今の自分は想像していなかった
――先ほど様々な作品を経て今出せるもの、と言う話がありましたが、これまでの活動を振り返って、今はご自身が思い描いていたところにいますか?
全く違うところにいます。デビュー当時はミュージカルを全く観た事がありませんでしたから(笑)。まさか自分が演じるとも思っていなかったので不思議ですし、これから5年、10年経った時にはきっとまた違うところにいるんだろうなと思います。
――これまでの経験は、今の自分を形成するのに必要だったとは思いますか。相葉さんの体格はミュージカルにはプラスだと思いますし。
背は高くて良かったなと思います(笑)。でももっとこういうふうにやっておけば良かったなと思うことが沢山あります。楽器もそうですし、歌をちゃんとやっておけば良かったと。ダンスはヒップホップから入って、ストリートライブをやっていましたが、ジャズをやり始めたのもだいぶ後。舞台、ミュージカルに出るようになってからはタップをやったり。そうしたことをもっと早い段階でできていたら変わっただろうなと思います。ピアノもそうです。小さい時にやっておけば良かったとすごく思います。
やっぱり音感は小さい時に養っておくべきだと痛感します。今ではどうにもならないので足掻(あが)くしかない。出来ないなりに頑張る。分からないなりに理解する。決して逃げはせずに挑戦するので、新しい作品をやるごとに苦労します。人より自分の体に入ってくるまでに時間がかかりますし、毎回、足掻いて足掻いてという状況です。
――逆にそちらの方が人間らしいですよね。そういったところにファンは惹かれていくような気がします。本作は挑戦と言っていましたが、その足掻いた先に立つ相葉さんを観たいと。
私たちが演じるディミトリも生きるために足掻いています。でもそれは後ろ向きではなく、反骨精神を持ちながら生きている。その様(さま)はすごく男らしいですし、見習いたい。
――そう考えると相葉さんと重なるところもありますね。
そうですね。自分自身に近いものがある感じがしますし、共感しています。
――ただ彼の場合は詐欺師というところがあります。
それだけ彼は追い詰められていたんだと思います。生きるために必要だったのであれば、手段はともかく、僕もそうしていたかもしれない。詐欺はしないにしても、そこまで追い詰められた、そこに生き様があるような気がします。もちろん詐欺はだめですが、彼自身の心はとても素直で、真っ直ぐだと思います。