INTERVIEW

清水尋也

胸を張れないとダメだと思う――俳優としてのプロ意識、松雪泰子に学んだ表現力


記者:鴇田 崇

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掲載:20年09月28日

読了時間:約3分

 シソンヌじろう、大九明子監督、松雪泰子がタッグを組み、同名原作を実写映画化した『甘いお酒でうがい』が、コロナ禍での公開延期を経て、9月25日(金)に公開となった。じろう(シソンヌ)が長年演じてきた代表的登場人物のひとりである「川嶋佳子」を、強烈なキャラクターから子どもをもつ母親まで幅広い役柄を演じてきた松雪泰子が見事に体現していることでも話題の本作に、「川嶋佳子」のふた周り年下の岡本くん役で清水尋也が出演した。松雪の演技力を目の当たりにして学びを得たという彼に話を聞く。【取材・撮影=鴇田崇】

松雪泰子から得たもの

――本作は、シソンヌじろうさんが生み出した川嶋佳子というキャラクターが主人公ですが、松雪泰子さんが演じることで、新たな魅力が加わっていますよね。

 映画が持っているテンションなども影響していると思うのですが、この作品は、すごく穏やかな時間が流れています。今回松雪さんとお芝居をご一緒させて頂いて、年下の僕が言うのもあれなんですけど、人間という大きなくくりでも、お芝居という意味でも、とても穏やかで自然で。人って、わかりやすく抑揚をつけようとしがちだったりするじゃないですか。わかりやすく驚いたり、怒ったり、声を荒げてみたり。

――それが松雪さんの場合、いい意味で出しすぎないので、リアルな女性像につながっていったのでしょうか。

 それは川嶋佳子さんというキャラクターの設定の特性もあると思うのですが、極力大げさにしないように、最低限のアウトプットですべて伝えたいことを伝えるお芝居をされていて、そばで見させて頂いて、やっぱり松雪さんすごいなあ…ととても勉強させて頂きました。

 僕も別の映画で監督に「絶対に声を荒げるな」と言われたことがあって、声も荒げずに怒っている表情を作ることってすごく難しかったんです。逆に普段自分が怒る芝居をする際、声を荒げることに頼っていたことにも気がついて。

――撮影現場で学びがあったわけですね。

 わかりやすいテンプレートにハマッている自分がいたことに気づきましたし、そこをあえて外せる、あえて抑揚のないトーンでも、すべての感情をわかりやすく伝えるという技術に関しては、もちろん経験もあると思うのですが、近くで観ていてすごいなと思いました。これはこの現場で学んだことというか、新しく自分で盗んでいこうと思ったことですね。

俳優としての心構え

清水尋也

――ところで、撮影時は19歳だった清水さんですが、現在は21歳。成人して仕事への意識は変わりましたか?

 もともと仕事という意識が芽生える前から今の仕事を始めていたせいか、実は今でも仕事という意識はなく、基本的に楽しいから続いている感じなんです。だから成人したからといって、そこに対して意識を変えていこうとは思ってはいないですね。わかりやすくカタチとして自立しなくちゃいけないというよりは、気持ちとしては思うところがあります。何かあれば全部自分の責任になるという自覚みたいなもの、それは前から一人の人間としてはありましたが、そこは改めてちゃんとしないとなって思いました。

――それを踏まえて、今回の作品での自己採点は?

 プロとして現場に立たせていただき、お金をいただいている以上、毎回素晴らしい作品だと胸を張って言えないと俳優としてはダメだと思っているんです。なので、今回も自信をもってちゃんとお届けできるものを作ったと言えますね!

――いい意味でその自信も、清水さんの魅力だと思います。

 結果に対して反省や悔いはまったくないのですが、それこそ松雪さんや黒木さんと一緒にお芝居をさせていただくと、学びがたくさんありますので、それは次にいかしていこうと毎回吸収させていただいています。

(おわり)

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