鈴木愛奈「みなさんの癒やしになれたら」困難の時代に歌い上げる優しさ
INTERVIEW

鈴木愛奈

「みなさんの癒やしになれたら」困難の時代に歌い上げる優しさ


記者:榑林史章

撮影:

掲載:20年09月18日

読了時間:約12分

 声優の鈴木愛奈が16日、1stシングル「やさしさの名前」をリリース。『ラブライブ!サンシャイン!!』のスクールアイドルグループAqoursのメンバーとしても活躍し、今年1月にアルバム『ring A ring』でソロデビュー。ソロとして初のシングルとなる「やさしさの名前」には、アニメ『モンスター娘のお医者さん』のED主題歌の表題曲の他、クールで疾走感溢れる楽曲やウェディングソングも収録。今作について制作エピソードなどを聞くとともに、歌手として彼女が伝えたい想いを語ってもらった。【取材=榑林史章】

「摩訶不思議アドベンチャー」の作詞家の参加に感激

「やさしさの名前」通常盤ジャケ写

――アルバムでのデビューだったので、シングルをリリースするのは初になりますが、やはり気持ちは違いますか?

 そうですね。1stと名の付く物には、何でもそれなりに緊張感があります。先にアルバムをリリースしていたので、1stシングルをリリースすると言われた時は「そうだった!」と少し不思議な気持ちでした。カップリングを含めて3曲収録なので、レコーディングはアッという間に終わってしまったなという印象でしたけど、とても中身の詰まった1枚になったと思います。

――「やさしさの名前」は、アニメ『モンスター娘のお医者さん』のED主題歌ですね。主人公のグレン医師がすごく優しくてあたたかい人物で、そのグレン医師を含めた、やさしさ溢れる世界観が反映された曲だなと思いました。

 はい。私自身も第1話のアフレコに参加させていただいたのですが、第1話だったからこそ、登場人物や世界観をゆっくり丁寧に掘り下げながら収録が進められていて。その経験もあって作品からいろいろ感じ取ることが出来て、「やさしさの名前」をレコーディングする際の参考になりました。この物語のエンディングを飾るのに相応しい曲だなと思います。

――楽曲はすごくシンプルで、歌謡曲的な雰囲気もあるメロディが特徴です。鈴木さんご自身は曲を聴いて、どんな印象を抱きましたか?

 全体に温かいワードが散りばめられていて。「sunlight、おひさま、愛、ほとり、ストウブ」など。やさしさに包み込まれるようなキーワードがいっぱいあって、何となく懐かしさを感じさせるようなところもあるなと思いました。良い意味で昔のアニソンっぽいと言うか、自分が子どもの頃に見ていた、アニメで聴いたアニソンのような感覚を覚えましたね。

――ストーブじゃなくて、ストウブという表記が良いですね。

 そうなんですよ。そういう書き方も古き良き感じで、おばあちゃんのようなあったかさを感じますよね。

――作詞を手がけた森由里子さんとは、ご縁があったそうで。

 そうなんです。以前にアニメ『聖闘士星矢 セインティア翔』で、私を含めたメインヒロイン4人が歌ったオープニングテーマ「The Beautiful Brave」の作詞を担当してくださったのが森さんでした。今回のレコーディングの時にご挨拶をさせていただいたら、覚えていてくださって。今回の曲についても「素敵に歌ってありがとうございます」と、森さんの口から言っていただけたのが、本当に嬉しかったです。

 森さんは、私が小さい時から見ていたアニメ『ドラゴンボール』の「摩訶不思議アドベンチャー」を始め、ゲーム『THE IDOLM@STER』シリーズの曲など、本当にたくさんの有名な曲で作詞されているんです。私が大好きな作品の作詞をたくさんされている方に、まさか自分の1stシングルで作詞をしていただけるなんて思っていなくて。森さんの作詞だと知った時は、プロデューサーさんに「え! 作詞は森さんですか!」って聞き返したくらい驚きました。

――実際に会った森さんは、どんな方でしたか?

 いつもニコニコしていて物静かですけど、大切なことはちゃんと言ってくださって。格好良くもあり、素敵な女性だなって。

――歌詞については何か話を聞きましたか?

 直接説明を受けたわけではなかったんですけど、レコーディングを進める中で、「ここをもっとこう歌ってください」といった感じで、プロデューサーさんを通じてブースの中にいる私に伝えられるという感じでした。

――ボーカルの表現で苦労したところとか、レコーディングで何か印象に残っていることはありますか?

