林青空「ハイヒールは格好いい女性の象徴」挑戦が詰まった新曲の背景に迫る
INTERVIEW

林青空


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年08月21日

読了時間:約9分

 2020年2月にデビューしたシンガーソングライターの林青空が8月19日、1stシングル「ハイヒールシンデレラ」をリリース。表題曲は矢作穂香主演のテレビ東京系水ドラ25 『おしゃ家ソムリエおしゃ子!』のエンディングテーマとしてO.A中の1曲で、亀田誠治がプロデュースを担当した。シングルの収録曲には約4年ほど前から存在していた楽曲「白いワンピースを着て」と、始めて作詞作曲した思い出深い「秋風」をstay home ver.として計3曲を収録。インタビューではデビューからの半年間を振り返り、今作の制作背景、歌への想いなど話を聞いた。【取材=村上順一】

音楽と人の力を感じている

――おうち時間はどのように過ごしていましたか。

 曲作りやギターの練習です。あと、映画とアニメを見たり、今はマンガの『ワンピース』を読んでいます。

――新しい音楽を聴いてみたりしましたか。

 それはおうち時間に限らず、ヒット曲を聴いたりは常にやっています。ラジオ番組をやらせていただいているんですけど、その中で選曲させていただいているので、面白い曲ないかな、と常にアンテナを張っているんです。

――マンガや映画などからインスピレーションを得て、楽曲制作に活かされることもありますか。

 これまではそういったことはなかったんですけど、ドラマタイアップが決まって、初めて書き下ろしをさせていただきました。すごく今回の制作が楽しかったので、もっとやってみたいと思いました。そこから作品からヒントをもらって書くということを、今チャレンジしている真っ最中なんです。

――楽しみです。さて、林さんは今年の2月26日にメジャーデビューされましたけど、大変な時期でのデビューになってしまいましたね…。

 そうなんです。アルバムは無事にリリースできましたけど、楽しみにしていた4月のツアーが中止になって、皆さんと会える機会がどんどんなくなっていて…。悔しい気持ちが大きかったんですけど、「このままじゃダメだ」と早い段階で立ち直って前向きになれたので、弾き語りでカバー曲を上げてみたり、今はライブがどうやったらできるかを模索しています。

 たまたま私はデビューが重なっただけで、大変なのはみんなも一緒です。世界中が同じ状況というのは怖いことですけど、逆に心強いなと感じる面もあったり。音楽を続けていく不安よりも、続けていくためにもっと大事にしなければいけない、頑張らなければいけないという気持ちになっています。

――音楽の力を感じている?

 はい、音楽と人の力を感じています。こういう状況でも引っ張っていってくれる人や音楽があると感じています。

ハイヒールはかっこいい女性の象徴

「ハイヒールシンデレラ」ジャケ写

――さて、「ハイヒールシンデレラ」は初めてのドラマタイアップ作品ですが、曲を書くにあたりご自身と重ね合わせた部分もあったのでしょうか。

 初めての経験だったので、どういう風に作っていけば良いのかと考えるところからスタートしました。台本を頂いて、主人公の「おしゃ子ちゃんとはどういう人間なんだろ」と、私の想像も含めて書き出していって、その中で自分が共感できるところをたくさん見つけたんです。

 おしゃ子ちゃんはインテリアにこだわりがあって、おしゃれな部屋の人じゃないとお付き合いが出来ないんですけど、譲れないものがあって立っている姿が格好いいなと思いました。私も音楽に対してこだわりを持っているので、そういった部分は似ているなと思いました。

――確固たるものを持っているというところですね。

 はい。そういう子が輝いている世界を応援したい、という気持ちを曲に乗せました。

――「ハイヒールシンデレラ」は亀田誠治さんによるプロデュースですが、どのような経緯で決まったのでしょうか。

 チームのみんなとミーティングしている中で、一緒にやってみたい人のお一人に入っていたのが亀田さんだったんです。なので、念願が叶ってすごく嬉しかったです!

