リンダ3世、群馬大泉町で生まれたブラジリアンガールズユニット

群馬県大泉町で活動するブラジリアンガールズユニットのリンダ3世。左からシオリ、ナオミ、ムツミ、サクラ、サユリ

<シリーズ・ご当地アイドルを追う=群馬県編>
 アイドルグループが次々と生まれ“アイドル戦国時代”とも言われる昨今、地域に根差した活動で支持を集めるご当地アイドルの存在が大きくなっている。そうしたなか、ご当地アイドルの最終形とも言われ、注目を集めているグループが群馬県に存在する。メンバー全員が日系ブラジル人のリンダ3世だ。

 J-POPでもない、K-POPでもない、ブラジル音楽の要素を取り入れた独自のスタイル“B-POP”がウリのグループ。平均年齢は14歳の日系ブラジル人の女性たち。

 スラッとしたスタイルで姉さん肌のシオリ(15)と洋楽が好きでヒップホップダンスの指南役サユリ(15)の双子姉妹に、サンバと歌を愛するメインボーカルのムツミ(13)、ももクロとパソコンが好きなおっとり系のサクラ(13)、ダンスリーダーながらもヤンチャでお洒落好きのナオミ(14)の女性5人からなる。サクラ以外はブラジル生まれだが、全員が群馬育ち。

群馬で誕生した背景、大泉町の歴史

 そもそも、なぜ群馬でブラジル人アイドルグループが誕生したのか―。その背景に地域の特性がみえてくる。彼女らの活動拠点は群馬県大泉町および太田市。大泉町はサッカーW杯ブラジル大会の開催でも脚光を浴びた“群馬のブラジル”とも呼ばれている町だ。人口約4万人のうち外国人の割合は約15%。うち10%が日系を含むブラジル人で占める。大泉町に隣接する太田市もまた2633人の日系ブラジル人がいる。

 大泉町は戦前、航空機や発動機を開発していた中島飛行機などの工場があった。終戦などにより企業は解体。その後は富士重工業などに受け継がれ、同町を含む周辺地域には自動車メーカーや家電メーカー、食品関連メーカーなどの工場が立ち並んだ。

 好景気に沸いていた1990年、日本の出入国管理法が改正されたことで日系3世までが国内で自由に働けるようになった。なかでもブラジルやペルーの中南米諸国から多く来日していた日系人の入国が容易となり、当時、人手不足を抱えていた下請け工場などは積極的に就労者として受け入れた。これが”群馬のブラジル”と呼ばれるようになった始まりだとも言われている。

 日系ブラジル人の増加に伴い、コミュニティが形成されるようになった。そうした背景のもとで、コミュニティの有力者が日本で暮らすブラジル人に元気を与えたいと考え結成したのがリンダ3世だ。彼女らもまた群馬育ちの日系4世。学校は地元公立校に通い、食事も文化も日本。ただ家ではブラジルの母国語、ポルトガル語を使用している。

デビュー時から注目された異色グループ

 彼女らがデビューしたのは昨年4月。活動拠点は地元の家電量販店の特設ステージ。そこで経験を積み、実力を付けている。全くの無名のグループだが「ブラジリアンアイドルグループ」という異国の風を感じる名前に音楽関係者の興味が注がれた。

 デビューしたその年に、アイドルフェス『TOKYO IDOL FESTIVAL』のメインステージに抜てき、更に『東京ガールズコレクション』にも出演。日本テレビ系『ZIP!』『スッキリ!!』などにも取り上げられた。今年に入ってからもサッカーW杯の開催に伴って多くのテレビメディアや雑誌に登場した。

 ユーチューブでも話題を集め、自作のプロモーションビデオを公開したところ1カ月も経たないうちに再生数10万回を超えた。そのうち3割は海外からで、もちろん故郷・ブラジルからが多いという。そのブラジルには現地ファンによるファンクラブも結成されているそうだ。

地元の支えも

 そのように注目を集めているリンダ3世だが、地元ではどう見られているのか。彼女たちにインタビューする前に町を歩いてみた。W杯の開催期間中ともありブラジル国旗を掲げている家々も幾つかあった。

 そのうち、ブラジル料理を提供するレストランを訪れた。率直に店員に彼女らのことについて聞いた。「この地域に日系ブラジル人のアイドルがいるって聞いたんだけど…」(記者)、「ああ、リンダね。ここでは有名なグループよ」(20代女性店員)。「知っているよ。この町で知らない人はいないんじゃないかな。応援してる。頑張ってほしい」(30代男性店員)。

 大泉町の役場関係者にも尋ねた。「知っていますよ。メンバーの1人は町の公立中学校に通ってますし、昨年開催されたブラジルイベントにも出演されていました。地元では有名で、応援しようという人は多いと聞いています」。

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