 全体的に順調だったんですけど、2番のサビの歌詞で<いいよね>というところが、当初は「よ」を入れるかどうか決まってなくて。それで実際に両方のパターンを歌って、最終的に「よ」を入れるほうに決まりました。

 あとは、Dメロのセクションは、気持ち的にどう持って行ったら良いのか考えました。<何ができるだろう?>という歌詞のところは、声に出して相手に問いかける感じなのか、それとも心の中で思って静かに答えを出す感じなのか。最終的に声に出して言うほうのパターンになったんですけど、プロデューサーさんとも相談しながら、どういうアプローチが良いか何パターンも録らせていただいたので、なかでも悩んだところではありますね。

妹の何気ないやさしさに感謝

「やさしさの名前」初回限定盤ジャケ写

――「やさしさの名前」は、ミュージックビデオも素敵な映像になりましたね。

 シーンによって草原と湖の2カ所で撮影しました。

――緑一面の草原の真ん中で歌っているところを、上空からドローンで撮った壮大なシーンが印象的でした。

 草原のシーンは、歌詞でも<おひさま>と歌っているように、本当はお天気だったら良かったんですけど、お天気がご機嫌斜めで、雨と風がものすごく強かったんです。最初にその草原のシーンを撮ったんですけど、少し撮ったら雨風が強くなってドローンが飛ばせなくなってしまって。急遽プランを変更して、カメラマンさんが近くに来て撮影をしてくださったんですけど、風がすごくて髪の乱れ方が大変なことになって、結果的にそれも使えなくて。初回限定盤のBlu-ray DiscにはMVとメイキングが収録されているので、それを見てもらえれば、どんなに雨風がひどかったか分かっていただけると思います。

――でも、草原を霧が取り囲んでいるのが神秘的でした。

 そうですね。結界みたいです(笑)。それはそれですごく格好良くて良かったなって思います。悪条件の中で、みんなで頑張って撮ったので、細部まで楽しんで欲しいです。

――湖の中に伸びた一本道のようなところに立っているシーンもあって。

 予定では桟橋で撮る予定だったんですけど、雨の影響で水かさが増して桟橋が歩けないことが分かって、急遽MVに映っている場所で撮ったんです。あとで映像を見たら、自分の影が水面に映っているのがすごく綺麗で、むしろこれを狙っていたんじゃないかと思うほど素敵なシーンになっていて。スタッフさんの臨機応変さに感謝ですね。

――また、ハウススタジオのシーンは日常っぽくて笑顔も満載です。最後に口パクで何か言っているように見えたんですけど、何を言っていっているんですか?

 そういうシーンは何カ所かあるんですけど、ヨーグルトを持っているところは「美味しいね」です。最後のウィンクしながらのところは…特に意味のある言葉を発してはいなかったかもしれないですね。でもきっと「好き」という気持ちを込めて撮影をしていたので、口が勝手にそう動いてしまったんだと思います(笑)。

 MVにはテーマが2つあって、草原のシーンは映画『サウンドオブミュージック』のような世界観の中で、彼に会うことに対してのワクワクやドキドキをステップなどで表現していて。ハウススタジオのシーンは、私が彼女でカメラを彼氏に見立てて撮っていただきました。一緒に何かを食べていたり、本を読んでるところを彼氏がのぞき込むようなところがあったりするので、彼氏目線を楽しんでもらえたら嬉しいです。

――ウィンクしたり指でハートを作ったりするシーンもあって。

 そういうシーンは、実はMV撮影で一番苦戦したところです。すごく照れくさくて、それでキャラを演じるようにわざと大げさにやって照れを紛らわせていたんですけど、監督からも「慣れていないんですね」と言われてしまったほどで、自然にやるのがすごく難しかったです。世の中の女子はどういう風にやっているのか、みんなに聞きたくなりました(笑)。

――タイトル「やさしさの名前」ということで、人のやさしさを感じた経験は?

 今年の夏は暑かったので、クーラーをかけたまま寝てしまうことも多くて。そうすると妹が、身体が冷えてはいけないからとお腹にタオルケットをかけてくれて。そういう何気ないやさしさは、日々感じていますね。嫌なニュースも多いので、SNSなどで心温まるエピソードを見つけると嬉しくて、世界中の人がこういう気持ちになれば、誰も嫌な気持ちにならずに済むのになと思います。こういう世の中なので、ピリピリしてしまうのは仕方のないことですけど、だからこそせめて「やさしさの名前」を聴いて、やさしい気持ちになってもらえたら嬉しいです。少しでもみなさんの癒やしになれたら良いなと思います。

カップリングにはウェディングソングも

「やさしさの名前」アニメ盤ジャケ写

――カップリング曲の話に移りますが、まず「月夜見Moonlight」は、「やさしさの名前」とは打って変わって、格好良さのある曲ですね。

 デモを聴いた瞬間に、「私が大好きなタイプの曲だ!」と思いました。歌詞のこの部分はこうやって歌ったら絶対格好いいとか、いろいろ考えるのが楽しくて。

――「やさしさの名前」の歌詞に<sunlight>と出て来て、それと「月夜見Moonlight」の「Moonlight」は、敢えてかけているんですか?

 すごく格好良くて、中二心をくすぐられるタイトルで、でも私は、対比になっていることには気づかなくて。それである日、作詞作曲をしてくださった長塚健登さんが、ご自身のTwitterで「表題曲と対になっている感じですね」とつぶやかれていて。それを読んでやっと「本当だ~!」となって。長塚さんが敢えてそうしたのかは、確認していないので分かりませんけど、また想像が広がって良いなと思います。

――歌詞については、どんな印象ですか?

