一つの視点で終わらない
――さて、ラストのシーンで「AIは人を幸せにするのか」という問いかけの答えについて大沢さんに聞いたらあのセリフは何度も考えたと。
いろんな案がありましたが現場で最終的に決めました。テクノロジーと技術を作り出してどう責任を取るのか、というのは人類の歴史上のテーマでもあると思うんです。車も飛行機も、ある面では人の生活を豊かにさせる、便利にさせるけど、事故も起きたりする。でも研究者としての桐生は人を救いたいという思いで作っている。それが子育て、桐生の家族観に繋がっていくと思いました。それをずっと考えて悩んで現場まで持っていて、大沢さんに3パターンぐらい言ってもらって、大沢さんは「編集で悩んでいただければ俳優としては本望なので何回でも言いますよ」と言ってくださいました。それで最終的に使っている台詞が一番良くて。娘・心を演じた田牧そらちゃんも、大沢さんがそのセリフを言った時に一番良い笑顔になっており、「あ、娘にも届く言葉なんだ」と思いました。やっぱり子供は素直。分からないときは分からない顔をしていますからね。
――ところで本作は片方だけの見方で終わらないというのが良いですね。
賛否両論あると思うんですけど、どの意見が正しいのか分からないというのが好きなんですよね。例えば、『22年目の告白―私が殺人犯です―』の仲村トオルさんの役はサイコパス感がありますけど、彼が抱えていた闇について僕らは考えなければならない。それを踏襲したいなと思い、仕掛けをやっていて。両方観て下さった方には、分かると思います。
――人間の表裏一体を感じさせるシーンだったと。
元々、仲村トオルさんにも、「ヒッチコック(※英監督=アルフレッド・ヒッチコック)の『サイコ』という映画の最後でああいうシーンがあるので観て下さい」と伝えてやって頂きました。そういう二面性や、裏目、表目を表現出来ればいいなと思いますが、本作でも気付いていただけたら嬉しいですね。
(おわり)