――亀田さんとの制作はいかがでしたか。

 亀田さんはすごく味方になってくれるんです。まず私が弾き語りで作った歌詞とメロディに対して、「こう思ったんだけどどう?」と細かくディスカッションしていただけるんです。ものすごく曲に対して興味を持ってくださる方だから、私も曲に対して話すのがすごく楽しかったです。

 あと、リモートでの作業だったんですけど、それを感じさせない距離感で聞いてくれるのもすごいなと思いました。私は人見知りしてしまうタイプなんですけど、初回からそれがなくて、なんでも相談できる関係性が出来たんです。楽曲のちょっとしたワンフレーズの相談でも、リモートでつないでやりとりしてくださって。

――亀田さんの情熱が伝わってきますね。エンディングテーマとなっていますが、そこは意識されたのでしょうか。

 ドラマの制作チームの方から、おしゃ子ちゃんがまた前向きに次に向かって頑張れるような楽しい曲、というリクエストを頂いていたので、ここで終わりではなく、次へのスタートという気持ちになれるような、明るい曲にしたいと思いました。 

――歌詞にある<ここらで失礼いたします>というフレーズが印象的でしたが、これはどこから出てきた言葉だったのでしょうか。

 台本を読ませていただいた時に、颯爽と男性を見限って去っていくおしゃ子ちゃんの姿がかっこいいなと思いました。その姿が象徴的になれば良いなと思って。このフレーズが一番最初にできて、この言葉を頭とサビの最後に持ってくることは決めて、そこから歌詞を書いていきました。主役にしたいフレーズでした。

――ここまで印象的なフレーズですと、タイトルにしたくなったりしませんでした?

 その案は全くなかったです(笑)。タイトルは最後につけたんですけど、何パターンか考えた中で一番しっくりきたのが「ハイヒールシンデレラ」でした。颯爽と帰っていくイメージはあったので、0時で帰っていくシンデレラ、自分の意思で帰るという強気な感じを、私の中で格好いい女性の象徴でもあるハイヒールで表現しました。

――ハイヒールは格好いい女性のイメージだったんですね。

 私の中では気合いを入れた時に履く、大事な日に選ぶイメージもあるんです。

――ジャケ写も気合が入ってますよね。

 そうなんです。表情や衣装、ポージングも含めて気合いが入ってます(笑)。

――レコーディングはいかがでしたか。

 亀田さんと、初めて直接お会いしたのがレコーディング当日でした。プロデュースしていただくということで、いつもとは違う感じになるのかな、と思っていたんですけど、私が歌いたいように自由に歌わせていただいて。今まで一番、私らしさが出せたレコーディングだったんじゃないかなと思います。 その時に思いついたものを亀田さんと「これ試してみようよ」とか話しながら、終始笑顔の絶えないレコーディングで、すごくスムーズで楽しかったです。

――音源からもそれが伝わってきますね。あと、歌詞にある<聖剣トング争奪戦>とは?

 ここは合コンのイメージで、通常トングってテーブルに1つか2つかしかないじゃないですか。トングは女性が気配りアピールをするための、ツールの象徴だと思っていて、それを取り合っている感じです。そのトングを取れば勝ちみたいな風潮が面白いなと思っていて(笑)。ここは女性には共感してもらえるんですけど、男性はそんなことが起こっているとは知らないみたいで。なので、男性の方にはトングを取れなかった女性に注目して欲しいんです。取れなかった人は、すごく悔しい顔をしていると思います(笑)。

――そうだったんですね。今度から注目してみます(笑)。そのあと<絶対に負けられない戦いがそこにはあるのだ>と続きますけど、林さんの負けられない戦いはありますか。

 幼少期は1番にならないと気が済まない性格でした。最近はそれがなくなってきているんですけど、「歌が好きだ」という気持ちは、負けられないものの一つかもしれません。歌唱力や技術ではなく、気持ちなので戦いとは違うし、比べるものでもないと思うんですけど、好きだという気持ちは誰にも負けられないです。

楽しんでいる姿を見せていきたい

――カップリングには「白いワンピースを着て」が収録されていますが、林さんにとって白いワンピースとはどのような存在、象徴なんですか。

 この曲を書いたのが3〜4年前くらいで、ずっとライブで歌ってきた曲で、当時の衣装が白いワンピースでした。自分が生まれ変われる衣装で、勝負服のイメージなんです。

――その白いワンピースを衣装に選んだ決め手は?

