「白鳥麗子でございます!」(講談社)などで知られる鈴木由美子の同名漫画で、講談社「Kiss」誌上で連載された人気原作を実写映画化した『いけいけ!バカオンナ~我が道を行け~』が、7月31日(金)より公開。本作は主人公・杉山結子と彼女の女友だちの友情を描いた自伝的作品ではあるが、物語の舞台を原作のバブル時代から現代に置き換え、恋愛をはじめ、仕事、友情など山積みの問題とともに日常を生きねばならない現代アラサー女子たちのリアルを描いた物語が展開していく。涙と笑い、感動と共感のエピソードが満載で、あるあるとうなずく人もいるはずだ。
「MusicVoice」では、その主人公でアラサー女子・杉山結子役の文音に続いて、結子が出会うハーフの美人・澤野セツコ役の石田ニコルにもインタビューを実施した。ここ最近「王様のブランチ」や自身のYouTubeチャンネルなどで素の石田ニコルを観る機会も増えたが、今回の役柄も「素の部分、ありのままの部分を出していくことができる状態の撮影でした。たぶんそのままでいたほうが、セツコというキャラクターにとってもよかったと思うんです」と述懐する石田。女性応援ムービーである本作で、石田が込めたメッセージとは。知られざる想いを聞いた【取材・撮影=鴇田崇】
共感があった役柄・セツコ
――この原作は90年代に大人気を博したそうなのですが、ご存じでしたか?
知らなかったです。もともとが漫画ということで原作を見た時に、かなり内容に勢いがあってびっくりしました。今回の台本にも古い言葉が少しあったのですが、実はびっくりするくらい自分に近い要素もあったんです。実際の裏はこうなのに女の子として隠している部分があるとか、セツコという役柄に親近感を覚えましたし、面白いなあと思いました。
――澤野セツコは、ご自身に近いキャラクターということで?
芋ジャージを着てコンビニには行かないですけど(笑)、でもわたしも上はメンズのTシャツ、下はヨガのウェアでコンビニには普通に行きます。仕事の時との差がすごく激しいので、セツコには共感しますね。「わかるわかる、こうなるよね!」って思いながら演じていました。
――ご自身でもあるあるが多かったという。
そうですね(笑)。でも世の中、みんながみんな同じだと思っていました。だから、入りやすいところはあったとは思いますね。
――演じるにあたっては、どのような準備をしたのですか?
役作りの一環と言いますか、ひとつのシーンを通しでやってみるとか、まずは自分の頭で考えてみました。セリフもきちんと押さえたうえで、自然な感じで鼻歌を入れてみたり、アドリブも多かったですね。いろいろと考えたのですが、そういうことを考えすぎないようにって考えていました(笑)。バランスが難しかったけれど、楽しかったです。たとえば普段、ビン底メガネをするほどではないのですが、性格や言動が自分に近い部分が多かったので、そうであればまず自分が楽しめていればいいだろうと思って、けっこう自由に演じていました。
――本当の石田さんって、こういう感じかもって思う人もいるかも知れないくらいの熱演でしたね。
最近はテレビでも素を出し始めてはいますからね(笑)。あえて緊張しないようにしているんです。前までは人見知りな性格も出ていたし、緊張している部分も多かったのですが、一回くらい素でいってみようと思って、ありのままの自分でテレビに出たんです。友だちによく言われていたんですよね。素のままテレビ出てみればって。それ以来、素に近い状態のままみたいな感じになってしまいました(笑)。
女性の友情、そして音楽
――さて本作は、女性の友情がテーマですが、あるかないかで言うと、どちらだと?
あると思います。わたしはたくさん友人がいるわけではないのですが、でも、いろいろと考え方が変わっていくなかで、女性の友情はあると思うようになりました。女の子ってすごく面倒な生きものだから、それで嫌になって、疎遠になっちゃうこともあると思います。でもずっと友情が続くこともあって、10年くらい続いている子もいます。長い子は長い。自分がしんどくなる、嫌な思いをしてまで一緒にいることは違うなって思いますけど、仲良くできる子同士であれば友情は長く続くと思います。
――難しいですよね。有り無しどっちかにふれるものでもないというか。
その時のタイミングもいろいろあると思うんですよね。一回関係が終わっても、何年後かに再会して、また始まることもあると思うんですよね。それは女性に限らず、男性もそうじゃないですか。
――女の子は面倒臭い、とよく一般的に言いますが、実のところよくわからないというか、具体的にはどういうことなのでしょうか?
