林青空「未来に期待出来る1枚が出来た」アルバムに刻まれた自信と葛藤
INTERVIEW

林青空「未来に期待出来る1枚が出来た」アルバムに刻まれた自信と葛藤


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年02月25日

読了時間:約11分

一緒に成長してきた「光」

――さて、過去にはバンドもやられていたとのことなんですが、どんなバンドを?

 弾き語りを始めたのが大学1年生の冬だったのですが、その年の夏くらいに歌いたくて同級生とバンドを組んだんです。それはライブも2回くらいしかやっていなくて、半年ぐらいで自然消滅してしまったんですけど。その時に5曲くらいライブをやるのに必要だったので、初めて作曲をしました。

――バンドがなくなってそこからソロ活動を?

 はい。バンドが自然消滅して、その時のライブを観ていてくれたライブハウスのスタッフさんが「1人で歌ってみない」と話してくれて、それで1人でステージに立つことになったんですけど、まさかここまでずっと1人でやっていくことになるとは想像していませんでした。

――その時にやっていた曲が「スパイスマジック」ですか。

 そうなんです。今作でバンド時代からやっていた曲は「スパイスマジック」だけです。

――その後ソロになってから書かれた曲が「光」で。

 5年くらい前に書いた曲です。バンドでやるために書いた曲だったんですけど、結局ライブでは披露されないままでした。

――この曲は新しい一歩を踏み出すぞというメッセージを感じますが、当時からテーマは変わらずですか。

 その思いと、イントロのアコギのストロークを弾きたかったというのもあります(笑)。そのフレーズが先に生まれて、明るくて疾走感があるので、歌詞にあるような思いを乗せたらハマるんじゃないかなと思いました。

――この5年間でこの曲はどのように変化してきていますか。

 どの曲もそうなんですけど、私が歌い続けたいという気持ちを歌っているのもあるんですけど、5年も歌い続けているので、この曲を好きだと言ってくれる人もいて、この曲を聴いて「転職しました」と言ってくれた人もいるんです。聴いてくれた人が応援歌として受け止めてくれて、その思いが私に届いて、それを繰り返して一緒に成長してきました。もう自分だけの「光」ではないという感覚で歌えています。<私走り続ける>という言葉も最初の頃とは意味合いが変わってきていると思います。ここまで来たけど、「まだまだ行くよ」って。

――人の背中を押したり出来る音楽の力ってすごいですよね。

 影響を与えるんだ、ということをツアーを回って実感したので、自分の言葉や思いに嘘だけはつかないようにしようと今まで以上に思っています。嘘はいずれバレるし伝わらないなと思います。なので、ちゃんと自分の言葉と想いで歌おうと思っています。

――「散歩歌」はこの曲がきっかけでデビューに繋がった1曲だとお聞きしたのですが。

 2年前ぐらいに出来た曲です。まだアルバムを作るというお話までは行ってなかったんですけど、良い曲が出来たのでレコーディングをすることになって。その時からアルバムに入ってもちゃんと主役になってくれる1曲だと思っていました。散歩と人生を重ねられたら良いなと思って書いてみました。内容は半分実話、半分妄想なんですけど。

――すごく情景描写が上手いなと思いました。目の前にその景色が広がりました。<電柱 二手に分かれてもすぐに一つになろう>のところはすごくイメージ出来ます。

 ありがとうございます。そこ、私もすごく気に入っているんです。自分が映像を思い浮かべながら書いたので、それをそのまま詞にしました。

――続いての「g'night」はタイトルの表記も面白いなと思いました。

 タイトルはすごく悩みました。子守唄なので夜の歌を書きたかったんです。今、SNSで省略してこの書き方をする事が多いんです。この曲は画面越しの世界観なので、それと関連したタイトルに出来たら可愛いし、その世界観が伝わるんじゃないかと思いました。例えば、「グッドナイト」とカタカナで書くと私の中では少し暗いイメージがあるんです。あと、7曲目の「ファイティン」はカジュアルな応援ソングにしたいと思ったので、この2曲は特に意図を連想させやすいタイトルがつけられたんじゃないかなと思います。

――タイトル付けは悩まれる方なんですね。

 めちゃくちゃ悩みます。最後の最後まで考えてしまうんです。

――ということはタイトルから出来た曲というのはない?

 「光」はタイトルが決まっていて、もう光という曲を書こうと思っていたので。でも、後にも先にもタイトルが決まっていたのは「光」だけです。

――あと「g'night」はサビで<Let me hear your voice more>と英文が登場します。ここまでカタカナ英語はありましたが、英語が出てくることで耳に残るなと思いました。どのように英語と日本語を使い分けているのかなと。

 ここは「あなたの声をもっと聞きたい」と言っているんですけど、日本語でまっすぐ言いたくなかったんです。ちょっとフィルターを挟んでフワッとさせたいなと思って。

――ストレートに意味を届けるのではなく、世界観を大切にした感じなんですね。ちなみにメロディを考える時に意識している事はありますか。

 伝わり辛いかも知れないですけど、言葉の意味に対して、メロディラインに違和感があるときがあります。音楽を聴いている時でも、「なぜこの言葉にこのメロディなんだろう?」と思ってしまうんです。例えば、「スパイスマジック」の<グッときたあの時から>という歌詞のところにグッとこないメロディは付けたくないんです。言葉の意味とメロディがしっかりリンクしてくれないと私はダメで、その感覚を信じてメロディを考えています。今作はそこを重要視して作ったアルバムです。

――言葉とメロディの整合性ですね。

 そうなんです。違和感があった時はかなり考えます。でも、そのおかげで中々曲作りが進まなくて(笑)。それを考えずに書きたいとも思っていて、今後は枠を取り払った曲作りにもチャレンジしたいと思っています。

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