安田レイ「人との繋がりがなければ生きていけない」向き合って出した答え
INTERVIEW

安田レイ

「人との繋がりがなければ生きていけない」向き合って出した答え


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:21年02月07日

読了時間:約9分

 安田レイが24日、15thシングル「Not the End」をリリース(7日先行配信)。本作は竹内涼真が主演する日本テレビ×Hulu共同製作ドラマ『君と世界が終わる日に』の挿入歌。ドラマの「サバイバル×ラブストーリー×ミステリー」という3つの軸が絡み合う極限の人間ドラマの世界観に寄り添いつつも「希望」や「人との繋がりの大切さ」というマインドとともに安田の現在の想いが込められている。現在、世界が直面している苦しさや無力感、“孤独感との戦い”というテーマの中で見つめた、彼女自身の心境を語ってもらった。【取材=平吉賢治】

絶望感の中にも抱く希望と“誰かとの繋がり”

「Not the End」通常盤ジャケ写

――「Not the End」は「終わりではない」という意味がありますが、タイトルに込めた想いは?

 「そこに希望を」という感じです。今までの中でも一番絶望感の強い1曲になっているかなと思っていますが、所々に諦めきれない「絶対ここから抜け出すぞ」というマインドと希望を散りばめています。

――現在のコロナ禍と照らし合わせている部分も?

 『君と世界が終わる日に』の挿入歌として書かせて頂きまして、このドラマはゾンビが現れて日常が壊れていく内容のサバイバルミステリーなんです。そこで、ゾンビが現れることと今私達が見えない敵と戦っていることを重ね合わせて書きました。ゾンビは存在しないけど、今私達が直面している苦しさや無力感、孤独感が凄く重なっていて、昨年肌で感じた痛みや寂しさなどが凄くリアルな歌詞になったと思います。

――本作についての安田さんのコメント「日常を奪われた私たちの今の毎日は、不安で、孤独で、悪夢のよう。いつまで続くのか、その答えは神のみぞ知る」というは正にという感じで。

 去年は失うものがたくさんあったじゃないですか? 今まで普通にやっていたことが遠ざかる感覚が始めてだったし、ライブができなかったり人と会えなかったり…家で一人篭ることが多くなって孤独感との戦いみたいなものもあったり。自分の中で優先順位や価値観が凄く変わったと思ったんです。今までだったら仕事が何より大事だと思っていたけど、去年生きていた中で「私にとって一番大事なものってなんだろう?」と考える時間もたくさんあって、仕事以上に大事なものは実はたくさんあるなと思いました。

 それは人との繋がりや人の存在で、それがなくなったら多分私は生きていけないなと思ったんです。大事な人を今目の前から失ったら生きていく力がどこからも湧き出てこないなとも。そういう想いが楽曲の中でも言葉に表れていると思います。苦しくて無力なのはわかっているけど<怖くても守りたいよ 君との優しい明日を>という歌詞がこの楽曲の中のキーワードになっていると思うんです。みんな怖いけど「それでも守るという気持ちは凄くここに強くある」というのを表現したいと思って書きました。

――確かに、人との繋がりは替えがきかないことだと思います。

 その人と自分の繋がりって本当に一本の線しかないというか。仕事はたくさん見つけることができるけど、大切な家族や友達などとの繋がりがあってこその仕事だし、そこがベースにないと何も成り立たないなと。だから大事な人との時間を「また今度会えるからいいや」ではなくて、今ちゃんと後悔しないように相手に気持ちを伝えないといけないなと思ったんです。

――人との繋がりの大切さを再確認する時期とも捉えられます。個人的に、ずっと一人でいても平気な方だと思っていたのですが、そうでもないと気づきました。

 私もそうです。一人がけっこう好きなんですよ(笑)。こういう状況になる前は、全然一人でも余裕だなって思っていたけど、やっぱり誰とも会えないってとどんどん自分が悪い方向のマインドになっていく気がして。それくらい陰に入ったというか、一人だといい答えが見つからないなと凄く思いました。だから<怖くても守りたいよ 君との優しい明日を>という風に、“誰かとの繋がり”みたいなものを今回凄く表現したかったんです。

――作詞には時間がかかった?