自分自身が面倒だなと思ってしまう子とは仲良くできないのですが、そういう女の子って奥の奥まで見てもらいたいという部分があると思っていて、結構、観察はしちゃうんですよね。たとえばインスタグラムでパンケーキ載せました、が、パンケーキではなく手にしている指輪を見せたいとか、その奥の奥を出してくる子がいるんです。そしてそれを指摘しないと不機嫌になる。わたしは、そういう子とはつきあっていないです。そういう系の子は一切いない。ただ、笑い方が似ている子は多い(笑)。
――さりげなくグリーン車やビジネスクラスがわかるように投稿する人いますよね。“エアポート投稿おじさん”も話題になりました。
窓の外見せるふりして実はバーキンを見せているとか、そういう子はわたしのまわりにはいないですね。むしろ赤ちょうちんとかばっかり(笑)。そういうほうの友だちと仲良くしています。
――今年はYouTubeチャンネルも開設されましたが、将来的になりたい自分像があるのでしょうか?
それは、どうなんでしょう。特にないかもしれないですね(笑)。ゲームのことが仕事になればいいまあとか、そういうことは思わなくもないですが、まずはいろいろとたくさんの人に観てほしいですね。そのために頑張ろうとは思いますが、まずは自分が楽しめたらいいかなって感じです。ファンのみなさんとゲームがしたいですね。ゴリッゴリのバトルロワイヤルみたいなゲームをみんなでやりたいです!
――自粛期間中は“あつ森”も流行りました。
そうなんですよね。自分の島に呼んだり、そういうことができればいいなとは思っていましたが。自分の島を整えることに一生懸命で、まだお招きできる状態ではないという(笑)。
――音楽面ではいかがでしょうか。人によっては音楽が仕事のモチベーションを上げ、オフの癒しにもなります。
音楽はよく聴いています。ハワイのスローな曲が多いですね。朝はハワイの曲を流して、ゆっくりコーヒーを飲み、気持ちだけハワイにいるような感じになっています。もともとハワイの親善大使をやらせてもらっていますし、すごく海も好きなんです。でも洋楽も聞きますよ。ボーカル重視の、スロー系の曲が好きなのかも知れません。ゲームの中でめちゃくちゃマシンガンとか撃っているので、その反動なのかも知れないです(笑)。
つっぱることに疲れた女子に観てほしい
――さて今回の出演を経て、女優として思うことはありましたか?
この作品はけっこう自由にできたかなってのはありますね。素の部分、ありのままの部分を出していくことができる状態の撮影でした。たぶんそのままでいたほうが、セツコというキャラクターにとってもよかったと思うんです。自由に楽しくやらせていただきましたし、コメディー作品に出ることが好きだなって、改めて気づいたところはありますね。
――ありのままの自分と言うと、この映画のメッセージにも通じる部分がありますよね。現実世界では、なかなかそういられない人も少なくない。
女子って、疲れる時があると思うんですよ。わたしは素を出せるようになったのも、マネージャーさんが「そこまで無理しなくても」と言ってくれたことがきっかけなんです。こうしなきゃいけない、きれいにしなきゃいけない…そう思って自分に追い込みかけている人、たくさんいると思いますし、わたしもそうでした。この人の前では優等生のタイプ、この人の前ではサバサバした感じとか、無意識に自分の中で対応方法を決めていたことがあったんですよね。そのほうが好かれるるだろう、評価がいいだろうって。でも、本当の自分じゃないので、いつしかわけがわからなくなって、「この人は何のパターンだっけ?」みたいになって混乱しました。すごく落ち込んで、で、全部辞めたんです。
――辛いですよね。演技の上ならまだしも、日常で自分自身を殺しているようなもので。
でも「王様のブランチ」に出始めた頃、一回素でいってみようかなと思ったんですよね。それも友だちのすすめでした。素のままで出てみなよと。なんなら一杯いってから出てみればくらいまで言ってた(笑)。それくらい「素のニコルが好きだよ」って言ってくれる友だちがいたから、わたしの場合は変わることができたのだと思います。それから自由になりましたね。
なので石田もこんな変顔をしているんで、つっぱることに疲れた女子に観てほしいですね(笑)。いいんだよ、力抜いたって、たまには女の子だって! そういう気持ちになれるので、ぜひ多くの人に観てほしいです。