 自分に似合うかどうか、というのは基準の一つでした。私は白や黒、ハッキリした色が好きなんです。自分にはそういった色の方が似合うかなと思っていて。あと白いワンピースって私服で着るのは「ハードルが高いな」と私は感じていて(笑)。白ってけっこう派手なので、ステージ以外では私は着たことがなかったんです。

――この曲はどんなシチュエーションでできた曲だったのでしょうか。

 これは明け方、朝の4時とか5時くらいに一気にできてしまった曲なんです。なので、割と考えずに頭の中にあった感情をぶつけた曲でした。

――今回収録したのにはどんな流れがあったのでしょうか。

 もともと、過去に自主制作のCDに入っていた曲で、デビューアルバム『出航日和』の収録候補にも上がっていたんですけど、違う機会に入れようと温存していた曲なんです。この曲は当時の気持ちを書いているというのもありますし、『出航日和』は昔の曲も入っていますけど、リアルタイムの気持ちに近い曲を中心に選んだので。

 当時のレコーディング2日前にできた曲だったこともあり、弾き語りで録ったんです。そこからライブでもずっと歌っているし、お気に入りの大事な曲ということもあって、今回はアレンジして生まれ変わった「白いワンピースを着て」を、皆さんに聴いてもらいたいと思いました。この曲は、女の子が歌っている姿を曲にしているので、どんな風にみんなに届けようかというのは悩みました。

――アレンジといえば後半で聴けるコーラスが印象的でした。夢の世界へ旅立っていくかのような。

 竹内良太郎さんにアレンジしていただきました。この曲は弾き語りの状態が一番良い、完成形だと思っていたんです。一人で歌っている女の子の姿を弾き語りで歌って表現していたんですけど、アレンジしていただいた今回のバージョンは、女の子が歌っている、踊っている世界の中の世界を表現できたなと思っていて、当時よりも曲に対しての理解が広がったなって。女の子が見ている景色を再現できました。

――新しく生まれ変わった「白いワンピースを着て」を皆さんがどのような感想を持ってくれるのか楽しみですね。さて、もう一曲「秋風 -stay home ver.-」は6年前に発表された曲です。

 初めて作った曲で、1stシングルに入れたいと思っていた曲なんです。なので、メジャーデビューしてからも絶対に残したい、という気持ちがありました。stay home ver.として自宅でレコーディングしました。

――確かによく聴くと、部屋の鳴りがわかりますね。

 そうなんです。デモ音源を録るときの環境で録りました。私が普段、こういう環境で音楽を作っているんだ、というのを想像してもらえるかなと思います。

――この曲を作った当時のことは覚えていますか。

 はい。当時バンドを組んでいて、曲がないのにライブを決めてしまって、その時に作った曲なんです。曲なんて書いたことがなかったので、どこから手をつけたら良いのかわからないままギターを弾いていたら、サビの<恋冷ます秋風 もっともっと吹け>というところまで一気に歌詞とメロディが降りてきたんです。季節もちょうど秋の入り口で、部屋に風が入ってくる窓辺にいたので、その風が書かせてくれたような感覚があります。今でもその時のことはよく覚えています。

――風が書かせてくれた、ロマンチックですね。ここまでお話を聞くと林さんの現在と過去が詰まったシングルになりましたね。

 バリエーションもありますし、『出航日和』は自己紹介のようなアルバムになったとお話しましたけど、今作は新しいチャレンジが沢山できた1枚で、また違った良さを見せられるんじゃないかなと思います。

――最後にこれから皆さんにどんな姿を見せていきたいですか。

 これからもどんどんチャレンジしていきたいと思っています。状況がどんどん変わってきて、みんな新しい手段を考えて行動に移している人も沢山います。私も難しいと思うことでも不安がらずに楽しんでやっていきたいなと思っています。ライブもやりたいですし、それを楽しんでくれる方がいるから、私が楽しんでいる姿を見せていきたいです。

(おわり)

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