 凄くかかりました! 何回も書き直して、絶望感の中にどれくらいの光を入れようかとか…「これじゃない」という感じがあってずっと一人で部屋に閉じ篭って悩んで何度も書いて、どの言葉でどんな伝え方をしたらいいのかと。でも、ドラマの初回放送の時に観て「やっぱりあの歌詞にして良かった!」と凄く嬉しくなりました。とてもいいシーンでの挿入歌にして頂いて、色んな方々から良い反応も頂いて、いっぱい書き直してよかったなと思いました。自分でも納得のいく歌詞が書けました。

――いつもより書く時間がかかったのですね。

 この曲はラブソングの要素もあるけど、それ以上の強いメッセージ性、みんなが直面している絶望感と孤独感を強い言葉で代弁したいというのがあったから時間がかかりました。いつも以上に責任感のようなものが強かったのかもしれません。「ちゃんと胸を張ってこの歌詞を書くんだ」と思ったらなかなか進まなかったんです。

――代弁を含む絶望となると非常に難しいテーマかと思われます。安田さんは13thシングル「アシンメトリー」あたりから非常に深いテーマの楽曲を歌われていると感じています。同作は“非対称”や“葛藤”というテーマがあったり、前作シングル「through the dark」では内面の“光と闇”にフォーカスされていたりと。

 確かに…難しかったですね(笑)。普段から思っていることを誰かに伝えるというのが下手で。会話だと、どんどん言葉が出てくるけど「この人にこの気持ちを伝えたい」と思えば思うほど、一人で煙が出てくるくらい考えてしまうんです(笑)。だから歌詞を書くと、自分が普段何を考えているのか、根っこでどう思っているのかが、ちゃんと整理と分析ができると改めて思いました。今私はこんな風に落ちているけど、希望を持って日常を取り戻そうとしていると、書きながら「なるほどな、自分はこう思っているんだ」という理解ができるんです。

――歌詞を書き、気づかなかった自分の考えを認識するというような?

 歌詞を書く時はそうかもしれないです。自分の知らない自分に出会えるし、歌詞を書く時は本来だったら普通に生きている中で思い出さなくていい、つらい過去も思い出さなければいけないじゃないですか・・・

――それは相当つらい作業ではないかと…。

 本当に心の奥にしまっていた箱をもう一回出して「見たくないよ!」と、そういう時もありますし(笑)。なかなか大変な作業ではありますけど色々知れますし、最近は楽しんでいます。

「今までの自分の世界観を壊したい」という想い

――本作のサウンド面について、シリアスな空気感で歌詞と凄くマッチしていると感じました。

 ハッピーな感じも今までの安田レイの楽曲のイメージの中に強くあると思うんですけど、「through the dark」くらいから今までの自分の世界観を壊したいなというところがあって、その第二弾というか。

――「through the dark」発表時インタビューで、内面の“光と闇”についてお話されていました。安田さんが仰るように「ハッピーな感じ」も表現できて、それとは対する部分も明瞭に作品で表すのは難しいと感じます。“光と闇”のどちらかに寄ることが多いという部分があると思うんです。

 確かに…どっちの曲もありますね。今年28歳になるんですけど、どんどんやりたいことが増えてきて。デビューの頃は20歳の安田レイだし、今は27歳の安田レイの等身大の姿で、その間に色んなことを経験して、それを表現したいと、自然にどんどん変化していって今のこの楽曲にたどり着いていると思います。確かに、過去の曲と並べると「同じ人が歌っているの?」と思われる方もいらっしゃると思います。どっちも自分の中に存在して、闇もしっかりある方というか(笑)。

――闇がしっかりある方が、光もより輝くのではないかと思います。

 最近は、もしかしたら今まで封印していた、開けることのなかったダークサイドの安田の引き出しを歌詞を書く時に開ける機会があって、「こういう自分出していいんだ!」という喜びが凄くありますね。

――歌詞を書くのに時間がかかったのはそれもある?

 そうですね。今まで開けてなかった引き出しだから恐る恐る開いて(笑)。

――なるほど(笑)。収録曲「amber」は映画『おもいで写眞』の主題歌ですが、作品の世界観を踏まえて歌唱した部分も?