 強い意志の見える歌詞だなと感じました。<光れ>とか<叫んで 叫んだ>など、訴えかけてくるような言葉が多かったので、そこは昔の自分に重ね合わせることが出来ると思って。それこそ私が高校生の時にアニソンシンガーを目指して、苦悩したり考えたりしている中で、感情がいろいろに動いたことを思い出して。そうやって自分自身に置き換えて歌うことが出来ました。

――サビの頭で<月夜見 Moonlight>と歌うところは、早口で舌を噛みそうですけど。

 最初にいただいたデモは、もっとテンポが速くてキーも1つ低かったんです。<月夜見 Moonlight>と歌うところも、だいぶ早口で、それで調整していただいて今のテンポになって。聴くとだいぶ速く感じると思うんですけど、これでもデモからはだいぶ落ち着いたんですよ。

――どう歌うか考えるのが楽しかったということですが、例えばどういうところですか?

 アプローチの仕方で、抜くところと強くするところ、セリフのように表現するところがあるんですけど「ここはこう歌いたい」ということを自分から提案させていただき、プロデューサーさんの意見とマッチさせながら録っていったんです。

 強いてエピソードを挙げるとするなら、最後の<輝きの舞台へ>というところで、最後の「へ」を「伸ばせるだけ伸ばして良いよ」と言っていただいて。でも流れで歌おうとするとどうしても息が足りなくて、伸ばしきることが出来なくて、何度か録り直しをしていただいたんです。だからライブで歌う時までには、頑張って練習しなくちゃいけないんですけど(笑)、伸ばせるだけ伸ばしたロングトーンは、ぜひ注目して聴いて欲しいですね。

――そして「繋がる縁 -ring-」は、ウェディングソングです。どういう経緯でこういう曲を歌うことに?

 私を応援してくださっているファンの方同士で、お付き合いをされたりご結婚されたりする方がけっこう多くて、前々からそういうご報告をいただいていたんです。

――キューピットですね。

 自分でも、「私って恋のキューピットじゃん!」って思っちゃうくらい(笑)、みなさんのご縁を結ばせていただいているのは、すごいことだなと思って。とは言っても、私から個々にお祝いの言葉をお伝えするのは難しいので、歌で伝えることが出来たなら一番良いんじゃないかと思って、今回こういう曲を作っていただきました。

――1stアルバム『ring A ring』の時に、「歌で縁を結んでいきたい」とおっしゃっていて、まさしくそうなっているわけですね。

 そうなんです。実はこの曲が生まれた経緯には、作家さんとのご縁もあって。以前ハイレゾ試聴会という少人数でのイベントを開催した時に、作詞や作曲をしてくださったha-jさんと鈴木歌穂さんのお二人が、サプライズゲストという形で出てくださって。イベントが終わったあとに「いつかウェディングソングを作って欲しいんです」とお話をさせていただいたんです。そうしたら「すぐ作るね」と言って、お忙しい中で早々にスケジュールを組んでくださって。

 でもこの曲自体は、どういうタイミングで世の中に出すかは決まってなくて。それで今回カップリング曲のデモとして、最初は何の説明もないまま聴かせていただいたんですけど、曲を聴いた瞬間に「あ! ウェディングだ!」「あの時に話した曲だ」って、すぐに分かりました。ファンの方を思って、私からこういう曲が歌いたいと提案させていただいた曲が、記念すべき1stシングルのカップリングに収録されるんだと思って、喜びも倍増でした。

――ファンの人は、ぜひ結婚式で使って欲しいですね。

 披露宴などで、ぜひ歌ったり流したりして欲しいです。1stアルバムに「はつこい」という曲が収録されているんですけど、今までは「結婚式で『はつこい』をかける予定です」とお便りをいただりしていて。もちろん「はつこい」をかけてもらうのも良いんですけど、「この曲も最高でしょ!」と思っているので、これからはこの曲もどんどん使って欲しいです。曲を聴いて、みなさんがどんな反応をしてくださるかすごく楽しみですし、みなさんの人生の幸せな瞬間に私の曲が流れていることを想像すると、本当にすごいことだなって思います。

――結婚式と言えばブーケトスですが、もし友達の結婚式に出席したら取りに行きますか?

 その時によるかもしれないですけど、その場になってみないとわからないですね(笑)。

――そもそも結婚願望みたいなものは?

 結婚はいつかしたいです。私は、今はそういう願望はないですけど、時が来れば自然にそういう風になるんだと思いますね。

(おわり)

作品情報

鈴木愛奈
1stシングル
「やさしさの名前」
9月16日発売
レーベル/Lantis
【初回限定盤】:2000円 / LACM-34021 CD+BD(MV+メイキング映像を収録) 【通常盤】:1300円 / LACM-24021 / CD
【アニメ盤】:1200円 / LACM-24022 / CD

【CD収録内容】
01. やさしさの名前 作詞:森由里子 作曲:戸田一義 編曲:IKW
02. 月夜見Moonlight 作詞・作曲:永塚健登 編曲:久下真音
03. 繋がる縁 -ring- 作詞:鈴木歌穂、PA-NON 作曲・編曲:ha-j、鈴木歌穂

プレゼント情報

鈴木愛奈サイン入りポラ

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・9月21日〜9月26日23時59分まで。

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