松井愛莉、北村匠海、矢田亜希子、木野花、原田知世、堤真一という豪華キャストが出演する映画『砕け散るところを見せてあげる』が公開になる。アニメ「とらドラ!」「ゴールデンタイム」などで知られ、言葉の軽快さで10代特有の空気感を表現、各世代から支持を集める竹宮ゆゆこの同名小説を原作に、鬼才・SABU監督が実写化した注目作だ。

 本作で“学年一の嫌われ者”と呼ばれ、孤立していた一年生の蔵本玻璃を、女優としての活躍目覚ましい石井杏奈が熱演している。初期の『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(15)で鮮烈な印象を残して以来、『記憶の技法』(20)『ホムンクルス』(21)など話題作への出演を重ねる石井は、「どこまででも行けと言われたら行ける気がしますし、自分の限界の果てが見てみたいです」と、今作でもキャリアハイの熱演で映画ファンを魅了する。何がそこまで現在の彼女を演技に夢中にさせるのか。本人に話を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】

玻璃の人間性「好きでした」

――豪華キャストがたくさん出演している大作ですが、どう演じようと心がけていたのですか?

 全力でとにかく行こうと思いました。今、自分の目の前に起きたことを全部受け入れようと思って演じていて、基本的には会話劇だったので相手のセリフが変わろうとも、自分が言い間違えをしようとも、それが日常だと思って続ける、止まらない、そう思っていました。

 今思うと、どれだけ苦しい撮影も楽しかったです。あの環境で楽しめたことが一番自分でも大きいことで、もしも苦しかったら画にも出ていたと思いますし、この仕事が嫌いになっていたかもしれない。ですが本当に楽しかったです。

――ダブル主演の中川さんと、そういう話もされたのですか?

 そうですね。大志くんも楽しそうでした。なので大志くんの佇まいを見て自分ももっと頑張りたいという刺激にもなりましたし、そういう想いがあったのかなと。全身を賭けていたので、自分がどう映りたいなどとは思わなかったです。

――キャラクターはメンタル的に重そうでしたが、その点はいかがでしたか?

 撮影中は楽しかったんです。感想として「大変だったでしょう?」とよく言われるのですが、玻璃が好きで楽しかったので充実していました。頑張れたなと、あの頃の自分を思い返すと、そう思います。どんなに過酷なシーンでも、精神的・肉体的に辛かろうが、一日が終わる時に楽しかったと思えました。というのも玻璃の役がすごく好きで、毎日自分の全力を注ぎたいと思って演じていたので、毎日達成感であふれていました。それが楽しい感覚につながっていたと思うのですが、撮影が終わり試写を観た時、ここまで大変だったのかと改めて思いました。

――彼女のどこが好きでしたか?

 玻璃の人間性が好きでした。いじめられても芯が強くあり、すごく真っ直ぐでしっかりしている。大志くん演じる清澄の愛を受け止められたり、優先順位も相手が先で、自分が後になる。自分よりもあなたが気持ちよくいられるのなら、自分などどうでもいいと思えるような子なので、彼女の強い意志は応援したくなりました。

――ある意味、あこがれも?

 そうですね。うらやましいというか、本当にあのような行動ができるような人は、なかなかいないなと思いました。

石井杏奈

石井杏奈

玻璃から離れたくない

――撮影期間中、音楽を聴いてリラックスする時間などはありましたか?

それこそこの作品の主題歌なのですが、琉衣ちゃんが歌っている「Day dream 〜白昼夢〜」の歌詞を大好きな小竹正人さんという方が書き下ろされていて、歌声も歌詞も最高です。17歳の時に歌ったそうですが、とても大人っぽい歌声。おかげで、わたしのこれから先の人生でも、この曲を聞いて頑張れる一曲になったのかなと思います。思い出して前を向ける曲になるだろうと、聞いた瞬間に思いました。「もういいかい、もういいよ」という歌詞で終わるのですが、見失っている自分を見つけられたとか、その時々の自分によって考えさせられるような歌詞でもあるので、これからの一曲になるのかなと思いました。

――今回の撮影をとおして、今までにない経験や気づきがあったら教えてください。

 わたしは役を引きずらないタイプなのですが、玻璃から離れたくないなと思いました。長野で撮影していたのですが、終わりたくないなと思っていた。ずっとこの世界にいたい、玻璃として清澄がそばにいて、現場があって……仕事だけれど、そこでいつまでも呼吸をしていたいと思いました。表現できない何かを玻璃から得たのかなと。お芝居ですが、玻璃でいたいなと思えた。そういう感覚になれたら勝ち負けではないのですが、勝ちだなと思いました。

――そういう感覚は初めてだったのですか?

 何度か近い経験はありましたが、お芝居の神様が降りてきたのかなと、大志くんとも話をしました。ふたりとも、そういう瞬間がたくさんあったと思います。この作品にかける熱量など、様々なものが重なってそうなったのかなと。

――玻璃を演じる石井さんは別人に見えましたが、今回の役作りもこだわりましたよね。

 見た目では髪の毛を黒く染めて、前髪を伸ばしました。キューティクルを失くすために石鹸シャンプーで油分がなくなるように毎日洗って、リンスもほぼ水みたいな感じでした。ですがそれはとてもいい経験でした。あとは毎日毎日、玻璃を想い、現場で大志くんの反応を観ながら、彼の清澄を受け入れたいという気持ちを強く持ちました。

石井杏奈

石井杏奈

仕事が「好き」

――『ホムンクルス』では髪を切りましたよね?なぜそこまでして役作りを?

 30センチ切りました。役になったほうが生きている心地がします。その役に入ることが自分の生きがいで、この仕事のやりがいだと私は思っています。となると、自分などどうでもよくて、容姿のこだわりもなくなる。その役になれるのなら、何でもしたいなと思えるくらいこのお仕事が好きです。自分に対してのこだわりは、ないです。なのでかわいく映りたいということよりも、鼻水が出ていたほうが役の気持ちが伝わるのであれば垂らしたいですし、顔をくしゃくしゃにしたほうがよければ、どこからでも撮ってほしい。役や監督に染まりたい気持ちがあります。

――どうしてそこまでのめり込めるのでしょう?

 好きだから、だと思います。好きだからこそできますし、ワルシャワ映画祭に出品という評価などは後からついてくるもので、その時にこういう賞を獲りたいから頑張ろうという考えは本当になくて、昔からです。自分と戦うのも好きですし、限界って意外とないです。

 どこまででも行けと言われたら行ける気がしますし、自分の限界の果てが観たい。究極、死ななければ何でもできるので、見返りも求めていないです。自分が映画やドラマを観て明日から頑張ろうと思えるように、自分がお芝居をしたことによって、この作品を観て明日から頑張ろうと思えたり、わたしのファンの方が、石井杏奈がこれだけ頑張ったんだからわたしも頑張ろうというような、少しの勇気や一歩になっていただければいいなという想いは頭の片すみにずっとあるのですが、それ以外は好きだからです。

――なりたい将来像はありますか?

 ずっとお芝居をやっていたいです。生涯、現役と言われるくらい。いずれ結婚したり、子どもを産んだり、自分の人生経験が増えて、それがお芝居につながっていくかもしれない。それも一生やっていたい理由です。将来、歳相応に輝ける女優さんでいられたらいいなと思います。

石井杏奈

石井杏奈

(おわり)

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