 映画は、主人公が写真を撮っていく中で色んな人との出会いがあって、不器用な主人公だけど負けず嫌いで、優しい居場所を見つけてどんどん成長していく物語なんです。Aメロの<いつも 行き場のない想いを 抱え遠くを 睨みつけていた>というのが正にそうで。今回は実際に作品を観てからレコーディングできたんです。いつもは文字を読んでそこから想像して作詞してレコーディングということが多かったんですけど、今回は映像があって、主演の深川麻衣さんの表情などを見た上で歌うことができたのは凄くありがたい順番でした。主人公の特徴は、この楽曲の中の主人公の凄く大事なポイントだと思って、何テイクも歌いました。一番いい<睨みつけていた>を探すのが大変でした(笑)。

かけがえのない「ライブ」に対しての想い

「Not the End」初回盤ジャケ写

――「Not The End」のMVが表す世界観はどのようなものでしょうか?

 この楽曲が持っている葛藤や不安感、孤独感のようなものを表現したいと思って撮影しました。部屋の中で実際にシャワーを浴びながら水を使うシーンがあって、そこで一人で閉じ篭って全身で孤独を感じて「ここから抜け出したい」という、誰かとの繋がりを探している自分というのがMVの大事なテーマです。去年は部屋で過ごしていて一人では解決できなかったことがたくさんあって、凄く考え事をして、葛藤や苦しみを肌で感じて。繋がりをラジオで表現して、誰かと繋がりたい、会話をして自分が思っていることを交換し合いたいというメッセージを伝えたいと思いました。

――一人でシャワーを浴びるシーンなどは「孤独」、ラジオのシーンは「繋がりたい」という描写という感じなのですね。

 そうですね。私はお風呂の中で歌詞を考えたりもするんです。家で過ごしている中で、お風呂場で過ごす時間が凄く長いんです。リアルな自分の絶望的な表情はナチュラルに出てきました。

――なるほど。ところで、Twitterで“適当ソング”と銘打つ投稿を拝見し、凄くいいテイクと感じました。それを聴いて思ったのですが、安田さんが今後完全に自由なテーマで楽曲を創るとしたら?

 私はR&Bが凄く大好きなんですよ! R&Bにめちゃくちゃ影響を受けていまして。

――安田さんにとってR&Bの象徴は?

 一番影響を受けているのはアリシア・キーズです。あと、宇多田ヒカルさんも凄くR&Bを感じることができる方ですし、そういうジャンルを取り入れたアーティストさんは大好きで日々探して聞いています。

――確かに、“適当ソング”の歌唱からR&Bを感じました。

 自然とそういう自分の好きな感じになりますね! そういう曲を今後リリースするのが今年のひとつの目標です。そういえば、私のR&Bの入り口はアッシャーでした。そこから色々と幅広く聴くようになりました。「何のジャンルが好きですか?」と言われたらパッとR&Bが出ます。

――音楽的な源流にはR&Bもあるのですね。ところで、最近のおうち時間で新たに始めたことなどはありますか?

 ステイホームを楽しむグッズがどんどん増えてきていますね。カセットコンロを買って、自分でたこやきが作れる物や焼肉用のプレートを買ったり、優雅にハーブティーを飲んだりと。楽しいことを探そうと思って(笑)。

――エンジョイしていますね(笑)。さて、2021年はどんな年になりそうですか。

 本当に予想ができない状況ですが、私の希望、日々妄想しているのは、春や夏になって状況がよくなって、日本中のアーティストがライブをどんどんやるようになって、自分もライブができる環境があることを想像して頑張ろうという気持ちで生きています。自分でライブをしたいのはもちろんですけど、ライブを観に行くのも私は凄く大好きなんです。インプットもできるし、何よりも大きい音で素晴らしい音、歌を聴くのが人生の大事な瞬間なので、そういう時間を取り戻していきたいです!

――状況がよくなった上でライブをして、みなさんに会って伝えたい言葉は?

 「やっと会えたね!!」って泣き叫ぶかも(笑)。みんなに会いたいですもの!

(おわり)

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