Kitri「チーム一丸となって作り上げた」三部作で見せた第一章の集大成
INTERVIEW

Kitri

「チーム一丸となって作り上げた」三部作で見せた第一章の集大成


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年01月30日

読了時間:約15分

普遍的だけどKitriらしさを出せるメロディに挑戦

――確かに1曲〜2曲はアルバムだとこういった肩の力を抜いた曲があってもいいですよね。さて、順番を飛ばしてしまったのですが2曲目の「Akari」は難産だったみたいですね。

Mona そうなんです。レコーディングの日まで私達がピアノを弾くということで進んでいたんですけど、リード曲になるということでこのアレンジで本当に良いのかなと、当日まで悩んでいたところ、ちょっと離れたところで大橋トリオさんがこの曲をアドリブでピアノを弾いてらっしゃって、その音を聴いたときにこの曲には「このピアノが必要だ」と思いました。勇気を出して大橋さんに「この曲のピアノを本番のレコーディングで弾いていただけませんか」とお願いしたところ、快く引き受けいただけて、私達の考えていたフレーズも取り入れていただきました。あと、ベースとマンドリンでも参加して頂いています。トラップ的なサウンドは神谷洵平さんと超常現象さんに作っていただいて、みんなで作り上げた大事な一曲になりました。

――「Akari」のメロディはどこか懐かしさもあって、好きな人も多いと思います。

Mona ありがとうございます。「矛盾律」では挑戦的なメロディやアレンジだったと思うんですけど、「Akari」は普遍的なメロディに2人のハーモニーを乗せて、普遍的だけどKitriらしさを出せるメロディを作ることに挑戦しました。これを聴いて歌いたいと思っていただけたら嬉しいです。

 歌謡曲にあるようなメロディというのは狙ったところのひとつです。私が歌謡曲が好きなので、そこにクラシックのメロディやコード進行の共通点がすごくあるなと感じまして。私は歌謡曲やクラシックのメロディに切なさを感じるんですけど、その秘密を探りながら、今回のサビは下降するメロディなんですけど、日本人の心にもに下降していくメロディがフィットするんじゃないかなと思って作りました。

Hina 私の中でもお気に入りの一曲で、デモ音源をもらってから毎日聴いていました。初めて聴いたときに、すごく懐かしい感じがするなと思いました。デモの時は私がギターを弾いていたんですけど、「新しい風を吹かせたい」ということで、そこからアレンジャーさんにブラッシュアップしていただきました。ライブではまた違う楽器を使って表現したいと思っていて、現在準備中です。

――ライブでの楽しみが増えますね。タイトルはなぜローマ字で表記されたのでしょうか。

Mona ここはこだわったポイントです。色んな明かりを想像していただきたいと思ったからなんです。明暗の明かりもあれば、灯火の灯もこの曲に含まれています。

――ひとつに限定したくなかったんですね。この曲はミュージックビデオも撮影されていますが、撮影時のエピソードはありますか。

Mona この曲はライブをやらせていただいたキリスト品川教会 グローリア・チャペルで撮影させていただきました。教会の良い響きを愉しみながら撮影させていただきました。自然体の私たちが映像に表れているのではないかなと思います。

Hina 品川教会は本当に雰囲気が素晴らしくて、「Akari」を初めて教会で弾いたのですが、すごく心地良かったです。

――MVの公開が楽しみですね。さて、「鏡」はまた今までにないシリアスさですが、どんな心境の時に書かれたのでしょうか。

Mona 楽曲ってその時の心境が出ると良く聞きます。でも、この曲に関しては自分に何かあったというよりは、絵画のようなテーマで書きたいと思いました。なので、この中で歌われていることは自分が必ずしも感じているものではないんです。

――3拍子もこの曲の特徴ですが、演奏してみていかがでした。

Mona 舞曲をイメージして、そこにクラシックの要素を取り入れたいと思ったので、過去に聴いていたクラシック曲を参考にしながら、Kitriらしさが出たらいいなと思いました。なのでクラシカルなポップスになったと思っています。

Hina Kitriで3拍子は初めてでした。クラシックの曲で3拍子の曲は沢山あるので、個人的に大好きなんです。それもあって弾くのが楽しみでした。この曲のピアノは私とMonaのタイミングを敢えてずらしているんですけど、それによって奇妙さや重厚感が出るんじゃないか、ということを大橋トリオさんからアドバイスをいただきました。私が少し後ろ気味に弾いています。

Mona 今までは息を合わせることを意識していたので、ズラすことはすごく難しかったです。大橋トリオさんに模範演奏もして頂きながら、ズラすタイミングを覚えました。

――それを感じながら皆さんに聴いてもらえたら面白いですね。続いての「さよなら、涙目」は映画『“隠れビッチ”やってました。』のタイアップ曲です。駆け上がっていくメロディが心地よいですね。

Mona 「Akari」とは対極にある曲です。映画のために書き下ろす、台本や脚本を見て曲を書くというのが初めてでした。最初は作品のテーマがあることから書きやすいのかなと思っていたんですけど、いざ制作に入ってみると、作品からメッセージを感じとって作るのは私たちなんだと実感して、不安がありました。

――プレッシャーもありますよね。

Mona そうなんです。主人公の気持ちに寄り添いながらも、自分に置き換えたとしても飲み込めるような曲にしたいなと思っていたので、両方の気持ちが入った曲になったかなと思います。

Hina 毎日台本を広げて頑張ってました。台本にもたくさんメモ書きがしてあって。

Mona 台本はセリフは書いてありますが、その人の気持ちなどは書いていないので、なぜこういうセリフが出たのかを自分なりに考察して、メモしていきました。

Hina 私も一緒に台本を読んで、一緒に主人公の気持ちを考えたり。

Mona Hinaの考えもヒントにしながら、作り上げました。

――また一つ良い経験になったみたいですね。続いての「Lento」はHinaさんの作詞ですが、大変でしたか。

Hina 曲が先にあったんですけど、もらった時にすごくきれいな情景が広がりました。それは、自分が見たことがない景色かもしれないのですが、田舎の景色が曲から見えたので、ふるさとをテーマに書いていきました。聴いた人それぞれのふるさとが思い浮かべば良いなと思いました。大変だったところは、言葉の響きを大切にしたいなと思い、意味と響きを合わせていく作業が苦労したところでした。

Mona 私が作業を見ていた感じだと1番の歌詞に苦戦していました。

Hina 色んな風景を入れたいと思って、書き直したりしてみたんですけど、最初に書いたものの方が良いかなとか、迷いが出てきまして。秋の風景が多く入っているんですけど、秋にも色々あるなと考えたら、また纏まらなくなったり。

――その歌詞の中に<リタルダンド>と音楽用語が入っているのが印象的で。タイトルの「Lento」も音楽用語ですよね?

Mona はい。ゆるやかにといった意味を持っている言葉なんです。

――このタイトルはHinaさんが考えたのでしょうか。

Hina このタイトルはMonaが考えてくれたもので、すでに曲をもらった時からついていました。

Mona 曲自体をタイトルから作っていきました。あまりないパターンなんですけど、この曲は「Lento」という曲を作りたいというところから始まったんです。

――珍しいパターンでの制作だったんですね。さて「雨上がり」はイントロの雰囲気がショパンの「子犬のワルツ」を彷彿させますね。

Mona 「子犬のワルツ」のような軽快さは意識したところはあります。ステップを踏みたくなるような軽やかさをピアノで表現したいなと思いました。そのイメージからメロディとピアノアレンジを考えてHinaに渡して作詞をしてもらいました。

――資料によると作詞は煮詰まってしまい、気分転換として喫茶店で紅茶を飲んでいたら一気に広がったみたいですね。

Hina そうなんです。この曲はリラックスして書いた方が良いなと思って、喫茶店に行きました。曲をもらった時にイントロのフレーズを聴いて、雨上がりというテーマはすぐに浮かびました。Monaからも晴れやかな曲にしたいけど、眩しい晴れやかな感じではなく、色彩が見えるような晴れやかさの曲にしたいとイメージを話してくれて。でも、雨だけど晴れやかというのを、どう表現したら良いのかと煮詰まってしまって...。

――気分転換が良い方向に導いてくれましたね。演奏面なのですが、「鏡」は重厚感でしたが、「雨上がり」のような軽快なリズムはどのような演奏を心掛けたのでしょうか。

Mona この曲はスウィングしている感じもあるんですけど、Kitriの今までの曲でもなかったので、この軽やかさを出すのは難しかったです。この曲も大橋トリオさんにリズムの取り方、裏拍の感じ方を教わりながらレコーディングさせていただきました。すごく勉強になった1曲でした。

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